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それでは皆さん御一緒に

10代前半。

兄と父は、テレビで放映される映画やライブ映像を、ちょくちょく録画していた。

なので私は1人で家にいる時は
ビデオテープをランダムに取り出しては勝手に鑑賞していた。

その中で、しつこいくらい何度も繰り返して観た映画があった。
ビートルズの『イエローサブマリン』。

ストーリーも音楽も好きだけど、それよりなにより色彩に夢中になった。
いわゆるサイケデリックな色合いで、特に気に入ったのはピンクと黄緑色の組み合わせだった。この全然違う色が、並ぶととても仲良しに見えた。こういう発見が楽しくて。

『エリナ・リグビー』で街が立体的に立ち上がっていくのを何度も巻き戻して観たり、『穴』が欲しいと夢見たり。
『64才になっても』は後に、父が64才になった誕生日にカセットテープ両面に録音してプレゼントした。(反応がめちゃくちゃ薄かった。ありがた迷惑だったのかもしれない)

登場人物(人物でいいんだろうか?)はジェレミーがお気に入り。
寂しがり屋すぎて怖気つくけど、邪険にできない。もふもふしていて抱きしめたら絶対に気持ち良いはずだった。
ジェレミーのぴよんと頼りなく伸びた手の曲線をたどりながら、画面の隅々まで目を凝らす。


1番好きだったのは、これ以上ないくらいの大団円の後に流れるエンディング。

『All together now』

幾つもの言語で訳詩が表示される。
世界にはたくさんの民族があり、たくんの言語があるんだ。世界にはいろんな人たちがいて、とっても広いんだ!
大事なことを、ビートルズは教えてくれた。

日本語は手書きで表示される。


 『それでは皆さん御一緒に』



あまりに繰り返し観たのでテープの劣化が早く…
父と兄へ、
ごめんなさい。
犯人は私でした。
    (今さらの白状)



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