小説 オーズ Parallel Ankh 13
復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい
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実験の予定時刻になり、信吾や比奈の奴含む6人が俺の実験を見届けに来た
「俺も比奈も皆、アンクが向こうで映司くんと出逢えること、信じてるからな」
「今まで一番世話になったな。いい加減早起き出来るようになれ」
信吾には身体を借りただけじゃなく、住まいの提供、五感や命を知るきっかけをくれたなど、色々と恩がある。これからも元気でやれよ
「アンクちゃん、アイス食べたくなったらいつでもクスクシエに戻ってらっしゃいね」
「そう簡単に戻れるかは分からんがな。まぁ昨日のアイスはあ・り・が・と・う。美味かった」
知世子の奴も10年前は住まい(拠点)の提供をしてくれた。クスクシエの復興、頑張れよ
「おい、アンコ。あんま無茶すんじゃねぇぞ?あっちで火野の事頼んだぜ」
「っは、もう一回言うぞ。俺の名前はアンクだ」
伊達は相変わらずだ。いい加減名前くらい覚えやがれ
「アンク、世界の移動は空間だけじゃなく、時間も超える可能性がある、十分気をつけろよ」
「時間を超える?どういう事だ」
俺が後藤に尋ねると里中の奴が口を開いた
「後藤さんの行った世界では伊達さんが恐竜グリードだったそうです。時間的には10年前だったんだと思います」
「え、後藤ちゃ…え?俺の事、倒しちゃった感じ?」
伊達だけが後藤の行った別世界の事を詳しく聞いていなかったらしい。戸惑う伊達を無視して後藤が更に言葉を続ける
「アンク、悪いがこれも持って行ってくれないか?色々考えたが、もうこの世界にコアメダルは必要ない。それがこの世界の最後の3枚だ。一緒に頼む」
「これ以上、鴻上の悪用を避けるためか…まぁいい」
後藤からサソリ・カニ・エビのコアメダルを預かると、最後に比奈の奴に視線を向ける
「アンク、さっきはごめんね。一緒に行けない事、本当は分かってた。だからせめてこれ…」
俺は比奈の奴から服を貰った。ここ最近はゴーダから貰った服や信吾の服を使い回していたから丁度いい機会だ
「ありがたく貰っとく。信吾の事、頼んだぞ」
「アンクこそ、映司くんをお願いね」
比奈の奴の言葉に頷き、俺はバースドライバーXを腰に巻きつけた。そして自分の体内からエタニティメダルを取り出し、装填する
『タカ!クジャク!コンドル!』
俺は皆が見守る中で一言呟いた
「行って来る」
ダイヤルを回した途端、俺を七色の光が包んだ
「アンク!行ってらっしゃい!!」
比奈の奴の声が遠くに聞こえる。俺の意識はこの世界から消えて行った。俺が望む世界へ行けるかどうか、運命の時だ…!
『繋いだ手は絶対に離さない!』
『誰かが助けを求めて手を伸ばした時、僕らは必ずその手を繋いで見せるよ!』
『これからも手を伸ばせば届くはずだ。ライダーと戦隊の、垣根を超えた友情!』
俺の頭の中に様々な人間の声が響き渡る
『いつか、もう一度…!』
いや待て、この声は…映司だ!世界の狭間で声のする方へ手を伸ばした。気付くと俺は空中に出現した虚無から地面に放り出されていた
「痛ぇ…んだよ、全く」
バースドライバーXの中に装填されていたエタニティメダルが通常のコアメダルに戻っている。という事は世界の移動自体は成功してんのか?
周りを見渡すと普通の街並みが広がっている。これが800年前のオーズが暴れていた世界だとは考えにくい
「世界の移動は成功したらしいが、どんな世界かが分からねぇとな」
取り敢えず周りを歩き回る事にした俺は比奈の奴から貰った服に着替え、街中を歩き始めた
明らかに静かすぎる。空には満月が輝いてる事から夜である事には違いないが、それにしても人間が全く見当たらない
しばらく歩き公園に着くと新聞が落ちていた。これを読めば世界の大体の事がわかるだろう。しかし見出しを見る前に俺はとんでもない情報を目の当たりにした
「は?2051年12月9日だと?」
ついさっきまで2021年に居たのに30年も経過している。後藤の言ってた時間も超えるってのは、こういう事だったのか
時間の事で頭が一杯になっていた俺はベンチに腰掛けた。つまりこの世界では今映司は60歳前後だ、分かるはずもない…不意に背後に人間の気配がした
「誰だ!」
振り返るも人間は見当たらない。この一瞬で居なくなったのか?すると近くで人間の叫び声が聞こえた
「うわああぁぁぁ!戦わせろ!!もっと!もっと!!もっと戦いを…!」
叫び声のした方向へ向かうと、虚無の中へと青い何かが入って行くのが見えた。俺が通ってきた虚無とはまた別なようだった
「あれは、一体…」
「あれは40年前へ繋がるゲートだよ、アンクくん。まさか君が復活していたとはね。素晴らしい…!」
声のする方を振り向くと白い髭を生やしたジジイが立っていた。俺は声を聞いてすぐに誰だか見当がついた
「お前は、鴻上…?」
「その通りだよ…!まさか40年振りに会えるとは…非常に嬉しいよ」
鴻上の言葉に俺は奴を睨みつけながら言った
「俺は二度と会いたく無かったんだがなぁ。まぁ丁度いい、お前の知ってる事を全部教えろ」
「いいだろう、さっきあの中を通って行ったのはオーズと同じ、コアメダルで変身する仮面ライダーだ」
こっちの鴻上もバースドライバーXのようにコアメダルで変身する新たなシステムを作ったという事か?
「私が作ったサメ・クジラ・オオカミウオの人造コアメダルとポセイドンバックルで変身した青年が先程暴走してしまってね」
「また暴走か、全く…どっちの鴻上も余計な事をしてくれる。まぁいい。早い話、あん中に入れば2011年に飛べるってわけだな」
鴻上は不思議そうに首を傾げながらも、話を続けた
「そうとも、しかし気をつけたまえ。あれは少しずつ縮小している。戻って来るのにも時間制限があるだろう。その事は念頭に置いておきたまえ」
「もう一つ教えろ。俺を知ってるなら、映司も知ってるな?映司は今どこだ」
鴻上は俺の尋ね方に驚いた様子で俺の目を覗いた。そして奴は信じられない言葉を口にした
「アンクくん、君が何故復活したか、私には分からないが、火野くんなら30年前に亡くなったよ」
30年前に亡くなっただと?この世界の今から30年前は2021年。それじゃまるで元の世界と同じだ
「何でだ、理由を教えろ!」
「火野くんはある人を庇って亡くなったそうだ、誰かは知らないがね」
理由も同じだ。信吾の言ってた通り、この世界の映司も手を伸ばして死んだらしい。紛れもなくここは目的の世界だった。俺がこっちの映司の運命を変えてやる
「まぁいい、俺は今から2011年へ行く」
「アンクくん、時間を戻るという事は君のコアメダルに何か影響があってもおかしくない。十分注意したまえ。それと向こうに着いたら空港に向かうといい」
鴻上の言葉を聞き終えた俺は目の前に拡がる虚無へと飛び込んだ。そして鴻上の言葉は早速現実となった
元の世界で鴻上と戦った時に体内に入れた紫のメダルが自然に飛び出し、虚無のゲートに落ちていった
続いて始まりの3枚がコアメダルの色を失い黒く染まった。恐らくエネルギーが消失したのだろう
だがそれらのコアメダルは今は重要ではない。俺のコアメダルが無事ならそれでいい…そんな事を考えていると俺のコアメダルにも変化が起き始めた
始まりの3枚同様、元エタニティメダルも黒色に染まり、俺の意思が入ったコア以外の他の5枚もエネルギーのみ消失し、本来の力を失った
これではセルメダルも同然。仮に映司と会えたとしてもオーズへの変身には使えないだろう
しばらく完全体になれそうもない…そんな事を考えていると目の前に光が見えた。あそこを出れば2011年だ。俺は光に飛び込んだ
海上に投げ出された俺は僅かな力を使って信吾の姿のまま羽を拡げて飛行し、空港へと向かったのだった
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