ミュージカル「CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~」の感想
※はじめに
これからご紹介するミュージカル「CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~」は一部出演者がW(ダブル)キャストになっています。感想を述べるにあたっては全キャストの演技をみたうえでなければとも考えましたが、今回は1公演を観た感想とすることにいたします。ミュージカル鑑賞初心者の感想として、広い心で受け止めて頂きますようお願いもうしあげます。また一部、作品の内容にふれています。ご承知ください。
作品への期待
半世紀以上生きてきてこれまで、ミュージカルを観たのは2回だけ。そんなわたしがこの作品を観ようと決めたのは、近年夢中に追いかけている劇作家、藤沢文翁さんの作品だから。今まで音楽朗読劇を作ってきた藤沢さん。かれのミュージカルってどんなだろう?
「CROSS ROAD」は以前朗読劇としてシアタークリエで上演されたそうだけど、わたしはそれを観たことがないし、ストーリーも知らない。でもずっと気になっていた作品。たとえなじみのないミュージカルであっても、藤沢さんの作品を観たい!知りたい!とおもった。
でもミュージカル観賞初心者のわたし。有名なミュージカル俳優の皆さんが出演する舞台とはいえ、やはり少しでも知っている方がいたほうが安心かなと。藤沢文翁さんの音楽朗読劇にも数多く出演している山寺宏一さんの公演回をチョイス。2022年6月23日、東京・シアタークリエに向かった。
ついに幕が上がる!わたしにとって人生で3度目のミュージカルの始まりだ!!
作品の感想
いままでわたしが観たミュージカルは全編英語。外国の俳優が演じていた。セリフや歌詞は会場に表示される字幕を見て内容を理解していた。だからまず驚いたのは、セリフが、そして歌がよく理解出来ること。言葉がストレートに心を揺さぶってくる。とくに山寺さんの第一声は、その声量の強さも加わって強烈に心に響いた。
山寺さんは主人公の執事。有名な音楽家である主人公を父親のように優しく見守り支える姿が印象的。その思いがあふれる歌唱シーンに涙……!
十字路で主人公が出会う悪魔を演じるのは中川晃教さん。音楽の悪魔をときに怪しく、ときにコミカルに演じていた。その妖艶な姿に引き込まれた。歌声がきれい。とくに高音が素敵!
ジプシーの娘で主人公の弟子を演じるのは早川聖来さん。音楽が大好きな芯の強い女の子。凛とした演技。表情が豊か!!なんともかわいらしい!!さらに美しいダンスシーンにすっかり心奪われてしまった!
主人公の演奏活動を支えた女性はナポレオンの妹!演じたのは青野紗穂さん。心に秘めた主人公への思いを静かに、ときに熱く演じる。とくに力強いまなざしに惹かれてしまった。なんて魅力的な方なんだろう!!
主人公の母は香寿たつきさんが演じた。誰よりも主人公を愛し、そして最後まで信じ続けた母。その深い深い愛を紡いだ歌声が響くたび、わたしは目を潤ませた。母子の絆の強さに心打たれた!!
畠中洋さんは前半は主人公の才能に疑念をいだく音楽の師を、後半では主人公の才能を敬愛する作曲家を演じた。終盤まで畠中さんが2役なのに気がつかなかった。対象的な2人を見事に演じわけていた。本当に驚いた!!
そして主人公パガニーニを演じたのは、相葉裕樹さん。演奏家としてより高見を目指したい!!その強い思いから、十字路の悪魔と契約を結んでしまう。命を削り音楽を奏で続けるパガニーニ。相葉さんは人間離れした演奏法をダンスで表現!その情熱的な舞いは、いまでも脳裏に焼き付いて離れない……!!
まとめ
作品を貫いていたものは、主人公に向けられた「愛」。
それぞれの愛がパガニーニを苦しめたり、励ましたり。さまざまな愛がわたしの心にも突き刺さった!
とくにパガニーニが母の思いに答えた最後の演奏のシーンで大号泣!ラストシーンまで涙が止まらなかった。
この作品ではシアタークリエというコンパクトな舞台で、主要7名のキャスト、7名のアンサンブルが演じていた。物語の世界は現在から過去へ自在に移動する。地理的にも国をまたいだり、教会や森の中、コンサート会場など、いろいろな場所に移っていく。
しかし最後まで固定された舞台セットで完結していたことに驚いた。アンサンブルもシーンごとに街の住人、観客、修道士、貴族などさまざまな役に入れ替わっていて、素晴らしいと思った。
わたしにとって3度目のミュージカルは、いままでミュージカルを観たなかで一番心地よかった。セリフが音楽にのっていつの間にか歌になっていく流れがとても自然で気持ちいい!ずっと聞いていたいと思った。
もしかしたらわたしはミュージカルの素晴らしさに、やっと気がついたのかもしれない。
もし機会に恵まれたら、またミュージカルを観に行きたい。それが大好きな藤沢文翁さんの作品ならもっともっと楽しめるはず。ミュージカル「CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~」の再演、または藤沢さんの新作に期待して感想を終わりにする。
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