和歌山電鐵の駅長へ会いに行きました
JR和歌山駅東端の9番線、可愛い2両編成の電車が来る路線が和歌山電鐵 貴志川線。元々は南海電鉄貴志川線、廃線の危機に瀕していたところ、公募により岡山の路面電車を運行する岡電が事業を引き継ぎ、和歌山電鐵として再出発した。
30分に1本、全列車が各駅停車、和歌山駅から終点の貴志駅まで14.3kmを30分程度かけて結ぶ。和歌山駅と本社・車両基地のある伊太祈曽駅以外はすべて無人駅の超ローカル線。和歌山市中心部から内陸方面へ、郊外の住宅街を抜けると、田園と里山が広がる。熊野古道や高野山などの歴史的街道と交わり、紀伊の国一宮3社巡りなど歴史を感じることもできる。
この和歌山電鐵が日本で最も有名なローカル線の一つに挙げられるのが、世界初の猫駅長の「たま」の存在がある。たまの母親は南海電鉄時代から駅の作業所で飼われていた元野良猫、その子供たちの1匹である三毛猫のたまは貴志駅の売店で飼われ、駅や売店の利用者を癒していた。
貴志川線が和歌山電鐵へ事業継承されると、駅の敷地は公用地となり猫たちも立ち退きを強いられることになる。そんななか飼い主が和歌山電鐵親会社の社長へたまを駅で飼えないかお願いしたことで、駅猫たまは引き続き看板猫を続けられることとなった。そして2007年、和歌山電鐵より正式に駅長として任ぜられ、駅長たまが誕生することになる。これはiPhone初号機が世に出た年。
それがきっかけとなり日本初の猫駅長に任ぜられ、招き猫として廃線の危機から踏ん張るかのように利用者は増えることとなった。猫界のパイオニアとして、各地の看板猫に役職を与えることがブームにもなり、SNSの普及とともに猫ブームの火付け役にもなり、猫駅長は日本各地のローカル線に広まった。。
貴志駅長たまは全駅の駅長であるスーパー駅長、ウルトラ駅長と昇進、死後は大明神として貴志駅内に祀られ、名誉永久駅長に就任。和歌山殿堂第一号に、騎士号まで持っている。後継は血縁はないけど同じように拾われたニタマで、ニタマはもともとたまの後輩として伊太祈曽駅の駅長を務めていて、今では貴志駅に勤務している。
そんな猫駅長たちだけでなく、和歌山電鐵は車両にも凝っている。南海電鉄から譲渡された車両をベースに、保有する全車両が異なるラッピングをされている。最初期からいちご電車があり、たま駅長が登場してからはたま電車や、紀州の梅ぼし電車、そして去年デビューしたのがニタマ・ヨンタマをモチーフにしたミュージアム号。クラウドファンディングも大成功。普段からこの電車は日常に溶け込み?通勤通学客を乗せている、特別料金なんかも要らない。
終点の貴志駅はたまをモチーフにした猫耳屋根の駅舎になっている。無人駅なので駅員は居ないけど、今は2代目駅長のニタマがいる。10時16時出勤、完全週休二日制、食事昼寝付き。
和歌山電鐵本社があるのは車庫も併設され唯一の有人駅である伊太祈曾駅。ここはニタマの後輩であるよんたまが駅長を務めている。よんたまは今日はお休み、交互出勤なのでいつ行ってもどちらかの駅長に会える。時代の先駆者たる激務だった初代に比べ、時代の流れを汲んでホワイト職場。
和歌山電鐵初期からデザインを担当しているのはJR九州の観光列車でも有名な水戸岡鋭治。数々のJR九州の列車に乗ってきたけどわかる、自由が過ぎるデザイン。車内一歩足を踏み入れれば歯止めきかせて方の水戸岡が出てる。ちなみにイラストも水戸岡、貴志駅駅舎のデザインも。
水戸岡鋭治は岡山県出身で、元々和歌山電鐵の親会社の岡電(両備グループ)のデザイン顧問でもある縁。むしろ今となってはたま駅長が岡山へ逆輸入され、岡電にもたまラッピング車両があり、たまルンポイントという岡山エリアでのローカルポイントカードのキャラクターにまでなっている。
大阪から片道1時間半、ちょっとした小旅行に和歌山電鐵で猫駅長に会いに行ってはどうでしょう。端から端まで往復するだけで元が取れてしまう1日乗車券も破格。もう少し気候が良ければ3社巡りしながら駅の周り歩きまわれたけども。LCCなら成田から関空まで連休でも1万円程度、関東から行くなら関空からが一番近いです。