宇和島への列車旅 ①
JR松山駅で伊予大洲までの切符を買った。のんびりと本を読みながら普通列車で大洲に向かい、暑い夏の日差しがそそぐ街を歩き、大洲城などにも行って、鮎を食べて帰るつもりだった。
自動ではない改札を通ると、目の前に9月に開業予定の新駅舎が見えた。夏休みで、誰もあくせくしておらず、ビジネスマンはほとんど見当たらなかった。1番線に電車が到着して人がそぞろ降りてきた。そこに4つか5つ年上の会社の先輩が一人で降りてきて、話を聞くと青春18切符で東京の実家、長野の祖父の家によって帰ってきたところだという。自分は乗り換えて市坪まで行けばそれで切符は用済みであるから、僕の切符と交換してくれると提案を受けた。切符は今日のみ有効であった。本当にいいのですか?と聞くと、早く帰ってシャワーを浴びたい、もう使わないといって本当に切符を交換してくれた。先輩の顔を見たが、髭が伸び放題になっており、髪の毛もくしゃくしゃであったので、先輩の気分を想像すると一刻も早くシャワーを浴びたいだろうと思った。
9:52発宇和島行き(伊予灘線まわり)の普通列車に一緒に乗り込み、どのような旅であったか先輩に聞いた。先輩は次の市坪で降りて行った。丁寧に礼を言ってわかれたが、ずっと先輩の名前が思い出せないので、会社の原付同好会のLINEグループ見てようやく名前を思い出したのだった。
名前を思い出してすっきりしたころ、ちょうど重信川を超える橋を渡った。車窓からは東温アルプスの山々の奥に青空と夏らしい真っ白な高い雲が見えた。最高の気分だった。