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小説 オーズ Parallel Ankh 4

復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい

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医者という職業は常に命と隣り合わせなモンだ。特に海外を回って働いていた俺はそれを何度も実感してきた

俺はそれを違う意味で、身を持って体験した。頭に入った弾丸を1億という膨大な金を闇医者に渡して、取り除いて貰ったんだ

1億稼ぐのも全然楽じゃねぇのよ。バースとして戦っている以上、手術で日本を離れる時には戦力が1人だけになっちまう

それにその1人が、過去のトラウマで妙に乾いちまって、賭ける命の重さも忘れちまった何とも危なっかしい奴でな

激しさを増す戦いの中で俺は奴、火野を1人で戦わせるわけにはいかなかったんだ

だからこそ俺は後藤ちゃんにバースを継いで貰った。あの時の俺を死なせないって後藤ちゃんのセリフ、今思い出しても痺れるねぇ

Drとの最後の戦いの後は「自分達が居なくても残る医療支援」を目指して再び海外を回った

それから約10年が経ったある日、急遽鴻上会長に呼び出され、日本に帰国。戦うDr〜伊達明〜は再びバースとして戦うことになったって訳だ

理由は800年前の王が蘇ったかららしい。何でかは…知らん

800年前の王との戦いには後藤ちゃん達、かつての仲間も参戦した。勿論火野もだ

だが火野は王との戦いに敗れ、命を落とした

命ってモンは一度失えば二度と元には戻らない。だからこそアンコが火野に憑いてゴーダを倒した後、ただ見てることしか出来なかった

その理由は簡単。もう、手遅れだったんだ

どれだけのことをしても、火野がアンコを拒む以上救いようがない。それ程までに火野の命の灯は限界を迎えていた

アンコには酷く責められた。当然だ。俺は医者なのに、火野を救えなかったんだからな

後藤ちゃんも酷く自分を責めていた。あそこまで正義感の強い男だ。火野を救えなかった事に対する後藤ちゃんの後悔は計り知れん

そして俺達は財団に足を運び、会長に火野を預けた。が、どうやら辞めた方が良かったらしい


「ここに入るのも10年振りだな…」

『冗談じゃねぇ。真のオーズもグリードも願い下げだ!』

あの時会長に言った言葉がはっきりと頭を過ぎる

「伊達さん、行きましょう」

後藤ちゃんと俺は同時にその部屋の扉を開いた

「私はアンクくん達と来たまえと言ったはずだが、随分と早かったじゃないか。後藤くん、伊達くん」

「会長が地下27階だとか、久々に聞く単語を口にしなかったら、そのつもりだったんだけどな」

「あの日もここで火野に大量のセルメダルを渡してましたよね。今度は何をするつもりですか?」

後藤ちゃんの質問に会長が眉を下げ告げる

「私はね、この新たな時代に新たなオーズとし生まれ変わるんだよ。だが、まだその時じゃない。アンクくん達を待ってから皆に詳しく話そう」

新たなオーズ?会長が?俺は耳を疑った。後藤ちゃんは冷静に反論する

「会長、お言葉ですが、以前アンクが封印を解いた火野でないとオーズにはなれないと…」

「その事についても後で言及しよう」

怪しさが漂う鴻上会長の不気味な笑みに背筋が凍る。この人も出会った時から変わらねぇ。何を考えているのか全く想像出来ねぇんだからな


どれくらい待ったか。再び部屋の扉が開かれ里中ちゃんの後ろから3人が入ってきた。アンコ達だ

「後藤さん、伊達さん。お待たせしました」

アンコを見るや否や会長が大声で言葉を向ける

「アンクくん、完全復活おめでとう!800年前からの君の欲望!それを君は遂に達成した!素晴らしい!」

「鴻上、お前に祝われるのは御免だ」

会長の言葉は俺達全員に向けてのものに変わった

「さて、レジスタンスとして蘇った王とグリード達と戦ってくれた諸君。ご苦労だったね。火野くんとアンクくんのお陰で王は倒され世界は救われた」

「…。でも、映司くんは…」
「比奈ちゃん…」

比奈ちゃんと知世子さんを見た会長は更に言葉を紡ぐ

「その通り。王とグリード達を倒すまでにたくさんの犠牲があった。火野くんも惜しくも帰らぬ人となってしまった。非常に残念だよ…」

「会長、火野と医療班はどこへ?」

後藤ちゃんの質問に会長が口を開く

「この奥さ。今まさに王の棺に入るところだ」

「おい、鴻上。映司にこれ以上何かしたら許さんぞ」

「何も心配することは無いさ。棺に入れて火葬するだけだよ、アンクくん」

そんなわけねぇ。そう感じた俺は焦ったい会長に痺れを切らして尋ねた

「で、会長。さっき言ってた新たなオーズになるとかって、どういう事だよ」

アンコ含め後から入ってきた全員の顔色が変わったのが分かった

「伊達くん、君のそういう所は昔から変わってないね。そうとも、私が新たなオーズとなるのだよ」

「おい、鴻上。お前…何を企んでる?」

アンコが会長を睨み付ける。だが会長は相変わらず怯まない

「そのままだよ。火野くんが惜しくも命を落としたことで、現在この世界にオーズは存在しなくなった。だがオーズは世界に必要だ。ならば新たなオーズに私がなるのは必然だろう」

「ふざけるな!そもそもお前はオーズになれない。封印を解いたのは映司なんだからな」

会長は笑っている。アンタのその笑い方はいつも怖くて仕方ねぇ

「アンクくん。その封印を解いた火野くんが死んだのだよ。そしてその火野くんは王の棺に封印される。言っている意味が分かるかね?」

この場にいる人の中で唯一その意味を理解したアンコは衝撃的な仮説を会長に投げ掛ける

「ほう…ってことはつまり、映司が死ぬことも全部…最初からお前の想定内だったってことか、鴻上」

それが本当ならアンタの神経はイカれてるぜ。が、そう思ったのも束の間、アンコの問い掛けに会長は首を横に振った

「まさか、火野くんの死は想定外。非常に残念なのは本当だよ。結果的にそうなってしまっただけさ。何せ元々は火野くんではなく、ご先祖様から力を借りる予定だったからね」

会長、アンタって人は…

「何故、古代オーズとグリードが復活したのか、知りたいだろう。それはね」

「私が復活させたのだよ、彼らをね」

会長の眼に渦巻く恐ろしいほどまでに巨大な欲望に俺達は黙り込む他無かった


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