暮瀬堂日記〜紅柿
故郷は山形県上山市である。立冬頃になると、特産の「紅柿」の吊るされる様が全国的に報道される。
母からの電話の余談に、少しずつ紅柿が干され始めた、というのを聞いた。
紅柿は上山市が原産で、干柿は特産品として高値がつく。渋みが強いが、その分干されると甘味が増すのだという。その製法は、硫黄で燻蒸したりタワシで傷をつけたりと手間が掛かるのだ、と母が教えてくれたことがあった。ただ干していればいいのだろう、と思っていた私は、驚いたものである。
郷里が生んだ歌人斎藤茂吉は次の一首をのこしている。
稚くてありし日のごと吊り柿に
陽はあはあはと差しゐたるかも
これから、蔵王連峰から吹いてくる蔵王颪に鍛えられ、熟成していくことだろう。
紅柿の光の中に吊るさるゝ
暖簾のように列なる紅柿の姿が脳裡をよぎった。
(新暦十一月五日 旧暦九月ニ十日 霜降の節気 楓蔦黃【もみじつたきばむ】候)
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