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暮瀬堂日記〜重陽(菊の節句)

 陰暦九月九日は、正月七日・三月三日・五月五日・七月七日と同じく、五節供のひとつ重陽である。「九」は陽数の中で最も大きく、「陽数が重なる」からだと言う。また、菊の盛りの頃なので、菊の節句とも呼ばれる。

 古く宮廷では宴が催され、菊の酒が振る舞われたりしたが、民間では農事の収穫を祝う節目であった。

  けふの菊中稲の飯のうまみかな 才麿
 (※中稲…なかて。早稲と晩稲の間)

 才麿は稲を刈上げた宴の様を詠んでいる。

  朝露や菊の節句は町中も 太祇
  盃に漆の臭やけふの菊  成美

 などの古句も見られる。

 奇遇ではあるが、母が手ずから栽培した食用菊「もってのほか」を送ってくれた。食用菊は山形が生産量国内一で、でスーパーでも売っている。


 散らした花を、酢を入れた熱湯で湯掻き、水洗いをして熱をとり、めんつゆ(私は生醤油は塩辛くて苦手)をかけて頂く。

  もつて菊母より届く節句かな

 秋に咲く花は情趣がある。これから心淋しくなる時節に、わざわざ花を開かせる理由があるのだろうか。春や夏の花は、色とりどりの花弁が開くが、そこに入っては姿が映えぬから、菊は晩秋を選んだか。その菊を喰らうのだから、情趣も何もあったものではないのだが。


(新暦十月ニ十五日 旧暦九月九日 霜降の節気 霜始降【しもはじめてふる】候)

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