ムビナナでドルビーシネマデビューしたら良すぎて後悔した話

  今日、『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD DAY2』ドルビーシネマ版を見てきた。
     端的に言って凄まじい映像体験だった。私はドルビーシネマ(以下:ドルシネ)というものを見るのは初めてだったが初めてのドルシネ体験をこの作品に捧げられてよかったと思う。
    私は5月に公開されて以降ムビナナ自体には毎週のように通いつめ、鬼リピしている人に比べたら控えめだが累計20は超えるであろう回数見てきた。そのため映像に散りばめられた細かいこだわりまでそれなりに把握しており、作品を見ることに関してほぼ満足しきった状態になっていた。簡単に言うと飽き始めていたのである。
    元々私は何も知らない状態で作品を初見で浴びた時の衝撃に快感を覚えるタイプなので、そもそも同じ作品を短い期間で何回もリピートするということ自体少ない。映画でいうなら公開期間中に2回見に行くだけでも珍しいほどだ。        そのため期間が数ヶ月あり内容も2種類から選べたとはいえこんなに同じ作品に足繁く通っただけでも私の中では相当すごいことなのだが、その分自分が飽きてきたと気づいた時は悲しかった。「ああ、こんなに素晴らしい作品なのに、ここまでずっと新鮮に楽しめていたのに、やっぱりダメなのか」と。だからこそドルシネへ行くのもそれなりに迷った。なんなら当日の朝まで行くかどうか決め兼ねていた。
    信頼のおけるマブダチ達が揃って褒めていたので興味はあったものの、「もしこれすらも感動できなかったらどうしよう。わざわざ地元から離れた映画館まで行って追加料金を払ってまで見る価値があるのだろうか」という不安は拭えなかった。
    しかし、実際の体験はどうだろう。開始1秒で「あっ、来てよかった」と思えるほど素晴らしいものだった。今まで見てきたものとは全く違う感動がそこにあった。鑑賞用の追加料金も映画館へ行くための交通費も全てどうでも良くなった。秒で元が取れてしまった。
    具体的にいうと私の場合、地元の映画館で会員になっているのでそちらで見る場合1000円しかからない上、自転車で行ける距離なので交通費もほぼないようなもののため、今日は交通費諸々含めると普段の3倍程の金額を払ったことになる。それが鑑賞後の現在、気分的に全てチャラになっている。
    何故ここまでしつこく金の話をするのかと言うと、金を理由にドルシネを躊躇って人がいるなら絶対行って欲しいからだ。どこが具体的にすごいかは後述するが、とにかく金に関してはそれだけのものを支払う価値があると私は思う。もしまだ迷ってる人がいるならぜひ行って欲しい。


    さて、長々と抽象的な話をしてしまったがここからは具体的な話をしたいと思う。なお、この記事は構成として視覚情報<聴覚情報になると思う。どちらも感動はあったが私自身、映像や衣装といった視覚情報より音響や声など聴覚情報の方が独学とはいえ語れることが多いからである。
    そのため、まずはサラッと視覚情報で感動したポイントについて叫び、その後聴覚情報について語っていく。



視覚情報の話
・冒頭OP映像
「えっ、なにこれドローン飛ばしてる???」
   1番初めに私が思ったことである。OP映像の客席をぐるっと回るようなカメラアングル。これがまるでドローンで撮った映像を見ているような臨場感があるのだ。何度も見てきたOP映像だが初見時すらそんなところで感動はしなかった。これは全編にわたって言えることだが、今日見た映像はあまりにも「見知ったはずなのに知らない映像」だった。その後の土から芽が出るシーンもとにかく実感がリアルで驚いた。
この時点で私はドルシネの虜になっていた。

・衣装の質感
    最初にそれを感じたのはモンジェネを披露し終えてアイナナがMCをしている時だった。
「なんか一織のベルトいつもより光ってない?」
   私は一織担なので彼が画面にいる間はひたすら彼を凝視しがちなのだが、今日はその衣装が一際輝いて見えた。しかし照明に衣装が反射する表現は他で見た事があったため、その段階では「はえーそういうところまで表現できるのか。すごいな」と割とサラッと流してしまった。
  私が度肝を抜かれたのはその後だった。アイナナのパフォーマンスが終わり、みんな大好きŹOOĻのササゲロが始まりセリフパートでひとしきり湧いたあと、ふと目線が顔の下に行き、気づいた。
「なんか衣装に細かい模様入ってない!?!?」
そう、ŹOOĻが着こなしていたあのかっこいい衣装に使われているレザー生地の質感がしっかりと視覚情報として見えるのである。嘘だろと思った。
  余談だが、私の知るかなり高クオリティな3DCG映像の例として『あんさんぶるスターズ!!Music』というゲームのMVがある。G4Yの映像を担当しているダンデライオンさんも関わっている映像なのだが、サービス開始から3年経ちかなりの進化を遂げている。先述した衣装の一部が照明に反射するという表現はこちらで見たものだ。しかし「衣装生地の細かい模様が見える」という体験は今日が初だった。だから余計に驚いた。ここまで再現できるのか、ここまで再現するのかと。そして衝撃はŹOOĻだけでは終わらなかった。
   次のTRIGGERの番では衣装前面の刺繍がはっきりと見えた。刺繍特有の凹凸も、糸と糸の隙間から覗く布も、全て再現されていた。ここまで来ると率直に気持ち悪いと思った。(※最大級の賛辞です)
   普段は国宝ばりの顔面ばかり見てしまいあまり衣装に注目することは無かったのだが、今日ばかりは顔面そっちのけで衣装ばかり見ていた。ずっと視線は下の方にあったと思う。

  以上が私が視覚情報で特に感動したポイントである。もしかしたら私が普段見ていないだけで通常上映でもわかる部分なのかもしれないが、私は今日初めて気づくことばかりだったのでそれだけドルシネの映像がわかりやすいということでご容赦いただきたい。


聴覚情報の話
・生だけど生じゃない
  聴覚情報についてまずは全体的な話がしたい。ドルシネの音響はなんと言っても"生感"がすごかった。左右から声がする劇場は他にもあるしセリフパートの囁き声を際立たせた音響演出をしている劇場もあった。しかし、こんなにも"生"を感じたことはない。これが個人的にすごい衝撃だった。
  ここで注目したいのが、あくまでこの体験は"生感"であって決して"生"では無いことだ。
  映像で使われている音声全てが、まるでその場にいるかのように聞こえる。歌も曲も観客の声援も、「映像音声」ではなく「現地で聞こえる音」のような聞こえ方をする。この感覚は非常にリアルで、これこそがドルシネの真骨頂なのだろう。しかし私はこれを「生に非常に近い感覚」と思いこそすれ「実際に生で聞いている」とは思わなかった。
  なぜなら音が綺麗すぎるからである。
  私は現地でライブを見るのが好きだ。やはり生でしか感じられない音があるし周りにいる観客のわくわく感が会場に広がっている雰囲気も大好きだ。
  しかし現場もいい事ばかりではない。席運が悪ければ目当てであるアーティストがよく見えないし、音に関して言えば会場に音が吸われたり反響でズレたりすることもある。客席の雑音だって案外バカにならない。実際の現場は楽器や歌の生音を聞ける唯一の場所であると同時に、最も雑音が多く聞こえる場所でもあると思う。
  しかしドルシネは違う。現場の音はその場限りの偶発的なものだが、ドルシネは完璧に計算されて作られた音である。そのため「邪魔なノイズが一切排除された状態で生の音を聞く」という夢のような状況が実現しているのだ。
  個人的にこの音響は2次元であるムビナナと非常に相性がいいと思った。もちろん3次元に実在するアイドルやバンドのライブをここで流しても同じように生感のある音が楽しめると思うが、やはり実在するアーティストは映像を介した途端「画面の中の人」になってしまう。ライビュや配信にもそれぞれ利点はあるが、3次元の場合、現地、ライビュ、配信と選択肢が並んだ場合やはり至高とされるのは現地であるし私もそう思う。しかしムビナナには「現地」という選択肢が存在しない。私も幾度となくその残酷な事実を悲しんだが、今日ばかりはそうではなかった。映像作品として「画面の中の人」であることしか出来ないはずの彼らのライブを限りなく生に近い感覚で楽しめるのだ。
  "生"とするには綺麗すぎる音響も「2次元は仮想空間である」という大前提があるため気にならない。むしろ「リアリティのある夢空間」こそが2次元の真骨頂だと個人的に思っているため、ドルシネはまさに私にとって理想の空間だった。
  これは本当にすごいことだと思う。ナナライともG4Yとも違う、「映像作品として鑑賞することを想定して作られている作品を限りなく現実に近い感覚を伴わせて見せている」のだ。
まさかそんな矛盾した体験ができるなんて思ってもみなかったので非常に感動した。
  仕組みは全く分からないがこの技術がある時代に生まれてよかったと思う。


・歌
   そんなこんなでとにかくドルシネの"生感"について語ってきたが、ここからはさらにそれを細かく分けて語っていく。
  まず歌について言いたいことはただ一つ、
「全員の声が鮮明に聞こえる!!!すごい!!!」だ。
   これはモンジェネの時点で感動したポイントだ。普段聞いているCD音源はもちろん、通常のムビナナで使われている音声も少なからず一発録りの生歌ではなく様々な調整が入っている。ムビナナの音声はCDと聞こえ方が違うので、CD音源とは違う調整が施されているのではないかと個人的には思っているが、実際のところどうなのかは分からない。そして当然ドルシネの音声も生歌ではない。映像に綺麗に合うために調整された音声だ。しかしそれが、普段のものとは全く違う聞こえ方をする。特に注目して欲しいのがサビなどメンバー全員で歌っているときだ。Re:valeの2人歌唱はもちろん、IDOLiSH7の7人ですらはっきり全員の声が聞こえるのだ。しかもそれがそれぞれ少しズレたような聞こえ方をする。その響き方が非常にリアリティがあり、まさに「現地で聞く音」の感覚なのだ。私は特に現地の音でも生歌を聞くのが好きなのでこの体験はとてもテンションが上がった。バックコーラスと歌唱パートの違いもハモリパートもいつもよりはっきりと聞こえる。楽しくてしょうがなかった。

細すぎて伝わらない特におすすめポイントは
『DAYBREAK INTERLUDE』の「静寂の〜」から始まる歌い出しの楽の歌声と、『Pieces of The World』の楽と一織のパートの「追想に」のワンフレーズだ。前者はとにかく迫力がすごく、後者は声の調和が素晴らしくて耳に馴染むのでぜひ注目して欲しい。


・拍手
  これも非常に感動したポイントの1つだ。
  ドルシネの拍手音、なんとズレるのである。
  これだけ聞くと悪いように聞こえてしまうかもしれないが、よく思い出して欲しい。実際に大勢がいる会場で拍手や手拍子が起こった際、ピッタリ綺麗に音が重なることがあるだろうか。少なくとも私の記憶にはない。各々のタイミングで叩いてる拍手はもちろん、タイミングを示し合わせているはずの手拍子すら大きな会場ではズレが生じる。これは反響の問題もあるので一概にタイミングのズレとは言えないが、とにかくあれだけの規模の会場で拍手の音が全て重なるなんて普通はありえないのである。
  しかし、正直揃っていたからといってそれに違和感が生じているのかと言えばそうではない。私だって今日ドルシネを見るまでそんなことは一度も気になったこと無かった。しかしそんな些細なポイントにもドルシネはこだわっていた。アイドルが主役のライブで、顔も見えず見方によっては演出の一部とも言える観客から発せられる音すらリアルに再現しているのだ。
  こういった細部までこだわった音作りによってドルシネ特有の"生感"が実現しているのだろう。本当にすごい。


・おまけ
  これまで散々ドルシネの"生感"について語ってきたが、個人的に「こんなとこまで再現するの!?」と1番驚いた所を紹介したい。
  それは「銀テープが発射される時のテープ同士が擦れる音」だ。
  銀テープが発射される時の「バンッ」という音は通常上映でもしっかり聞くことができ、その音ともに降り注ぐ銀テープを見ながら「いいな〜私も銀テープ欲しいな〜」と指を咥えながら終わりに近づいてきたライブに寂しさを募らせるのが個人的な恒例となっている。しかし、今日に限っては、おなじみとなったその哀愁は「カサカサ」という小さいが確かに聞こえてきた音によって消え去った。
「えっ?今の音なに?まさか銀テープが擦れた音???」
  まさかそんな細かいところまで再現されると思わなかったので混乱した。いや、確かに現地で聞いたら擦れる音もするけど。
  こんなことまでするなんてもはや変態的じゃないかドルビーシネマ。本当にすごいなドルビーシネマ。
最後の最後に虚をつかれた気分だった。



まとめ
  ここまで長々と書いてきたが、とにかく私が言いたいことは
「ドルビーシネマは素晴らしいのでまだ見てない人はぜひ見てほしい。絶対後悔しないから」
である。
  残念ながらもうすぐムビナナも千秋楽を迎え、大きな劇場のスクリーンと整えられた音響設備で楽しむことはできなくなってしまう。
  その前に時間がある人はぜひドルビーシネマを見てほしい。私は今回ドルビーシネマという技術そのものにも感動したが、やはり何よりもムビナナという作品がドルシネと相性バッチリだったからこそ、ここまで興奮が起こったのだと思う。
  タイトルにもある「私が後悔したこと」とは「もっと早くドルシネを見に行かなかったこと」と「今後の予定を詰めすぎてもう公開期間中にドルシネ体験は出来ないであろう」ということだ。私は現在、人生の夏休みとも呼ばれる大学生の中でも特に暇なことで有名な長期休暇期間であるが、カレンダーはバイトの予定でびっしり埋まってしまっている。もちろんバイトに行かないことにはお金を得られずこうしてドルシネを見ることも叶わなかったわけだが、それにしても詰め込みすぎじゃないだろうか。もう少し休んでも良かっただろ、と絶賛頭を抱えている。
  アイナナオタクの中には私なんかよりも遥かに忙しい社会人や思うようにお金を使えない中高生の人もいると思う。そもそも多少距離があるとはいえ日帰り余裕でドルシネ開催会場まで行ける場所に住んでるだけでも私はラッキーなのだ。
  だから「絶対になんとしても行け」なんて偉そうなことは言えない。が、もし少しでも余裕があるのならぜひドルビーシネマを検討して欲しい。私は今日ドルビーシネマを見て本当に良かった。もう幾度となく観た映画のはずなのに忘れられない思い出になった。
ありがとうムビナナ。ありがとうドルビーシネマ。

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