君の物語 6 落としもの
猫はよく落としものをする。
ふわふわの毛が圧倒的に多いのは言わずもがな。
他には剥がれ落ちた爪やヒゲ。
足にくっついて運ばれた猫砂。
そういった落としものは、ルゥがそこにいた痕跡なわけで。
〈そうなの、ここへ来たの。かわいいねえ。〉
と、いちいち幸せになる私たちはお安いのかもしれない。
ルゥが家に来て数週間経ったある日、
廊下に牙がコロンと落ちていていたことがある。
牙って落ちたりする⁉︎
これって大丈夫なの⁉︎
焦りに焦った。
調べたら乳歯が抜け落ちたのだった。
猫も歯が生え変わるという。
考えてみると当たり前のような気もするけど、やっぱり目の当たりにしないと気づかないもの。
それにしても子猫の牙は小さくて、なんとも可愛らしかった。
そしてもうひとつ。
洗面所の込み入った隅っこに小石が転がっていた。
長いこと転がったまま。
ずっと〈奥に石が転がってるな、まあいいか〉となんとなく思っていたズボラな私。
「それは落としもののウン○じゃないか?」と言ったのは誰だったか。
とにかく、指摘されるまで長期にわたって放置していたことに変わりはなく。
ようやく回収した時はカチンコチン。
〈やっぱり石かもしれない〉と、私としては最後までその正体に自信が持てずじまいだった。
けれど、きっとそういうことだったんだろう。
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