暮瀬堂日記〜冬の星
冬季になり、星はいよいよ冴えざえとし始める。しかし、東都の空は変わらずに燦燦として、冬星の姿を目に入れること容易ならず、興醒めがちである。
郷里では、夜中に立小便をしようと外に出て空を仰げば、降って来るのでは、と思うほど蠢いていた。
蔵王連峰や出羽三山に登れば、更に星々は近まり、手で触れるくらい近くに感じたものだった。
冬星の分水嶺で生まれけり
凍星の降つて積もりて月の山
かようのニ句を為した頃が、懐かしく思い出された。
※冬の星……冬星。寒星。凍星(いてぼし)。荒星。冬銀河。冬星座。星冴ゆる。冬の太白。
(二〇二〇年 十一月十日 火曜 陰暦九月ニ十五日 立冬の節気 山茶始開【つばきはじめてひらく】候)