![くりちょこ編集委員会のコピー](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/18328200/rectangle_large_type_2_8ac33bd2dee8d7bef557a504785faa77.png?width=1200)
聞き上手にな(ったように見え)るスキル
投げるが先か、受けるが先か
コミュニケーションはキャッチボールだといわれます。キャッチボールでもそうですが、「投げる」技術があっても、「受ける」ができなければ、ラリーは成り立ちません。
「聞く」は、相手のボールを受ける技術です。投げたボールを受け止めてくれると思える、つまり信頼できる存在になっていなければ、相手はボールを投げようとしない。この状態で、こちらからボールを投げても、正しく受け取ってもらえません。
投げやすいように「受ける」構えをしていれば、相手が気持ちよく投げることができる。「受ける」ことで信頼関係を構築できて初めて、こちらの「投げる」が有効になる。それがコミュニケーションです。
聞き上手な人がやっていること
上手な聞き手がいることで、話し手の頭の中では言葉にならない正体不明だったものが、言葉にして表現できるようになる。自分の思いを把握できるようになる。上質な聞き手の存在には、こんな効果があるわけです。
日常の会話では、そこまではいかなくても、聞き上手さんがやっていることを真似すると、「あの人なんだか話しやすーい」な、人になったように見えます。
1.話を促す
具体的には、相づちとか、うなずきです。「あなたの話に興味を持っていますよ」のサインです。これらがないと、話すほうは「怒っているのか?」「なんか間違ったこと言ってるのか?」と、不安になって、とても話を続けていられません。
相づちがたくさんあればいいわけでもありませんね。「はいはいはいはい」なんて、会話を打ち切りたい(しかも感情を害したい)ときに絶大な効果を発します。
そして、単調な「はい」「はい」「はい」も、「本当に聞いているのか?」と思われます。適度にリズムや強弱をつけて。「適度にって言われてもよくわからないや」という人は、相手の話す声色やスピード、表情に合わせるのが無難です。
2.ノンバーバルな表現
まずはアイコンタクト。職場での関係性、患者さんや同僚が相手なら、目をじーっと見つめるよりは、顔全体を見て、要所で目を合わせるくらいがおすすめ。関係性が薄い人から、じーっと見られるのは「圧がすごい」です。びびります。(逆に、批判的態度を伝えたいとき、目力で圧を与える技が使えます。)
目だけでなく、体を相手に向けます。顔を向けても、体を向けるのを忘れると、手はキーボードに置いたまま……なことが起こりがちです。ちゃんと聞かれている気分になれません。座り姿勢のときでも、つま先を相手に向けると上半身も自然についてきます。
デフォルトの表情は笑顔ですが、話の内容に合わせます。話の内容に出てくる感情表現に沿った表情で。ボディランゲージも有効です。
3.話し手が使ったキーの言葉を使って返す
相手の言葉をそのまま反復したり、話された内容を要約したり、言い換えたりする方法です。
うなずき・相づちだけよりも、話し手は「私の話をきちんと聞いてくれている」感を持つことができます。
また、正しく聞けているかの確認にもなります。要約や言い換えの方向が間違っていなければ「そうです」、ばっちりなら「そうなんですぅ!」と返ってきます。(だめなら「うーん、というよりも……」とかで返ってくる。)
反復・要約・言い換えは、話の中の重要ワードがターゲットです。どうでもいいワードまで反復するとイラッとされます。聞いている振りではなく、本当にしっかり聞けていないと、この方法は使えません。
医療機関でのコミュニケーションの価値
聞くことで、相手との信頼関係を構築する。それって、医療機関にとっては、目的ではなく手段だと思うのです。つまり、信頼関係構築によって、かなえられるであろう目的が、その先にまだあるという論。
その目的の一つと考えられるのが、治療効果の向上です。医師とのコミュニケーションがよい患者のほうが、自己管理がよいという大規模調査があります。
勇気づける・協働的な医師のコミュニケーションが、患者のセルフケアを高めていたという結果です。
「やる気にさせる」プラスのコミュニケーション以前に、居心地が悪いと足が遠のく心理も当然あるでしょう。飲食店など、他のサービス業と同じですよね。とくに保険医療だと値段では差がつかないし。
自覚症状に乏しい慢性疾患の治療は、もともと継続しづらいもの。それまで通っていた医院との関係消滅が、消極的な治療中断に直結します。
上の大規模調査の対象は医師のコミュニケーションですが、医院でコニュニケーションを担うのは、医師だけではありません。実際に通院患者にいちばん多く接する機会があるのは、受付のスタッフ。受付でのコミュニケーションは、単なるマナーを越えて、患者さんの転帰に影響しうる要素でもあるのです。
意図された行動がスキルである
相づち、うなずきなど、聞き上手な人なら、意識している・していないに関わらず使っているものです。医療機関で働く人なら、多くは、意識せずともコミュニケーションスキルが身についているでしょう。コミュニケーションに難がある人はそもそも採用されませんしね。
ですが、「何となくできる」は、「勘がいい」「運がいい」のようなもので、再現性を確認できません。経験を重ねたベテランの技術は、他者が模倣しづらい、超貴重なものではあるけれども、それは組織の視点で見ると、属人的で、伝承に年月を要する、活用範囲が限られる技術でもありますから。
「何となく」と「自分の確固たるスキル」との違いは、意図的にできるか否かです。
本能的に相づちをしちゃう、でも悪いわけではないんです。ですが、この人の話を真摯に聞きたいと思っている→その姿勢は相手に伝わらなければ意味がない→相づちや頷きとして伝える。そう意図しての行動であると、その行動によって果たしたいことが、うまくいく可能性がより高まります。