関西の乗ったことがない路線 北条鉄道
北条鉄道の北条線は小野市の粟生駅と加西市の北条町駅を結ぶ13.6kmの路線。例にもれず国鉄の赤字路線を引き継いだ第三セクターの北条鉄道株式会社が運行している。
粟生駅ではJR加古川線と神戸電鉄粟生線と接続。小野市の中心市街地は粟生駅ではなく、加古川を挟んだ対岸で神戸電鉄線となる。
北条町駅は加西市市役所のある中心駅で、合併で誕生した加西市の中心自治体でもあった北条町の中心駅。駅前のイオンモールは今は無き三洋電機の創業工場で戦後松下電工から独立して自転車用発電ランプの日本一の工場だったが、三洋電機の凋落とともに2006年に閉鎖してしまったよう。
北条鉄道は地方第三セクター線の例にもれず国鉄末期に廃止対象となった地方交通線を自治体が出資し存続させたもの。北条線は現JR加古川線の前身となる播州鉄道によって開業した路線の1つ。播州鉄道は加古川流域の兵庫県内陸地方と山陽線を結ぶ鉄道として1913年に開業、この地域名産の播州織や酒造米山田錦の輸送が1915年に分岐路線として北条線の全区間が開業。播州鉄道はJR加古川線にあたる加古川と谷川の区間とそこから分岐する三木線、北条線、鍛治屋線、加古川駅から南へ向かう高砂線の4路線ともども国有化している。後は各地の廃線や第三セクター化した路線と同じで、利用者は振るわず終点でほかの路線に接続しない盲腸線はすべて廃止候補に、北条線と三木線のみ第三セクターとして残ることになったという流れ。1985年、JR発足2年前に北条鉄道株式会社として再出発。加西市、兵庫県、小野市で58%、商工会議所や地元企業が出資している。ちなみに同タイミングで発足した三木鉄道は神戸方面へは遠回りになるという不利な状況で、神戸電鉄線やバスで代替できることから2006年に廃止されてしまった。
北条線は13.6kmで8駅と短めで片道22分で結んでいる。非電化ローカル線ながら、線路は直線的でローカル線としては比較的速い部類。全線単線で行き違いできる駅がなかったため北条鉄道化してから1両編成が1時間に1本程度単純往復していた。逆に言うとこれ以上の増発ができないことが利用促進のネックとなっていた。
そこで法華口駅で列車行き違いができるよう考案されたのが全国でここでしかない信号システムの「票券指令閉そく式」。ローカル線において大規模な信号設備を導入するのは初期投資もランニングコストも非現実的、人力で信号操作をするのも人員確保が課題。このシステムは法華口駅で通行許可情報を持ったICカードをタッチすることで、北条町駅の運行管理で遠隔に通行許可をもらうシステムで、日本で初めてのシステムとなるため国交省の審査も念入りに行われたよう。総事業費は1.8億円、鉄道・運輸機構の活性化補助事業で3分の2、残りはふるさと納税を活用し5,210万円を調達し実現。従来の信号システムでは4億円と見込まれていたとのことで、半分以下のコストで交換設備が設置・維持できるため全国のローカル線にも広げられることが期待される。
これで朝と夕方で5往復が増便され1日17往復が23往復に、その後1便減で22往復に調整されたけれど通勤通学需要に応え定期券販売数も若干増えているようで効果が出ているということ。
参照
2021/9/2 05:30神戸新聞NEXT
列車の無人駅行き違い、低コストで 北条鉄道、法華口駅の設備に協会賞
加西市広報誌 広報かさい 2020年10月号
https://www.city.kasai.hyogo.jp/site/koho/2559.html
車両は日本中の非電化ローカル線に兄弟がいる富士重工のLE-DCシリーズのフラワ2000系。フラワとは兵庫県立フラワーセンターから、とはいえ北条鉄道のどの駅からも徒歩1時間くらいはかかりそう・・・。もう一つは秋田県の五能線から転属されたキハ40、全国的に数を減らしつつあるキハ40は観光利用にも活用されるよう。
ちなみに、景色については低山に囲まれた河沿いの平野に広がる畑と田んぼと田舎だけど建物が途切れない感じ、西日本だなとゆったりした雰囲気。正直に言えばローカル線として特筆すべきないというのが悲しいかな。
利用者促進のため毎月のように季節のイベント列車を走らせたり、各駅オーナーを募ったり、枕木応援団、各駅の装飾、運転体験などいろいろな取り組みをやっている。私ももう少し近くに住んでたらいろいろ参加してみたいと感じる魅力的な取り組みだと思う。