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ぶりの照焼きで感じる非日常とは



1年半ほど前からさせていただいてきたご飯作りのお仕事。
昨日はそのお仕事の日。
お弁当を42個作ってきた。

きっかけは、2019年の秋の大雨。
利用していたシェアキッチンが激しい雨漏り被害を受け、3ヶ月以上施設を使えなくなったことだ。
修繕している期間、少し離れた別のシェアキッチンを貸してもらえることになり、一時的に借りられることになったその場所には、綺麗なカフェスペースが併設されていた。

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イートインもテイクアウトもできる新しい施設。
いつもと違う場所での営業。

ベーグルを販売するようになって3年以上が経ち、クリカ食堂の認知があがる一方で、料理をしたいという気持ちはずっと持っていて。
でもベーグル屋のイメージが強くなり、なかなか方向転換もできない。

新しい場所で、せっかくだしこれまでやりたかったけど、やれなかったことにチャレンジしてみよう!
そう思い、映画のかもめ食堂に出てくるような定食屋さんにチャレンジしてみた。

たくさんの方に食べにきてもらった。
近所で働く人たちや、ベーグルの時のお客様がわざわざ足を運んでくれた。
働いている人に必要なご飯を届けられるという喜びや、ワクワクするような楽しさや、野菜を選び、カラフルな野菜を調理する楽しさに心が躍った。

けれど、定食屋という業態をシェアキッチンでやるのはリスクが高かった。食品の賞味期限も短いし、自分の作る地味な料理に、ベーグルを越えるほどの需要があるようにも思えなかった。

翌年2月。被害を受けたタウンキッチンが回復し、臨時的に借りていたシェアキッチンは離れ、タウンキッチンに戻ることになった。
久しぶりにベーグルをたくさん焼いて、感じたことは、ベーグルも続けたいということ。
でも、ご飯も作りたい。

どうにかして二つともそれぞれに続けられる方法はないか。
そんな時、まかないご飯のスタッフ募集に行き当たり、申し込んだ。

アレルギー食材を使わないよう注意した上で、予算の中で何を作るかは自分次第。
クリカ食堂とか、コンセプトとか、そんなことは関係なく、ただただ、暑さや寒さから、どんなご飯を食べたいだろうと考え、お腹が温かくなるようなものを作る。

さて、そんなご飯作りを昨日もさせていただいたのだけど、その時いつも「美味しい美味しい」と食べてくださる方が

「今日もとっても美味しいわ。まるで旅行にでも来たような気持ち」とおっしゃってくださった。

私は驚いた。だって、お弁当の中身はぶりの照焼き。
野菜の醤油麹炒め。
漬物2種。
よく作る南インドカレー弁当でもなく、気を衒う事のないメニューなのに。

帰りの車の中で、旅先はどこをイメージされたのか、お聞きしたら良かったなと後悔した。

人の当たり前と自分の当たり前は違っていて。
ぶりの照焼きという日常的に食べていると自分が思っている料理で、
旅行のような非日常を感じてもらうこともできるのだ。
夏野菜をたくさん入れたからか、ブリがふっくらしていたからか。理由はわからないけれど。

そんなことを感じられる料理は、やっぱり楽しい。

そして賄いご飯作りのお仕事はもうあまり入れなくなるけど、今作っている新しい場所で、お弁当なのか教室なのか、はたまたベーグルサンドなのか、料理の要素も取り入れよう、と改めて決意した。

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