Q:舞台キュウはどのような劇だったか
久しぶりの生の劇だッ!
2023年9月以来、劇場に足を運んで観劇してきました。
(前回:沼田天音 一人芝居企画「さがしもの」)
感想を書くたびに思うのが「体感の鮮度が良いうちに書いておかないと、本当に書けなくなってしまう!!」
これに尽きます。
哀しいかな、舞台を見に行ってたくさん元気をもらっても、時間が経つと忘れてしまうのが人間なのだなと、遠ざかってしまったいずれ書く感想リストを眺めて唸ったり…。
それにつけても、すごくありがたいなって思ったのは自分が今まで見てきた舞台は、自分が置き去りになることのない作品ばかりだったと称賛の拍手を送りたいものばかりです。
こないだ初めて置き去りになった作品に出会いました。気になった方は、DM下さい←見たら感想下さい。
Q:舞台キュウはどのような劇だったか
今回は劇団きのこ牛乳さんの『Q-キュウ-』を見に行きました。
この作品、ネタバレ無しでは語れない。
ですので注意喚起です。
※本記事には、『Q-キュウ-』のネタバレが大いに含まれます。閲覧の際はご注意ください。
Are You Ready?
Q:舞台キュウはどのような劇だったか
A:復讐劇である
これが自分の回答です。
誰の復讐劇なのか、それを語るにはまだまだ長い文が必要である。
【Story】
小説家の「クエル」は殺し屋に攫われ、抵抗する主人公を描いたベストセラー小説『X』の作者である。生活も順調で妻もおりまもなく子も生まれる。
今、彼は小説の主人公動揺7人の本物の殺し屋達に囲まれている。
目を覚ますと大きなサークルが敷かれておりクエルはその中心にいて、殺し屋達は外にいる。
殺し屋達はえらくこの小説を気に入っており是非、続編を作ってほしいと彼に依頼する。
締め切りは三日。
もし間に合わなければ小説の設定同様、サークルに仕込まれた200ボルトの電流が停止して殺し屋達が、輪の中へ入りクエルを殺すと。
逆らえるわけもなく彼は書き始める。
続編のタイトルは決まった『Q』
執筆途中、ある理由が発端で彼らは仲間割れが勃発する。
「この中に警官が1人紛れている」
彼らはお互いを疑い始め、やがて、想像もしない事態に発展していく。
そんな中クエルのもとにまもなく子供が生まれるという知らせが入る。
(公式チラシからまるっと引用)
パンフレットに、作・演出のイイジマショウタさんのコメントがございました。
「今の時代、”共感”が求められるかもしれませんが、残念ながら本作に共感できる人物なんて一人も出てきません。」とありました。
1つだけいち創作者として思ったのは、突然攫われて貴方の作品のファンだ、続きを作ってくれ、この電流流れるサークルの中で2日で作ってくれなんて言われたら
「勘弁してくれ…」
ってなる。
しかも周囲の殺し屋達が自分を見張っているともなると、攫われてしまった小説家にとっては悲劇でしかない。
ところが、そうはならないのがこの『Q』という作品である。
7人もの殺し屋達がいる、必然的に相関図なるものが出来上がっている。
その相関図自体は早い段階で明らかにされる。
それぞれが殺し屋になった経緯もそれぞれがどんな人間なのかも、早い段階で明らかにはなる。
Q=Question
まず早い段階で問いが出される。
「この中に警官が一人紛れ込んでる」
これにより、7人もの殺し屋達の中で疑心が生まれ、疑心暗鬼が生ずる。
無論、箱の中身がぶちまけられるのを楽しみにされている方もいらっしゃったとは思う。
ただ、観劇された方の中には「こいつじゃないか?」と予測をされた方もいるのではなかろうか。
自分は推理の類は一切得意ではないけれど、こればかりは後者になってしまった。
早い段階で、警察は1人出てきた。最初のダンスシーンでいきなり出てきて踊ってたし、何なら目玉だけ登場もしてた。
ところで推理の妙というのは、ただ犯人を当てるだけに非ず。
なぜ犯人と思うのか、その理由を探る、そしてホワイダニット、なぜ犯行に及んだか、ここまで回答できなければ推理の妙は味わえないという思考が自分の中にある。
これは完全に「うみねこのなく頃に」という作品の影響が色濃い。
Qは箱が開くテンポが絶妙である。
推理できる猶予もあるが、答え合わせの時間も早い。
追いつける、追いつける。予測の事態のうちである。
ただこの予測事態を複雑怪奇にしてしまうのが、先ほどの疑心暗鬼である。
疑心暗鬼が生じたことにより、発生した事象が、糸をがんじがらめにするように解くことのできない現象を引き起こす。
箱が開くまで、自分の中で出来た推測は
犯人は『ルーキー』である。この計画を提案し、殺し屋の仲間入りを果たしたから。ただの作品のファンというだけでは、このとち狂った計画を作り上げるのは理由が不明瞭すぎる。並々ならぬ理由があるのではないか。
攫われて閉じ込められた『クエル』は、実は小説家では無いのではないか。自身の作品に関して、あまりにも詳細が不透明であるから。
この2点である。
しかも箱が開くまで「~ではないか」という憶測の域であり、絶対の確証はなかったので。
箱の中身がすべてぶちまけられた瞬間「無理だよ!!!予測できないよこんなの!!!!」と内心泣きながらもめちゃくちゃ楽しませてもらった。
登場人物の皿を割らないように皿回しをする
登場人物は多いほど、皿回しの難易度が上がる、と何かの作品で目にした。実際収集がつかなくて、登場人物がいきなり登場しなくなったり、皿が割れる(退場を余儀なくされる)という作品は決して少なくないと思う。
ましてや殺し屋7人に加えて攫われた小説家、付けまわしていた警察官を含めて総勢9名である。
90分という限られた時間の中で、自分の中で全ての人物が不完全燃焼で終わることなく良くも悪くも魅力的な印象があったのは、皿回しが絶妙だっただけでなく、皿の割れた瞬間も見事だったからだ。
この皿が割れた瞬間を彩ったのは、銃撃戦である。
あまりにもあっけなく、命という花が散る。1輪や2輪だけではない。
一斉に散るのである。
そこにさらにウィルスというものが、何かの示しのように付与される。
Q:舞台キュウはどのような劇だったか
序盤で話したように、舞台キュウは自分にとっては見事な復讐劇であった。
誰のための復讐劇であるか。
千古不易『復讐劇』とは誰が作り上げるのか。
残された者たちである。
この残された者たちによって、復讐は果たされるのだが。
Q:果たして、この復讐劇に終わりはあるのか
A:終わらないのではないか、と思わせてくれるものが確実にこの作品にはることを踏まえて。
A:自分にとって舞台『Q』とは復讐劇であった
という全体を踏まえた回答を以て、一旦締めとさせていただきます。
それはそれとして、性癖をガンガンつついてくるじゃん?
いや、もう登場人物が魅力的すぎてさ…、全部書いたら正直、全登場人物への密度の濃ゆいお気持ちラブレター(長文)になりそうで、一旦理性という盾を置くしかないんだよ、俺。
さすがに自重できなくなりそうで、書くかどうか迷ってます。
でも出演者さん誰か一人でも「おなしゃす!」って言われたら、多分書く。
さすがに別記事にはすると思いますが(震え声)