海鞘の美味さがわかる頃
スーパーの鮮魚コーナーに足を運んで今晩のつまみを選り好みしていると、鰹を手に取るすんでの所で、海鞘が目に入った。
中学生の頃、父が塩竃の市場で買ってきてくれたことがあったが、子供の私は独特の磯の香りに顔をしかめ、爾来、海鞘に箸を伸ばすことは久しくなかった。それが、先年足を運んだ新潟寺泊で、家人の頼んだ海鞘の塩辛を口にしたとき、旨味に気付かされたのだった。
途中まで臭し臭しと海鞘の恋 攝津幸彦
海鞘を美味いと思ったときから、あふれ出る海鞘水の痺れる甘さが、上一句の如く瞑目させるのであろう。
海鞘の香の年を重ぬるほど沁みる
キスのあとレモンと海鞘の味がした
などと戯れに句を為し、好物の酒の肴に舌鼓を打ち続けていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?