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小説 オーズ Anything Goes! 10

復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい

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俺は火野映司、とある企業の研究調査員として世界中を周る旅人だ。今年でその歳月も10年と言う節目を迎える。そんな中、俺は日本に帰国することになった

とは言え、日本には度々帰国している。最近だと後藤さんの結婚式の日だ。ただ今回の帰国の理由は、ちょっと休憩をしたいからでも、何かの事件に駆けつける必要があるからでも、誰かが結婚するからでもない

2ヶ月前、お世話になっていた企業の会長、鴻上さんにこう言われた

「火野くん、君も何度か足を運んだだろうが、ヨーロッパにはまだまだ、鴻上ファウンデーションの資料室にも描かれていない情報が残っている。だから私は決めたよ、数年現地に赴き、仕事をすることをね」

鴻上さんが欲望を語る時、誰もそれを止めることは出来ない。俺は2021年7月いっぱいで契約満了となることになった。だから俺は日本に帰ってきた。かつての仲間達と久々に顔を合わせるためにも

「皆、相変わらず元気そうでよかったよ。そういえば比奈ちゃん、お店のこと聞いたよ。本っ当におめでとう!ずっと夢だったもんね」

「ありがとう、また今度お店に来てよ!映司くんにぴったりの洋服、用意しておくから」

比奈ちゃんは出会った当時、洋服を作る専門学校に通っていた。一度はお兄さんのため夢を諦めかけたが、今や自分の店を出すほどまでになっている

「おい火野、ちょっと太ったんじゃないか?健康診断でも受けてくか?うちの病院で」

「伊達さん、臨時で入ってるだけなのに、あたかも自分の病院みたいに言わないでください」

「おいおい言うなよ、里中ちゃん。相変わらず厳しいねえ」

伊達さんはかつて俺と一緒に戦っていた仲間だ。医者として俺のように世界を回っていたが、今はとある病院で臨時で働いているらしい

それを指摘する里中さんは鴻上さんの元秘書であり、後藤さんの元上司だ。今は退社し、自分の好きなことをやっているらしい

「じゃあ映司くん、皆でクスクシエに行くわよ!今日はパーティなんだから!!」

「そんな大袈裟な、知世子さん…」

「火野、すまない。俺と信吾さんはちょっと警視庁に用事があるから、先に行っていてくれ」

「俺も後藤くんもすぐに片付けて、そっちへ向かうよ」

知世子さんはクスクシエの店長で、俺にバイト先と寝床を提供してくれていた人だ。きっと今日は知世子さんにたくさん旅の話をすることになるだろう

後藤さんは伊達さんと同じく、かつて俺と一緒に戦っていた仲間だ。正義感が人一倍強く、今は警視庁で働いている。それは信吾さんも同じ。信吾さんは比奈ちゃんのお兄さんでエリート刑事だ

「じゃあ、また後でな」

そう言って、後藤さんと信吾さんは警視庁へと向かっていった

「お兄ちゃんと後藤さん、今警視庁の中でも名コンビなんだって。今は極秘のプロジェクトが動いてる真っ最中で、それが忙しいんだって言ってた」

「流石、信吾さんに後藤さんだね。あの2人に任せておけば、きっと大丈夫だよ」

「後藤ちゃん、家庭を持ってから昔より何倍も逞しくなったもんだ ───さて、運転は里中ちゃんがしてくれんのか?」

頷く里中さんは駐車場まで車を取りに行った

「あ、知世子さん。今日って、おでんある?」

「伊達さんも来るんだから、用意してあるに決まってるじゃない!もうね、今頃熱々も熱々よ!」

相変わらず伊達さんはおでんが好きなようだ。2人の話を横目にしながら、比奈ちゃんが尋ねる

「映司くん。アンクのこと、何か分かった…?」

アンク、かつて俺がオーズとして戦っていた時の相棒の名だ。アンクは最後の戦いの果てに、死んだ

「あれから10年経つのに、全然進展無しだよ。このメダルもやっぱり戻らないし」

俺は割れたタカコアメダルをポケットから取り出して言った。実は2017年に一度だけ元に戻ったのだが、その後すぐにこの状態に戻ってしまった。その時のことは、比奈ちゃんにも伝えていない

「そっか…でも、映司くん言ってたよね?いつかの明日にこのメダルが元に戻って、アンクにまた会えるって」

そうだ。アンクが死んだ後、俺と比奈ちゃんは恐らく未来から来たアンクに会って、時間を共にした。だからこそ俺はまたアンクに会える日のために旅を続けていた

「うん、いつかまた、絶対アンクに会えるよ」
「いつかの明日、楽しみだね」

そんなことを話しているうちに、里中さんが俺たちの隣に車を停めた。こうして俺たちはクスクシエへと向かった

その明日が、目前に近付いていることなど知らずに


アンクSide

ゴーストの知り合いのアカリという奴が言うには、とあるマーケットでクローズに変身する万丈龍我がビルドに変身する桐生戦兎の発明品を売っているらしい

昨日は夜も遅かったため、一旦大天空寺に泊まった。昼前に一応そのマーケットとやらに着いたものの、あまりに広過ぎる。俺は緑の男、黒い男と手分けして万丈龍我を探すことにした

顔も知らず名前しか知らない。そんな中でこの大量の人の中から発明品を売っている奴を探し出すのはあまりにも無謀だ

だが、映司に辿り着くにはもうその道しか残っていない。探し始めて数分経った頃だった。その時は突然訪れた

「ねぇ、龍我。暑いからアイス食べたい」
「俺も丁度腹減ってたんだ、行こうぜ!」

龍我!?俺は隣を歩く男女を引き止めた

「ちょっと待て!お前、万丈龍我か?」
「っ、そうだけど…アンタ、誰だ?」

こんなに早く見つけるなんて運がいい。発明品を売っているどころか、逆に客のように見えるが、確かにアカリという奴の言う通り、このマーケットに居た

「格闘技の関係者、じゃない…?」

「ああ!えっと、握手でいい?…って、なんか前にもこんな事あったよな、香澄」

「そんな事はどうでもいい。お前、青い龍…」

俺が青い龍の仮面ライダー、と言おうとした時、黒い男から持たされた電話が鳴った。なんて間の悪い奴なんだ、あいつは

俺が電話を取ると黒い男は衝撃の一言を放った

「アンク、こっちで万丈龍我を見つけた。早く来てくれ」

「何を言ってる!万丈龍我なら今俺の目の前に…っ、ん?」

居ない、どこだ!?俺は大馬鹿野郎だ。黒い男の電話を取っている間に見失ってしまった。映司に辿り着くために、必要だったのに…

「おい、アンク、聞いてるか?今目の前に万丈龍我が居るんだ。場所を教えるから、早く来てくれ」

仮に同姓同名だとしたら、とんだ奇跡だが…仕方ない、行ってみるか

俺は黒い男の示す場所へと向かった


「おーい、おいアンク、こっちだ!」
「やめたまえ、翔太郎。目立ち過ぎだ」

少し先に大きな手を振っている黒い男が見えた。そしてその隣へと視線を移すと、間違いなくさっき見かけた男が座っていた

俺はそいつを見るや否や、そいつの元へと走り、胸ぐら掴んで叫んだ

「さっきはよくも、話も聞かずに逃げてくれたな!」
「はぁ!?俺はずっとここに居たわ!なぁ?由衣」
「さぁ、どうだったかしらね?」

横の女を見るとさっき隣に歩いていた女とは別人だった。趣味の悪い男だと思いつつも、確かにさっきの男とは顔は同じでも服装がまるで違う

「はぁ!?居ただろ!!そもそもお前誰だよ!…ってか離せよ!!」

男に手を振り解かれると、緑の男がそいつに向かって俺を紹介しようとした。しかし俺はそれを止めて話を続けた

「俺はアンクだ。お前、仮面ライダークローズ、万丈龍我で合ってるか?青い、龍の、仮面ライダー」

俺の言葉に男は反応した

「俺の事知ってんのか!いやぁ、有名になったなぁ」
「お前に聞きたいことがあって態々ここまで来た」

遂に俺は自分の想いをそいつに打つけた

「お前、4年前に映司と接触してるな?」

俺の言葉に奴の顔つきが変わった。隣の女が万丈に尋ねる

「万丈、映司って、誰?友達?」
「いや、俺の命を救ってくれた人だ」

命を救った?あの時、そんなことがあったのか。そんな事を思っていると、万丈は更に顔つきを変えた

「お前、アンクってまさか、あの時、隣に居た奴なのか…?」

俺たちの中で点と点が線になった瞬間だった。間違いなく今目の前に居るこいつは、俺が見た青い龍の仮面ライダーだった

「あぁ、そうだ。実は今映司の居場所が分からなくてな、何か知ってるか?」

「あの後は一度も会ってねぇ、だから分からねぇ…」

万丈の言葉に黒い男が言葉を続けた

「もしかしたら今、映司は命が危険に脅かされてるかも知れねぇんだ。だから居場所を探してるんだが、その…桐生戦兎だっけ?そいつにも分からねぇのか?」

「翔太郎、少し待ってくれ。そもそも彼らは別の世界のライダーだと、如月弦太郎が言っていた。ずっと不思議だったんだが、そんな彼らがなぜここに居る?」

緑の男の言葉に万丈は顔を曇らせたが、俺たちを見て言った

「そういうことは全部、戦兎に聞けば分かる。今から行くか、戦兎んとこ ───由衣、戦兎に今から行くって連絡してくれ」

こうして俺達は仮面ライダービルド、桐生戦兎の元へと向かったのだった

この時の俺は映司との再開が目前に近付いていることなど、知る由も無かった


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