オリジナルのファシリテーションのつくりかた
NPO法人Collable(コラブル)のくりのです。
Collableでは代表の山田とゲストが対談形式で「インクルーシブデザイン」について語る会報誌TUNE(チューン)を発行しています。(会報誌はマンスリーサポーターのみなさまにお配りしています。詳しくはこちら)
【 インクルーシブデザイン 】障害のある人や高齢者、ちいさなこどもなど、これまでデザインのメインターゲットにされてこなかった人々を、ワークショップ形式で積極的にデザインプロセスに巻き込む手法です。
▲TUNE第一号
第一号ではインクルーシブデザインの研究者である、京都大学総合博物館准教授の塩瀬隆之(しおせ・たかゆき)さんでした。
「腫れ物を触るように話すのではなく、間違えても言い直せる関係性を育む」
「誰かを傷つけたり邪魔したりするのはインクルーシブではなく、揚げ足をとっている」
「見えない人と活動することで、考え方がアップデートされる」
などなど、障害を持つ人とのコミュニケーションの話を事例を交えてお聞きしました。
Profile / 塩瀬隆之 (しおせ・たかゆき)京都大学工学部精密工学科卒業、同大学院修了。博士(工学)。京都大学総合博物館准教授を経て2012年 6月退職。同7月より経済産業省産業技術環境局産業技術政策課技術戦略担当課長補佐。2014年7月京都大学総合博物館准教授に復職。共著書に、「科学技術Xの謎」「インクルーシブデザイン」など。日本科学未来館 “おや?“っこひろば 総合監修者。NHK Eテレ「カガクノミカタ」番組制作委員。
第二号では演劇家の柏木陽さんをお呼びし、ファシリテーションの話をしました。
▲TUNE第二号
「こどもたちが困っている時間をキープする」
「プログラムが進行するような態度は押し付けない」
「ワークショップの時間を、全てパフォーマンスだと思って見てる」
柏木さんはこれまでも私たちと様々な活動を一緒に行ってくださいました。小学校への出張ワークショップも今年で3年目となります。
その中で繰り広げられる不思議なファシリテーション。個人個人と会話をしながらも、全体がまとまっていくような空間。
それは上記のような考え方から生まれているのだな、と思いました。(上記の内容のインタビューは二号の会報誌でお届けしました!)
インタビューは山田が行い、私は写真を撮ったり、文章を書き起こしたりしているのですが、興味深いお話でついつい私も聞き入ってしまいました。
なぜなら私も学生時代からワークショップをしたり、ファシリテーションをしたりしていたから。他のイベントやワークショップでもお手伝いをしたりもしているから。
だからこそ、インタビューの受け答えに「なるほど!」とは思いつつも、
「でも、実際ファシリテーションってどうやって磨いていけばいいの?」とか「柏木さんにできても、私にはできない」とか思ってしまいました。
だって、キャラとか経験とか違うから。同じやり方はできないと思うから。
だからその場で聞いちゃいました!
柏木さん、どうやって自分なりのファシリテーションをつくればいいの!?
Profile / 柏木 陽(かしわぎ・あきら)1993年以降、劇作家・演出家の如月小春とともに活動し、アジア女性演劇会議事務局、兵庫県立こどもの館の野外移動劇ワークショップなど新たな演劇の可能性を探る現場に関わる。 2003年、特定非営利活動法人演劇百貨店を設立。ワークショップの進行役として、全国各地の劇場・児童館・美術館・学校で、子どもたちと独自の演劇空間を作り出している。 大月短期大学、和光大学、青山学院女子短期大学で非常勤講師を務める。
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ー 自分とうまくできる人の違い
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柏木:3クラス分の授業を見てもらえばわかると思うけど、僕の授業って流れがほぼ一緒だったと思います。相手の反応まで含めてほとんど一緒。(僕の進行は)ほとんどはめ技みたいなものなんですよ。
はめ技というのは拳法とか柔道とか、将棋とかもそうなんだけど、あるところまでいくと、相手が自動的にこっちに行くので技をかけられる、みたいなことを言うのね。こう投げかけるとこう返す、みたいなのがあるのよ。AとBどっちがいいって聞いいたら大体の場合Aを選ぶみたいな。でも「(自分で)選んだ」って思わせるのが重要なのよ。俺たちはこっちを選んだって。
くりの:私がもし柏木さんのファシリテーションを完全にパクって、そのうえで120%の力を出しても、あの雰囲気の6~7割しか出せないって思ってるんですよね。残りの3~4割は絶対出せない。はめ技を完パクリすればいいかってそれは多分違ってて、それが「ファシリテーターの意図」みたいなのが入る入らないっていうのはあると思うんですけど。
柏木:例えば完全に真似して、まるまるトレースしてやったとするじゃないですか。それでうまくはまらないっていう実感があるじゃないですか。じゃあ、何が違う?
くりの:個人の背景。
柏木:それから?
くりの:外見。
柏木:それから?
くりの:オーラ!
柏木:だんだんとスピリチュアルな世界に入ってきたね笑
くりの:あと喋り方のスピードとか。こどもたちとの関係性とか、私の場合は違うし。
柏木:なんで違うの?
くりの:私がこどものことをしようと思ったのと、柏木さんがこどものことをしようと思ったときの入り方が違うからなのかなって思って。背景が違うから、そこでできてる哲学みたいなのがそれぞれ違って、ちょっとしたことがはまらない。
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柏木:なるほどね。多分、僕が演劇から入っているから僕が思う回答と違うのね。僕が最初にワークショップやろうとした時はイギリス人のワークショップを全部トレースしたの。
褒め言葉まで含めて。イギリスの人褒め言葉にラブリーを連発するのね。だから「お〜!ラブリ〜!」って言ってたの。
でも、うまくいかない。あんなに見事にはならないって言うのはわかるわけよ。で、じゃあ何が違うかって言ったら国籍が違うでしょ、背の高さが違うでしょ、目の色が違うでしょって。僕が並べたのはそこ(外見)なのね。で、そこは俳優にとって当たり前の仕事なのね。
例えば何かの役を前に高倉健さんがやっていたのを出川哲朗さんでやりますってなったら、笑えるものを目指しますって言われてるに等しいじゃないですか。そしたら、自分の身とそぐわないものを選んで、パーツを変えていけばいいだけなんだよね。
くりの:そもそもトレースしても、己のことを知らないとできないってことですか?
柏木:己の体が違うってことに大概の人は着眼点がない。
例えば僕の背丈で僕の見た目だから「まあ、デブだからね」っていう一言が効くんだよ。
例えば注目させたいとして僕ぐらいデカくて僕くらいいかつい人が「ふふ〜ン」って笑ってるとみんななんだろうって見るわけ。
くりちゃんだったら笑ったって普通のこととして流されるかもしれないでしょ。そしたら何したらいい?なんだろうって思わせてこっち向かせればいい。そしたら猛烈に頭を掻きむしったら見てくれるかもね。
くりの:そっか〜!
柏木:効果のための前提条件をどう作るかを考えていけるといいと思うんだよね。そのために自分の身体的特徴をどう使っていけばいいのか。
くりの:守破離。それは完パクリしても無理だわ。だって違うもん。
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ー オリジナリティーをわけのわからないところから入れている
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柏木:そうそう。みんななんとなく違うことはわかっているから完全にトレースすることをやらないのよ。どうせ違うし、と思って。で、自分で考えた何となくの工夫を入れるからわけわからなくなっちゃうのよ。
で、うまくいかなくてこのゲームは出来ないとかこのエクササイズは特殊だからとか簡単に結論づけるんだけど、そうじゃなくて、まずうまくやれる方法をやっている人がいて、それを目の前で見れたなら、まずその方法をやればいいのよ。
そのゲームをやってみて知ってる面白さと比べたら6~7割の面白さでも場としてはOKでしょ、進行してる人は自分が知ってるのとは違うんだけどなあと思っても、その場にいる人は十分面白いことはあるんだからさ。まず6~7割やるんですよ。
やってみてうまくいかないことをリストアップするわけですよ。そのうまくいかないところは自分の外見と合わないところでしょ。自分の外見と合わないところをどういうやり方でやれば狙った効果が出るのか入れ替えていけばいいわけじゃない。そうしたら私のものになるよね。オリジナルの作り方をみんな間違えてるんじゃないかなと思うのよ。
▲多様性×演劇ワークショップ人材育成の様子
こういうのって神格化しても面白くないから。自分が面白いなって思うことをやる人のことをすごく上に見てもしょうがないから、あの人はこういうことでうまくいってるんだなってちゃんと分析した方がいいと思う。
いいと思う事は真似したらいい。じゃあまずは全トレースしようと。やってみましたと。うまくいかないとするでしょ、ここまでやってうまくいかないって。そしたらここまでの間のどこかに自分とそぐわないパーツがあるからでしょ。そのパーツを抜いて入れ替えればいいわけでしょ。
参加者が大人だとうまくいかない、子どもだとうまくいかない、大学生だとうまくいかない、みたいなことをちょっとずつ変えていけばいいんだよね。でもある程度経験の中でこれはうまくいかないだろうってことがあらかじめ見えているなら、そこは変えていけばよくて、でも変えた結果、狙った効果が得られなかったんだとしたら、そこは変えちゃいけないところだったってことになるわけだから。じゃあそこは元に戻すとしてって、組み立てていけばいいんだよね。で、それが一つのプログラムやゲームでもいいから、やり方がある程度見当がつくようになると、他のものでも検討がつくようになるよ。あの人はああやってるけど、自分は無理だなみたいに。
くりの:自分なりのコツみたいな。自分に合う
柏木:そうそう。自分に合うかどうか。
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以上が私と柏木さんのやりとりでした。
ワークショップもファシリテーションも様々な形があります。
「これが正しいやり方だ!」なんてものがないからこそ、自分なりのファシリテーションについて悩む人もいるのではないでしょうか。
だったら、まず自分がいいな!と思う人のファシリテーションを徹底的にコピーする。そして、そこから少しずつ自分に馴染むやり方を模索していく。
手抜きしてやろうとするのではなく、泥臭く一歩ずつやっていくのが大切なのだなと感じました。
今回、柏木さんにお聞きしたファシリテーションの作り方はそのヒントになるものがたくさんありました。ぜひ、みなさん活用してみてくださいね!
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3月21日、著書『意外と知らない 赤ちゃんのきもち』を昨年出された、臼井隆志さんとのトークショーを行います!
noteでも話題のワークショップデザイナーの臼井さんとNPO法人Collableの山田のトークショーを行います。テーマは「赤ちゃんとのコミュニケーションから学ぶ、他者理解のあり方」です。
赤ちゃんとの関わりは非言語的であり、思ったとおりの関わりが生まれません。自分と異なる関わり方をする場合、多くの場合は衝突が起こりがちです。しかし、赤ちゃんを相手にすると、わかりあえないと諦めるわけにはいきません。
だからこそ、多様性が大切と言われる社会において、赤ちゃんとの関わりはダイバーシティを理解するヒントがたくさんあると、臼井さんは明言しています。
今回は、赤ちゃんとの関わりの魅力と、多様性ある社会の営みがどう関係あるのかを、臼井さんと一緒に考えていきます。
お申し込みはこちら!
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