小説 オーズ Anything Goes! 13
復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい
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集合時間の約1時間前の朝9時半、俺は知世子さんさえ来ていない静かなクスクシエを後にした
決して後藤さん達に迷惑を掛けたいだとか、そんな事を思っていたわけではない。アンクの事をずっと考えていたからか、一睡もできずに朝を迎えてしまったため、軽く散歩をしに外に出ただけだった
俺はどんどんと知らない街の方へ足を進めた。ずっと海外を回っていたこともあり、未知の場所へ足を運ぶ事は好きだった
いつもは自分の気の向くままに歩いている。だが今日は何処か違った。気の所為かもしれないけれど、何かに呼ばれているような、そんな感覚がした
そして数時間後、とある公園に辿り着いたところで俺は足を止めた。公園の中に入るが人は見当たらない、と思ったのだが、唯一ベンチで寝ている人を見つけた
気持ちよさそうにお昼寝をしている。俺はその人の元へと近付き、顔を覗き込み驚いた。そこで寝ていたのがお前───アンク───だったからだ
俺はすぐにポケットの中にあるアンクのコアメダルを確認した。やっぱり割れたままだ。でも目の前には確かにアンクがいる
となるとやはり信吾さんが言っていたように、別世界から来たアンクなのだろうか。そんな事を頭で考えながらも、俺は無意識のうちにアンクに声をかけていた
「アンク…?アンク…!ねぇ、アンク!…おい、アンク!起きろって!」
俺が寝ていると、誰かが声を掛けてきた。だがそれが誰なのかは目を覚まさずともすぐに分かった。そして俺は察した。今からあの夢が始まる、と
目を開けると、目の前には思った通り、映司が居た。映司は再会を嬉しそうに笑っている
「おはよう。やっと、逢えたな…今日、この日が…俺とお前が居る明日…だったんだな、アンク」
再会の言葉もあの夢と全く同じだ。そうなれば俺はこの後何としてでも映司を守らなければならない。そんな事を考えていると、再会を祝う言葉など到底出てはこなかった
「何だよ、そんな暗い顔してさ。最後に会ってからもう4年以上。久々に会えたんだから、少しは喜べよ」
喜んでなんか居られない。俺は周りを見渡した。静かな公園には俺と映司しか居ない。他の奴の気配は何も感じられない
「せっかくだからさ、アンク。比奈ちゃんのお店に行こうよ!比奈ちゃんもアンクにまた逢える日を、ずっとずっと楽しみにしてたんだ。比奈ちゃん、きっと喜ぶだろうなぁ」
俺はアンクと一緒に比奈ちゃんのお店に行くために歩き出した。でも比奈ちゃんは別世界のアンクと会って何を思うのだろう
「そういえば伊達さんが日本に帰ってきてさ、昨日一緒にご飯を久しぶりに食べたんだけど、相変わらずおでんが好きだったよ。こんな暑い日にはやっぱりアイス、だろ?アンク」
アンクの顔を見て尋ねるも、アンクから返事はない。アイスに興味がないのはアンクらしくない。もしかして別世界のアンクは、アイス好きじゃないのか?少し話題を変えてみよう
「今、後藤さんと信吾さん含めて、警視庁の中の何人かで特別チーム組んでるらしくてさ…何でも俺達が戦ってた敵がまた復活してるらしいんだ。理由はわからないけど、もしまた戦うことになったら力、貸してくれるか?」
今度もやっぱり無視だ。俺の話に聴く耳も持たず、アンクは自棄に周りを気にしていた。もしかしたら元の世界とは、街の様子が大きく異なるのかもしれない
「───なぁ、アンク…?聞いてる?」
俺がもう一度アンクの眼を見て尋ねた時、アンクの背後の少し離れた所から誰かがこっちを見ていたことに気が付いた
そして彼は異形へと姿を変えた。間違いない、あれは恐竜グリードだ。あれが誰なのか、俺の中に3つの可能性が生まれた
1つは財団Xの力によって複製された人造グリード、1つは例の件によって復活した真木博士、そして最後の1つはそれ以外の誰か
俺は周りに気を取られ過ぎていて、映司の話を全く聞いていなかった。だから俺はあの時の合図になるそのセリフも、聞き逃していた
「っ…アンク、危ない…!!!」
映司に視線を合わせようとした時、映司が咄嗟に俺を突き飛ばした。嘘だ…!注意深く周りを見張っていたはずだ。一体何処から攻撃が通った!?
俺の身体が地に叩きつけられた時、目の前にはあの夢と同じ、血塗れになった映司の姿があった
アンクを守るため、俺は恐竜グリードの攻撃を諸に自分の身体に喰らった。何で、こんな事をしたのだろう
俺にとってのアンクはあいつだけなのに。でも、このアンクがあいつの偽物だとしても、あの時倒した偽物とは違うんだ。姿、形が全く同じだからかな。身体が勝手に動いてしまった…
「ア、ンク…お前が、無事なら…俺は……」
意識がどんどんと朦朧としてくる。奴を、アンクを狙ったあいつを、倒さなければいけないのに…伊達さんや後藤さんに、頼らなければいけないのに…
お前とまた、明日に、再会しなければ、ならな………
俺は血塗れになった映司の肩を揺さぶり、再会して初めて声を発した
「…映司?」
勿論、映司から返答はない。あの夢と同じだ。俺はもう一度周りを見渡したが、誰も見当たらなかった
そんな…分かっていたのに、こうなると知っていたのに、救えなかった…元の世界でも、夢でも、そして現実でも、俺は3度映司を失ったんだ
俺は絶望し、地面に視線を移す。するとそこにはあの夢と同じ、悍ましい形をした薄く淀んだ紫色の脚が2つ佇んでいた
こいつだ。こいつが映司を…!顔を上げるとそこには恐竜グリードらしき怪物がいた。目の前が涙でぼやけてよく見えない
「お前は、お前は、誰なんだ…?」
もう、自分が声を発している事すら、俺には分からなくなっていた。こいつが誰かなど、どうだっていい。俺はこいつが憎い。映司を奪ったこいつが…!
『───心の声に従え───』
いや、違う。映司を奪ったのは、俺だ。俺が世界を移動したから、俺が時間を超えたから、俺が映司を救いたいと望んだから、俺がまた映司の命を奪った。奪われるはずもない命を
こいつだって、本当は今頃、喜怒哀楽や五感を感じていたはずなんだ。それなのに、なのに、俺が全部奪った。こいつから、感情を、感覚を、命を…!
『───お前の望みは何だ?───』
何なんだ。この感情は。この感覚は。心が煩い。胸が熱い。苦しい。嫌だ。取り除いてくれ。早く。今すぐ
「ヴァgA名はg?L…」
奴が何かを言っている。到底言葉だとは思えない言語を使っている。いや、違う。俺の中から言語理解能力が消失し掛けている
どんどんと意識も朦朧としてくる中で、俺は1つだけ察した。俺は今からただ暴れるだけの怪人グリードに成り下がるだろう、と
『───その欲望、解放しろ───』
奴が夢と同じように攻撃を仕掛けてくる。
皆、すまん…
『Are you Ready…?』
「変身!…アンクから、離れろ!!」
その数分前、幸太郎Side
俺は如月弦太郎の言う通り、左翔太郎という男が来るのをデンライナーの中で待ってると、どうやら到着したようだった
俺とテディ、湊ミハル、そして如月弦太郎がデンライナーを降りると、黒を基調とした服装の男にテディが近付いた
「昨日振りだな、左翔太郎。君のおかげでミツルくんと再会することができた。ありがとう」
「テディ、お前が行動した結果だ。俺は何もしてねぇさ。そこに居る彼が会いたかった生徒か?」
左翔太郎と呼ばれる男は湊ミハルを指差したが、湊ミハルは首を横に振った
「ミツルは今、デンライナーの中に居るッスよ。それより、先輩。昨日話してたアンクって人の話なんですが、少し聞いてもいいッスか?」
「ああ、アンクなら探していた青い龍の仮面ライダーに会えたぜ。万丈龍我、クローズ。弦太郎、お前の言ってた別世界のライダーだ。何でかはよくわかんなかったが、色々あって今はこの世界にいるらしい」
その言葉を聞いて、湊ミハルは嬉しそうに左翔太郎に尋ねた
「じゃあ、アンクはオーズを救える手掛かりを得たんですね!」
しかし今度は左翔太郎が首を横に振る
「いや、映司を救う手掛かりどころか、映司の居場所すらクローズも知らなかったみたいでな。今は万丈龍我の仲間の桐生戦兎っていう奴と一緒に居るよ」
「つまり結局、状況は何も変わってないってことだな…」
俺の呟きに左翔太郎が首を縦に振る。しかしその時だった。左翔太郎の携帯が鳴った
「おお、噂をすれば桐生戦兎じゃねえか…もしもし、俺だ、どうした。っ…!?今どこにいる!っ、分かった!すぐに行く!!」
「どうしたんスか、先輩。そんなに慌てて」
「多分、アンクの夢が正夢になった。場所を教える。今すぐその電車で出発してくれ!」
俺達全員と左翔太郎はデンライナーに乗り込み、とある公園の近くに向かった
同刻、フィリップSide
「おい、フィリップ。結局、奴の言う青い龍の仮面ライダーには会えたのか?」
「ああ、でも結局彼の1番会いたいオーズに会う手掛かりは見つからなかったみたいだよ。だから今度はオーズを探す事になるだろうねえ」
僕の言葉に照井竜は声を上げた
「目的を果たしたのならば、今すぐにでも元の世界に帰って貰わなければ困る!奴のせいで市民の安全が脅かされる可能性があるんだぞ!!」
「まあまあ、照井刑事、落ち着いて。それと、オーズの変身者を探す必要はない。きっと今頃、後藤刑事や泉刑事がオーズの変身者と一緒にアンクと接触している頃だろう」
泊進ノ介という男が照井竜を止めながらそう言った。万丈龍我も桐生戦兎もオーズの居場所だけは分からなかったから、彼がオーズに会えるとなると、いよいよ僕たちの依頼も完了になりそうだね
「ダブル、ちょっといいか。あいつから夢の話は聞いてる、よな?」
僕はウィザード、操真晴人に呼び止められた
「勿論、オーズが命を落とす夢の話は彼自身から聞いたよ。でも彼がオーズと合流できれば、オーズが死ぬ運命を辿ることも回避できるはず」
「いや、俺にはそうは思えない。俺もこの作戦に賛同してはいるものの、この流れだけは嫌な予感がするんだ」
葛葉紘汰と名乗る男のその言葉に賛同するように操真晴人も頷くと、大門凛子が操真晴人に尋ねた
「晴人くん。それってつまり、どういうこと?」
「もしその再会自体が、あいつの夢そのものだったら?あいつが絶望するような事にならなければいいんだけどな…」
操真晴人の言葉に部屋が静まり返る。そんな時だった。僕の携帯が鳴った。翔太郎だった
「翔太郎、どうしたんだい。…っ、分かった。僕達も今すぐに向かう。…ウィザード、予想は的中だ。オーズ達が危ない!」
僕と警視庁に居た皆は緊急車両に乗り込み、指定された公園の近くへと急いだ
更に同刻、後藤Side
知世子さんと里中を除く俺、信吾さん、伊達さんの3人で手分けして火野を探して数時間が経過したが、火野は見つからない
クスクシエに残った知世子さんからも、火野が帰ってきたと言う連絡は受けていない。里中も比奈ちゃんの元に行き話を聞いたものの、何も知らなかったらしい
数分後、信吾さんと伊達さんと合流し、当てもなく火野を探していると、遠くの方から轟音が響いた
「まさか、怪人が?伊達さん!」
「おっしゃ、後藤ちゃん。行くぞ!」
「「変身!!」」
「2人は先に行っててくれ!後から追いつく!」
『カッターウイング!』
信吾さんにそう言われた俺はカッターウイングを武装し、伊達さんを抱えて轟音が響いた方へと飛んで向かった
幸い、場所は近く僅か数分で到着したが、着陸しても視界が煙くてよく見えない。しかしどうやら何か二つの存在が対立している
もしかすると照井刑事が何かと戦っているのかもしれない。少しずつ視界に慣れ始めたその時だった
「火野!!!アンコ!!!!!」
俺の隣で伊達さんが叫んだ。どうやら火野とアンクは既に合流していたらしい。良かった、と思ったのも束の間、俺の視界に飛び込んできたのは血塗れになって倒れる火野の姿とグリードの姿をして座り込むアンクだった
2つの存在が戦っていることなど頭から消え、俺と伊達さんは2人のもとに駆け寄った
「火野、火野!おい、火野!生きてんだろうな!?死んでねぇよな!?…っ、宝生ちゃんか?俺だ!至急、救急車を回してくれ!重症人がいるんだ!!」
伊達さんは変身を解除し、自分の勤めている病院に連絡、救急車を回すよう要請すると、すぐに脈を取り、心臓マッサージを開始した
俺はその横にただ座り込むアンクに尋ねる
「おい、アンク!ここで何があった!お前が火野にこんな事をしたわけないよな?違うよな!?アンク、答えろ!!」
アンクから返事はない。爆煙が晴れ、向こうで照井刑事ではない、見たことのない仮面ライダーが戦っている姿が見えた
その相手は間違いない、恐竜グリードだった。俺は頭の中にとあるシナリオを浮かべた。奴がアンクと一緒にいる火野にここまでの致命傷を与え、アンクが戦意喪失した所、あのライダーが助太刀に来た
もしそうなのであれば、俺がやる事はただ一つ。あれが真木博士であろうが、何であろうが、絶対に倒すのみ!
「伊達さん!火野とアンクを頼みます!!」
俺は仮面ライダーの元へと駆け寄り、共闘を始めた
デンライナー、ミハルSide
オーズ、アンク、頼む。無事で居てくれ…俺はそう願うことしか出来ずに居ると、遠くの方から爆煙が上がったのが見えた
きっとあそこに二人が居る。そう感じ取った俺はアクアドライバーを装着し、デンライナーの中でアクアに変身した
「おい、何する気だ?」
野上幸太郎の言葉を聞かず俺はデンライナーから飛び降り、爆煙が上がった方へと向かう。頼む、間に合ってくれ…
どんどん視界が煙くなってくると、向こうから声が聞こえた。何かが向こうで戦っている。俺が更に足を早めると、その手前に人影が見えた
更に近付くと、見覚えのある顔をした人が心臓マッサージをしていたが、俺にはそれを受けている人の方が鮮明に誰だか分かった
「オーズ!ねぇ、オーズ!!」
「誰だか知らねぇが、今は邪魔すんな!1分1秒を争う!!俺は医者だ!絶対に死なせたりはしねぇ!」
俺はその人に叱られた。更に爆煙が晴れ、俺はすぐ近くに見た事もない赤い鳥の怪物の存在に気付いた。しかし何故だか俺にはそれが誰なのか、すぐに分かった
「アンク!アンクなんだろう?ねえ!目を覚まして、返事してよ!俺だよ!ミハルだよ!!」
その時だった。俺が鴻上さんから預かったグリードライバーが、意思を持つかのようにアンクの方に引き寄せられた
アンクの腰にそれが装着されると、アンクは俯いたまま立ち上がった。するとアンクの体内から赤いコアメダル3枚が排出され、ドライバーに自動で装填されると、アンクは呟いた
『解放(Release) …』
刹那、アンクの周りの物体がセルメダルとなり、アンクを覆った。そしてアンクは見たこともない姿へと変貌した
間違いなくこれからアンクの暴走が始まる。俺はそう確信したのだった
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