暮瀬堂日記〜林檎
林檎は晩秋の季語で有るが、山本健吉によれば、季語になった江戸期元禄頃の俳書には、夏六月としてているとのこと。
つやつやと林檎涼しき木間哉 尚白
などを紹介し、林檎について詳しいことが分かっていなかったのだろう、とも述べている。
歯にあてゝ雪の香ふかき林檎かな 水巴
上記渡辺水巴の如きは冬の句になるが、蜜柑と同じく貯蔵が効くゆえに為されたとのこと。
様々な季寄せをめくりつつぶつぶつ独り言ちていると、家人に声を掛けられた。ウサギのぴょん吉に林檎をあげるが、あなたはどうするか、とのことだった。
皮剥くや剥かずや妻の手に林檎
皮を剥いてほしい、とお願いし、ひと先ず季寄せを閉じることにした。
(新暦十月ニ十四日 旧暦九月八日 霜降の節気 霜始降【しもはじめてふる】候)