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暮瀬堂日記〜ふたたび鰹

 羽田を九時に出て、柏で仕事を終えたのは午後三時であった。
 常の如く私の我儘でスーパーに赴き休憩を取る。涼しかった朝の空はどこに行ったのか、雨上がりの柏は猛暑の前触れのように湯気が立ち始めていた。
 
 さて、スーパーで足を止めさせるのは今日も鰹であった。禁酒の際は悩んだものだが、いまは悩まず籠に入れていた。

 東京に居を転じる前は、生前の父が藁焼きにしてくれたものだった。前の年の稲藁を小屋から出し、燃えたぎるように炙ってくれたものである。

  積み藁を一束へらす鰹かな

 確か、昨夏詠んだ句である。
 鰹を喰らいつつ、暫し父を懐かしんでいた。

(旧暦五月三日 夏至 乃夏枯るゝ候)

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