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そんな雨なら、もっと降ってほしい ~【櫻坂46】「五月雨よ」MVの世界~

櫻坂46の「五月雨よ」のMVが公開されてから、3日目となった。
公開されてからは、良い音源で聴くことができることもあり、改めて彼女たちの歌声が、じっくりと堪能できるのが嬉しい。
繰り返し聴けば聴くほど、楽曲の素晴らしさを感じるのだが、美しい映像と相俟って、彼女たちの魅力が爆発していることをつくづく実感する。

最初にラジオで音源解禁された時、少し冗長に思えた「Wow Wow」も、映像がつくと、全く印象が変わる。

五月雨よ 晴れた後から
愛しさが こみ上げてくる
見上げたって 変わらないのに
どこかに虹 期待してしまう
五月雨よ 切なくなる
いつの日かは いつ来るんだ?
広げられない 傘を持ってる
今すぐに 会いに行くために
どんな時も 絶えることない
永遠を 愛と信じてる

櫻坂46「五月雨よ」歌詞(MV書き起こし)より

長すぎるサビの部分も、この「Wow Wow」を経た後では、意味が違って聞こえるから不思議だ。
情報番組内で山﨑さんも、次のように話している。

1サビ2サビは悩んでいるんですけど、ラストサビでは同じ振付なんですけど、表情も全然違ったりするので、そこにも是非注目して欲しいなと思います。

TBS「THE TIME,」3月10日放送分より

楽曲だけでは伝わりにくい部分も、映像と振付が足されることで、「寄り添い、応援している」要素が強調され、櫻坂46らしい楽曲へと様変わりしていることがわかる。
アップテンポで激しくパフォーマンスをするという従来の方法から、指先や腕、顔の表情による柔和で穏やかな表現方法となったことで、かえって、彼女たちの実力が試される形となった。
日々成長している彼女たちは、その難題も楽々と越えてきているのは、MVを観ても、しっかりと確認することができるだろう。

冒頭のシーンで、山﨑さんが空に昇り、最後に再び舞い降りてくるのは、彼女自身が「雨」であることを表現しているのかもしれない。
湖や川の水気が、水蒸気となって上空に昇り、それが上空でくっついたり、ぶつかりあったりしている内に、大きな水滴となって、また降ってくる。
画面の独特な浮遊感も、雨粒が空から降りてきている様子を表現していると思えば、納得できるだろう。
土生さんを中心にメンバーがくるくると回っているシーンも、どことなく、雲の中で、雪の結晶のように、中心となる物質に次第に水分が吸着し、そのままの形で凍っている様子を現しているようにも見えてくる。

MVの中で、彼女たちの衣装が、一人ひとり異なっているのも、降り注ぐ雨が、いろいろな場面で、たくさんの用途で活躍していることの表現と言えなくもない。
あれだけ違う服を着ていても、グループとしての統一感を失っていないのは、今回もスタイリストを担当してくださったRemiさんの手腕によるところが大きいだろう。
櫻坂46となってからは、楽曲衣装でも、一人ずつデザインが異なるものが採用されることが増えている。
欅坂46時代は、どこか軍服要素がある「画一的な制服」に身を包むことで、クールさと力強さが強調されることが多かったのだが、メンバーの成長に合わせるように、それぞれの個性と女性らしさがより感じられる衣装へと変化している。
これは、彼女たちの一体感が、衣装に頼らずとも伝わるようになってきたことを示していると言えるだろう。

MV解禁前は、タイトルに沿う形で、雨のシーンがあるのかと思っていたのだが、どこまでも晴れた映像が続いている。
これも、彼女たち自身が、乾いた大地に降り注ぐ「慈愛に満ちた雨」であると考えると、MVの説得力が増すように思える。
今回のMVを担当した堀田英仁監督が「利他の精神」をテーマにしたと言っている意味も、彼女たち自身が、雨のように、人々の生活の「潤い」となり、聴く人を「元気づけ勇気づける存在」であることを表現していると考えると、妙に合点がいくのだが、いかがだろうか。

どちらにしても、彼女たちのような「素敵な雨」が降ってくるのであれば、いつまでも浴びていたいと思うのは、ファンならずとも、当然の気持ちであろう。

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