2024年6月 道北の旅、天塩弥生駅旅人宿
そもそも、礼文島の後は利尻島へ行く予定だったのが、マラソン大会のため全島満室だった。で、どうするかと考えたら、道北周辺はあまり馴染みがないことに気がつき、結果的に2泊とも“とほ宿”に泊まることになった。今夜はかつての駅舎、天塩弥生駅を宿にした所。近くなので、朱鞠内湖に寄ってみた。
さて、宿に向かうか。
荷物を置いて、宿の周囲を見て回る。周囲にはちょっとしたシラカバ林と広大な草っ原が広がっている。
ご主人の生まれは北海道。お父さんが炭鉱で働いていたが、閉山となり、関東へ。国鉄に就職し、民営分割前に京王電鉄へ転職、その後、北海道で林業などに携わり、8年前からこの宿を始めている。9年前に名寄市から土地を買った時には、荒廃した空き地。周辺の草っ原ごと買わされて、今も置いてあるユンボ2台できれいに整地したそうだ。駅舎跡は解体した際の廃材などが埋めてあって、処分も大変だったという。
え、じゃ、この建物は? そう、全くの新築。外観は古びて見えるようにアンティーク加工してある。内装は、断熱材もしっかり入れ込み、窓も2重ガラス。従って、零下40℃にもなるという真冬でも、薪ストーブだけで建物全体の暖房が可能となっている。
夕食は、5500円とは思えぬほどの内容だった。
聞いたら、奥さんはかつては栄養士だったという。プロじゃないですか。まさかのご馳走。材料は宿の周りで採れるものが大半とおっしゃるが、アスパラは新鮮で美味しい。
実は、ご主人は昨年、ガンが見つかり、手術。退院後、すぐに再発。宿もしばらく休業していて、ようやく今年のGWから、宿泊人数を少なくして、営業日も少なく限定して、再開したばかりだった。闘病中の現在、できることから少しずつやって、病気を追い払いたいと意欲満々だった。
翌朝、起きると、これまでとは明らかに気温が違う。20℃近くあるのではないか。そういえば、昨日も昼間は暑かった。礼文島や稚内はあんなに寒かったのに、このあたりは全く気候も違うようだ。宿の周りを散策。
朝ご飯も充実していた。なんと、今は幻となってしまった、音威子府駅の駅そばの再現版。駅蕎麦屋も製麺所も二度と当時の蕎麦は作らないと言ってるらしいが、千葉県の製麺所が、工夫をして音威子府駅駅そばに近い麺を復元しているらしく、それを買って朝食の汁代わりに出してくれる。これには感激。
こちらの宿も期待以上で大満足だった。
さあ、今日は稚内空港から帰る日。まずは、サロベツ湿原に向かう。
サロベツ湿原は、2011年7月に山仲間たちと礼文島の帰りに初めて訪れた。その後、2016年にテシオコザクラを見に北大研究林に行った帰りにも寄った。それ以来。
木道をざっと一回りして、稚内へ向かう。昼メシは、セコマで仕入れて、空港で一杯やりながら食べることになった。
帰りの飛行機からは、行きには見えなかった利尻富士や、1ヵ月後に訪れる天売島焼尻島も見えた。
問題はその後、だった。17時半過ぎに羽田空港到着予定のはずが、空港に向かって降下したのに再び機首を上げ上昇。天気急変、激しい雷雨のため、こちらは日も差している房総半島上空で旋回待機、さらに太平洋上で旋回。結局、定刻の1時間半遅れで着陸できた。あー、しんど。