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土佐の大自然を貫く日本最後のローカル線 土佐くろしお鉄道

土佐くろしお鉄道は高知県内の中村線、宿毛線、ごめん・なはり線の3路線を運行する第3セクター路線。

中村線 中村駅(四万十市)~窪川駅(四万十町) 43.0km
宿毛線 宿毛駅(宿毛市)~中村駅(四万十市) 23.6 km
ごめん・はなり線 後免駅(南国市)~奈半利駅(奈半利町) 42.7km

この3つの路線は高知県の中心の高知駅から鉄道の西の末端区間にあたる中村線・宿毛線、東の末端区間がごめん・なはり線となり、終点となる宿毛駅、奈半利駅はほかに接続する鉄道路線が無い終着駅となっている。

双方はJR四国の土讃線でつながっているものの直通する列車は無い独立した路線。それでも高知県が49.1%、沿線の18の市町村計41.1%、合計90.2%の出資を行って、一体経営による効率化をすることとした。本社は中村駅に設置されていて、ごめん・なはり線の本部は安芸駅にある。

成り立ち 約束されたローカル線

土佐くろしお鉄道はよくある第3セクター鉄道とは少し違って国鉄の赤字路線を引き継いだというよりは、国鉄後期に途中まで建設を進めていたけど赤字拡大で工事が止まっていた宿毛線と阿佐線(=ごめん・なはり線)を活かすために1986年に設立されたのが始まり。同時期に赤字路線として廃線候補にあがった中村線の運営も引き継ぐことが決定された。

1986年に土佐くろしお鉄道株式会社が設立、翌1987年に国鉄分割民営化でJR四国が誕生し、さらに翌1988年には中村線が土佐くろしお鉄道へ移管される。その後、宿毛線と阿佐線の工事が進められ、宿毛線は1997年、阿佐線はごめん・なはり線改め2002年に開業。中村線も窪川駅から中村駅の全線開業が1970年とかなり新しく、20年持たずに1988年に土佐くろしお鉄道へ移管となった。

特にごめん・なはり線に関しては日本最後のローカル線という何とも言えない称号がついている。ローカル線というのはかつては利用者が多くて貨物や長距離列車も行き交ってたけど、時代の流れで寂れたというパターンが普通なのに、21世紀に開業するローカル線は流石に前代未聞かと。

宿毛線・中村線 

中村線と宿毛線はJR土讃線の延長として、高知市方面と四万十市(中村駅)や宿毛市と連絡する役割があるため、窪川駅を介してJR土讃線の特急列車が乗り入れている。中村駅は高知県西部の拠点都市となる旧中村市 現四万十市(人口3万人・・・)の中心駅ということもあり中村駅と窪川駅との間で見ると、普通9往復・特急8往復で、特急は全て高知駅へ直通。そのうち宿毛駅まで乗り入れるのは高知駅行のあしずりが1往復と、高松駅行のしまんとが1本のみ(高松駅発は無い)。宿毛駅と中村駅の間は普通13往復で、特急が前述1.5往復のみ。と言っても本数が希薄すぎて中村線・宿毛線内での追い越しは発生しないのだけど。

宿毛駅。開業が新しいので建物が少ないところに、コストかけずシンプルな高架駅が設置された。
宿毛市は高知県の西の端っこで人口1.7万人と、日本屈指の人口過疎エリア。隣は愛媛県愛南町に隣接。つまり、鉄道的にには最悪な条件。
ちなみにこの駅では2005年3月に特急列車が減速することなく駅に突っ込み、1両目が押しつぶされこの窓の部分を突き破る事故が起きてしまった。運転士1名が無くなり、何らかの理由でブレーキ操作ができなくなったとされているが原因は明らかにならなかったとのこと。この事故の影響で行き止まり駅では万が一の際も停まれるような速度まで減速できる自動減速装置の設置が義務付けられた。
TKT-8000、新潟鐵工(現新潟トランシス)の典型的ローカル線向け1両運行可能なディーゼルカー。各車両が沿線の名所や自治体などオリジナルラッピングがついている。
宿毛市街地を抜ける
文字通り工業団地隣接の工業団地駅
田んぼの上にまっすぐな線路
四万十市の中心部中村市街地
中村駅。右に停まっているのが普通列車、左側が特急あしずり。
中村駅は中心部から少し離れたところにある。内装は四万十ヒノキを利用している。
浮鞭駅で特急同士のすれ違い。
天気が悪いですが土佐佐賀の海岸線。
鹿島
基本的には山の中をゆく。
若井駅前にはトンネルのループ線があり、標高を稼ぐ。
トンネルを出ると川奥信号場で列車交換と、JR予土線が分岐していく。前で待っているのは中村線行きの列車。
窪川駅。旧窪川町の中心で、現在は四万十町。JR土讃線の終点駅でもあり、JR予土線の事実上の起点駅となる。
2019年に来た時、毎回天気悪いですね・・・。

中村駅と高知駅を結ぶ特急あしずりは高知駅と岡山駅を結ぶ特急南風と必ず接続するダイヤになっていて、四国最大のターミナルは岡山駅というのがこれほどわかりやすいダイヤもそうないんじゃないかと思う。コロナ禍前までは中村駅と岡山駅を直通する南風もあったのだけど無くなりました。

中村駅に停まる特急あしずり。
のりのり支援隊という中村線・宿毛線応援団のキャラクターもやなせたかしデザイン。だるま夕日がモチーフのサニー君とサンコちゃん。元々ちょっと不気味だもんねやなせたかしデザイン。
宿毛から各駅で中高生が沢山乗ってきて、中村駅の一駅手前の具同駅で大多数が降りていきました。周辺は中村市街地郊外のロードサイドショッピングモールなど商業施設が集まっているエリア。
高知駅到着。中村から約2時間。真ん中が乗ってきたあしずり、左に停まっているのが岡山行きの特急南風。対面乗り換えで接続する。
今回使ったのはこの切符。松山→高知、高知→松山の通り抜けと、フリー区間の乗り降り自由。宇和島から予土線も使えるし、宇和島→宿毛のバスも利用できる。1日で通り抜けずとも4日間有効。
宇和島交通の宇和島↔宿毛便は1日10往復、途中は愛媛県最南端の愛南町の中心部城辺を経由。海沿いをいくのと、途中に「嵐」というバス停があるので聖地になってるのだとか。
高知と言えばカツオのたたき。全国に名物あれど、どのスーパーに行ってもカツオのたたきが所せましと売られている鮮魚コーナーを見ると、本当に高知人はカツオのたたきを常食してるんだと思う。右奥に写っているのはウツボの唐揚げ。

宿毛線は当初の構想では宿毛から宇和島方面へ延伸し高知と愛媛をつなぐ壮大なものだったのだけど、そんなこと実現するはずもなく。結局、その役割は1974年全通の現JR予土線が担っているけども、JR四国最閑散区間で全国屈指の閑散区間。乗りとおせる普通列車は1日4本という有様。正直国鉄末期の時点でいつ廃線になってもおかしくなかったのだけど、高知県と愛媛県を直接結ぶ唯一の鉄道路線として存続している。四万十川に沿った超雄大なローカルは観光利用しか道は無い。

新幹線とか河童とか。予土線は2019年完乗済み。
四万十川と言えば沈下橋。増水時に欄干に流木などが引っ掛かって壊れないよう最初から水没を想定して作られている。
これは廃校を利用した海洋堂ミュージアム。2014年訪問。

ごめん・なはり線

ごめん・なはり線は大多数が後免駅でJR土讃線へ・から直通して高知駅と安芸駅・奈半利駅を結ぶ通勤、通学需要向けの路線で特急はない。後免駅と安芸駅の間は朝夕は30分に1本、昼間は1時間に1本くらいの運行本数。安芸駅と奈半利駅は3分の2くらいに減る。一部、香南市の中心駅ののいち駅など主要駅に停まり、安芸市街地に入った球場前駅から奈半利駅までは各駅停車になる快速が運行されている。時間帯的に朝は下り中心、夕方の上り・下りのみの運行で、高知市内から主要駅への通勤・通学を主眼にした構成。朝の上りが利用者は一番多いんだろうけど、各駅満遍なく利用者がいるからこうなってるのだと思う。

後免町駅。とさでん交通の路面電車との接続駅。一駅隣にJR土讃線との接続駅の後免駅がある。「ごめん」とは税金を免除された場所という御免から。現高知第2の都市南国市の中心街、旧後免町の中心部にあたる。
高知県はアンパンマンの作者として有名なやなせたかしの出身地。なので土佐くろしお鉄道は全面的にやなせたかしデザインのキャラクターが登場。特にごめん・なはり線は全駅にキャラクターがいる。
後免町駅から少し離れたところに路面電車が乗り入れる。元々安芸市方面へは土佐電安芸線が、ここから繋がっていたけど、1974年に廃線。そのルートが一部ごめん・なはり線として2002年に復活したようなイメージ。廃線跡もごめん・なはり線用地のほかサイクリングロードなどに転換。
2両編成の快速奈半利行き。
のいち駅。旧野市町中心部、現香南市の中心部。
芸西村では海岸線を高架で行くので景色が良い。
松林の中を高架が抜けるのも独特の景観。
和食と書いてわじき駅。和食村中心部、現芸西村。
球場前駅。阪神タイガースのキャンプ地だったけども、今は秋キャンプだけに使われてるらしい。
市営の球場らしく、キャンプのほかはイースタンリーグの試合も行われているらしい。
2021年新規開業のあき総合病院前駅。ごめん・なはり線としては開業後初の新駅。
安芸駅。ごめん・なはり線の中心駅。駅にはぢばさん市場がある。地元野菜や名産品、お弁当とかを売っているので列車のお供を調達するのもあり。
安芸駅には車両基地、土佐くろしお鉄道のごめん・なはり線本部がある。
安芸川
伊尾木川
海岸線の堤防と水田。
安田駅横のトンネル。直線とトンネルで構成され、新しい路線なので踏切も少ない。
田野駅。
田野町は四国で一番面積が狭い自治体、人口2300人ほど。維新藩士の清岡氏の出身地とのこと。
奈半利駅。こちらも宿毛駅同様に高架駅。
奈半利駅のキャラクターはなはりこちゃん
安芸駅に戻ってきて観光して、帰りはオープンデッキ車両のしんたろう号に乗車。名前の由来は地元出身の中岡慎太郎から。
オープンデッキということでスピードは控えめだけど絶景が望める。なお観光客は私だけでした。
トンネルも容赦なく突っ込むので注意のアナウンスがかかる。
クジラを模したオープンデッキ車両。オープンデッキになっているのは海側だけ。
後免駅。右手に分岐していくのがごめん・なはり線、左の靴の方に行くのがJR土讃線。土讃線もこの辺りは岡山高松方面の特急のほか普通列車も1時間に2~3本ある高知市の通勤・通学需要がある。
次の写真石碑を見たい人も駅構内なので入場券を買ってください。
やなせたかし直筆の石碑。
これがごめん・なはり線各駅のキャラクターたち。
高知ご当地乳飲料のリープルを体験。
伊尾木洞という大昔この辺りが海の中だったころの海蝕洞窟が隆起してできた洞窟と峡谷。片道400m程度の沢の散策路がある。
高知県は今でも日本一の森林県で、明治期には工業化が遅れていたため、林業振興を進めていた。この鉄橋は伊尾木川に沿って木材を搬出する森林鉄道の跡。1915年に海岸から一部区間が開業したらしい。季節的に草が生い茂ってて虫がすごいのでこれ以上散策できませんでした。
安芸は岩崎弥太郎の生家もある。世界の三菱財閥の創始者ではあるけれども、21世紀となっては大企業や商業とは縁遠いド田舎。
安芸はしらすが有名。生しらすを高知では「どろめ」と呼んで名物にも。これで850円と値段がバグってる。江ノ島なら倍とる。
これもやなせたかし。
安芸駅では無料のレンタサイクルがありますが、安芸駅から岩崎弥太郎生家でも3kmくらいあるのに、私は伊尾木洞、森林鉄道、岩崎弥太郎生家、しらすのお店とこのママチャリで20km以上移動しました。おすすめしません。

ちなみに正式な路線名としての阿佐線とは徳島県(阿波)と高知県(土佐)を結ぶ鉄道構想のことで、鉄道では繋がっていないものの奈半利駅からバスを駆使すれば徳島方面は抜けられます。その徳島側がDMVで話題の阿佐海岸鉄道です。

経営とか今後

2023年3月期の決算を見ると鉄道事業の収入約7億円に対して、費用が約14億円、補助金で赤字を埋めてなんとかというのはコロナ禍前後でも変わっていない状況。全線の1日の平均利用者数は約4300人とかなり厳しい利用状況。そもそも高知県全体の人口が70万人を切っていて、人口半分以上が高知市と周辺に集中していて、土佐くろしお鉄道の拠点都市が四万十市3万人、宿毛市1.9万人、安芸市1.6万人と尋常ではない過疎状態。高知県の端っこの路線が潤うわけもない。

後の問題はこの本数と輸送力と釣り合わない超高規格な高架線路が老朽化したときの保守がどうなるのか。逆に考えると、自然災害にとても強いので不通とかがそうそう起きないので、悪いことを言うと廃線にするきっかけもないままずるずる残って朽ち果てていくのかというとゾクゾクしますね。

これだけ線形がいいことを活かして、いっそ珍しい種別名にして超爆走する奴とか運行してはどうでしょうか。北越急行の超快速(無くなってしまったけど)みたいなイメージで、鉄道好きに少しでも注目されるかと。停車駅も後免町、のいち、安芸、安芸以降各駅停車とかで、朝上り、夕下りとかで利用実態に合えば現行ダイヤにも組み込めるのではと思います。できればオープンデッキ車両で時速100kmを体験できるとかだと振り切れてて楽しそうだけどちょっと安全性が課題かな。

こんな海沿いの松林を突き抜けるローカル線で100km/h対応。
立派な高架

おまけ。なぜか青山vsはるやまが繰り広げられてる車窓・・・。

具同駅付近
のいち駅付近


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