【#読書の記憶から9】前代未聞のレシピ本×肩の荷を下ろして
『料理が苦痛だ』本多理恵子
NDC:596
1冊は、タイトルが前代未聞。
巷には『簡単おいしい…』とか『料理研究科・人気ブロガーの…』とか、その魅力を積極的にアピールしようとする本がたくさん存在するというのに。
タイトルが、堂々としていて、とても良い。
この本を書いて、このタイトルをつけてくれた本多さんありがとうございます。
きっと、広く世間一般には、『料理上手』が素敵とされる。
でも、計算や、裁縫や、車の運転にだって得手不得手があるように、料理だって『なかなかうまくできない』『嫌いな意識が強すぎる』人もいるはず。
でもそれを大きな声で言えないのは、毎日のことであり、命と生活に直結することであり、自分・子ども・家族のために(嫌でも)しなければならないからなのでは。
したくなければ、“しない時期”として料理をお休みし、できるようになるための鋭気を養う時期とする。
しない時期用のレシピを準備して、やる気が復帰したときには、ちょっと手の込んだメニューでハレの気分に。
そんな提案と励ましをくれる、とても心強い1冊です。
料理のセンスに関係なく、毎日の料理で悩む多くのひとに、ささやかな自信をくれる本。
多数のレシピでぐいぐい応援してくれるより、料理に向かう気持ちそのものに寄り添ってくれるような、そんな著者の姿勢に感謝です。
『カレンの台所』滝沢カレン
NDC:596
さらにこちらは料理本でありながら、レシピ本の形をとらない前代未聞の本。
載っているのは完成写真と、カレンさんによる料理手順の解説だけ。
『物語のようなレシピ』?いや、正式には『レシピのような物語』?
分量は表記されていないし、食材はいち登場人物として紹介される。
読んでいるうちに、『あれ、私今何の本を読んでいるんだっけ?』と、混乱した状態に陥ります。笑
そしてカレンさんの独特の言葉選びと表現に、これまでのレシピ本にはない感覚を覚えます。
テレビ番組では、彼女の独特の話し方でみんなの笑いを誘う事が多いですが、むしろ、その語彙力と表現力は唯一無二の存在感なのでは。
(「自分の言葉を持っている」って、魅力的なことだなぁと、改めて憧れかつ微笑ましく思えます。)
「お醤油を全員に気づかれるくらいの量」
「あとはごま油をご褒美あげるくらいにします。」
…それでもおおよその分量や時間はなんとなく伝わってくるから面白い。
こんなふうに、たまには料理に対する意識も変えて、息抜きもしながら、余裕を持って日々のごはんに臨めたらいいなぁ…
と、今日も希望混じりのため息をひとつ。
【#つながる読書】
次は……
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お茶で一服
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