季節外れの島へようこそ。慶良間(けらま)諸島、阿嘉島(あかじま)
沖縄の離島へはかなり通ったが、慶良間(けらま)諸島は未訪の地。とある冬、阿嘉島(あかじま)へ行ってみた。
那覇空港からバスで泊高橋(とまりたかはし)下車、荷物を引いて泊港へ。高速船に乗り込めば、50分で阿嘉港到着。民宿のご主人が出迎えてくれた。
宿へ向かう前に、車でニシバマ(北浜)ビーチへ。サンゴの海が広がる美しい砂浜。誰もいない。4月に海開きすると、人で埋め尽くされるそうだ。車に戻ると、島固有の野生鹿、ケラマジカが近くに現れて驚かされた。
宿は集落の東外れ。東京で大手飲食関係の会社に勤めていたご主人が、故郷の島で民宿を始めたのは13年前。教師をしている奥さんは今は沖縄本島住まいで、宿はひとりで切り盛りしている。常連のお客さんが多く、大半がダイビング目的。夏は宿が足りなくなるほど来島者が増える。シーズン外れだから、泊めてもらえたようだ。
集落内を散歩。すぐ近くにこんもりとした林がある。そこは、御嶽(うたき)。湾に沿って集落は西へ延びている。大きく立派な建物は、島の幼稚園と小中学校。子供がキックボードを蹴っていた。
赤瓦の家が多い。サンゴの塀を巡らせる家もある。ブーゲンビリアが塀の上にこぼれ咲く。2月というのに注連縄が飾ってある。旧正月なのだ。集落の西外れ、赤瓦の古民家には「Bar」の暖簾が出ていた。
宿近くの商店でオリオン缶ビールと泡盛(あわもり)久米仙を買って帰った。夕食は、大きなミーバイ煮付けとゴーヤチャンプルー、ゆし豆腐。食堂には立派なオーディオセットがあり、登川(のぼりかわ)誠仁(せいじん)の島唄を聴きながら、晩酌。
夕食後、散歩の時に見つけたバーへ行ってみた。若いマスターは、今が一番暇な時期、夏になるとヨーロッパあたりから来る人も多いという。他に客は島の常連さんひとりだけだった。
翌日は、カフェで自転車を借りて、慶留間(げるま)島へ。阿嘉港へ入港する際に見えた大橋で繋がっている。海沿いの道路は工事中。1年前の台風で崩れた。海の東向こうには渡嘉敷島(とかしきじま)が横たわるが、ずいぶん大きく見える。
集落は島の南側。国指定重要文化財の高良家(たからけ)住宅を見学した。建物はサンゴをびっしり隙間なく積んだ石垣で囲われている。受付の女性が案内してくれた。琉球王朝時代に中国との貿易で財をなした家だという。平成7年までこの家で暮らしていたご当主は107歳で亡くなった。90歳を過ぎても漁に出ていたが、舟は戦時中の爆弾をふたつに割って造ったもので、今も飾ってある。トイレは屋外、豚小屋に直結して餌とした。昔の道具類も丁寧に保存展示してある。
慶留間島は人口わずか60人あまりだが、この島にもちゃんと幼稚園、小中学校がある。港には、明治時代に沖縄で初めて始められたカツオ漁を顕彰する碑が立っていた。
さらに南に橋で繋がった外地島(ふかじしま)があり、チャーターヘリ専用空港があるが、引き返した。阿嘉島に戻り、カフェでパスタランチを食べた後は、ニシバマビーチ展望台で、クジラが見えないかと探してみた。が、クジラの代わりに自衛隊のヘリが間近に飛んできた。
2晩目の夕食は、アジ酢〆、コマツナと厚揚げとシラス炒め、中身汁。食後、またバーに行った。昨夜の常連さんの他にもう一人、ツアーガイドをしている島の人。四方山話の中で名字の話になり、島で多いのは、金城、中村、垣花、与那嶺の順と教えられた。帰り道、見上げれば、こぼれんばかりの星空。久しぶりに天の川を見た。
那覇へ戻るフェリー船上から、三度もクジラを見たことも忘れられない。
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