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201803 印象派ゆかりの地、ノルマンディーへ  フランス紀行・前篇

 昨年、勤め人生活を卒業して、いつでもどこへでも旅することができるようになった。そこでフランスへ出かけることにした。久しぶりの欧州。
 9月半ば、直行便でシャルル・ド・ゴール空港に夕刻着いた後、パリ郊外のホテルへ。軽く何か部屋で食べようと近くのスーパーまで歩く。小雨が降っていて肌寒い。残暑厳しかった日本と大違い。チーズ、生ハム、パン、ワイン小瓶、缶ビール、珍しい平たい桃などをカゴに入れて精算に行くと、レジ係が何か言ってきた。桃が問題らしいが、英語は解さないようで何を言っているのか分らない。すると、後ろに並んでいた若い女性が、問題の桃をつかんで売り場の方へ向かった。量り売りだったのだ。その間、周りの人々は穏やかに見守っている。大昔、仕事で初めてフランスへ来た時に行く先々で意地悪されたことが嘘のよう。丁寧にお礼を申し上げ、無事買い物を終えた。いい旅になりそうな予感。
 翌日はバスでノルマンディー方面へ移動。まず立ち寄ったのは、ジヴェルニー。晩年をここで暮らしたモネの邸宅と庭園を見学。柳の枝が張り出す池の水面には作品に描かれた睡蓮が浮かんでいる。邸宅内には浮世絵コレクションが多数。食堂には銅鍋がずらりと掛けられていて目をひく。食通のモネは料理好きでもあったらしい。
 この日の宿泊地、ルーアンへはまだ陽が高いうちに入った。ルーアンはかつてのノルマンディー公国の首都、ジャンヌ・ダルクが火刑に処せられた地としても知られる。町の中心に立派なルーアン大聖堂が聳え立つ。
 夕食後、21時半過ぎ、ライトアップされた大聖堂正面に陣取った。これからプロジェクションマッピングが始まる。フランス・ゴシック建築最高峰のひとつである大聖堂の壁面をスクリーンにして、レーザー光線で物語が描き出されていく。ジャンヌ・ダルクの処刑を象徴する赤い炎、豊かな緑の森、世界中の人々との交流など様々なテーマが展開される演出に、圧倒された。
 翌朝は周辺を散策。狭い石畳の路地、古い木組みの家々。親に付き添われて登校する小学生たち。荘厳なサン・トゥアン教会裏の公園には小ぶりな皺だらけの栗の実が落ちていた。
 大聖堂内部を見学したり、モネが描いた2階の部屋から大聖堂を眺めたり、旧市場広場の露店をひやかしたりした後、広場に面した老舗レストラン、ラ・クーロンヌで昼食。店内の壁至る所に世界中の著名人の写真とサインが飾られている。メインは、名物の鴨のグリル。さすがに美味しかった。
 ルーアンからセーヌ川河口の港町、オンフールへ。降っていた雨がようやく上がった。船溜まりの側には、古風で可愛らしい回転木馬。中世に舟板で建造された教会も趣がある。
 オンフールからは渋滞する高速道路を経てモン・サン・ミシェルへ。夕暮れ時、牧草地の彼方に修道院の建物が見えてきた。車両立ち入り制限された区域内のホテルへチェックイン。シードルを飲みながら夕食を済ませ、夜のモン・サン・ミッシェル散歩へ出かけた。ホテルは島の外にあるが、島の入口まで早朝から夜中まで無料送迎バスが走っている。ライトアップされた修道院は神々しく見える。日中は観光客でごった返す島内の狭い路地も街灯に照らされて閑散としている。城壁に登り、修道院入り口まで行って、戻ってきた。
 翌日、朝靄に包まれた修道院に入場し、内部を順番に見学してテラスに出ると、二重の虹が架かっていた。脇を見れば、修道院の建物が影になって映っている。初めて見る絶景だと、現地ガイドも興奮していた。

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