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ピーチブラック

なぜ心惹かれるんだろう。
見ていると体の中心がざわざわするのに。



先月、栗原一郎が暮らした地で小さな展覧会があるというので行ってきた。
とても小規模で一室の半分に満たないものだった。

それでもいい。
鑑賞できるだけで大満足だ。

今回の展示は絵が数点の他、使っていた画材道具やメモのようなもの、絵のモチーフになった靴なども展示されていた。

黒を多用する画家なのだけどー。
絵の具が乱雑に積み重なったその頂に、黒の絵の具が乗っていた。
近寄ってみると『Peach Black』とある。

絵の具にはそりゃもう、たくさんの色がある。紙の種類同様、画材屋さんに行ってワクワクする一因だ。
黒もひとつじゃない。

Peach Blackがお気に入りだったんだろうか。

調べてみたら、〈Blackの中でも見た目が1番黒い〉とあった。元々は桃の種を焼いて顔料にしたという。

そうか、そうなんだ。



メモは書き殴った字で読めないものもあったが、その中で色褪せた紙切れがふたつ、目に留まった。
力強く太い字。

 生きていることの

 無情
 諦観
 ???
 恥ずかしさ

栗原一郎

???は字が読み取れなかった。
残念。

〈無情〉よりも〈諦観〉よりも〈恥ずかしさ〉がぐさっと刺さった。

ほんと、そうだ。
生きていると恥ずかしいことばかり。恥をたくさん積み重ねてきて、今がある。


もう1枚

   闘っている者は
   いつも美しい

栗原一郎



写真撮影は不可だったから
じっと見て、
一回りしてまた見て、
外に出てから戻ってじっくり見た。

何度も引き返して凝視しては、その画を自分の内にできるだけ焼き付けた。
そうして最後に外へ出た後、メモに書き留めた。


うん。
頑張れそう。






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