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小説 オーズ Parallel Ankh 3

復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい

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私の両親は早くに他界し、私はお兄ちゃんに育てられてきた

10年前、たった一人の家族であるお兄ちゃんが意識不明の重体になった。そんな時、映司くんとアンクに出逢った

映司くんは私にお兄ちゃんに縋っているだけでは駄目だと気付かせてくれた人だ

アンクはお兄ちゃんに取り憑いたグリードで、一緒に過ごしていく中でお兄ちゃんと同じくらい大切な存在だと思えるようになった

10年前の最後の戦いの前夜、私は映司くんとアンクと一緒にアイスを食べて、そして3人で手を繋いだ

ちゃんと欲張れるのは私だけ。そう知世子さんに言われたから、2人も、お兄ちゃんも、全員が無事でありますようにと、ただそれだけを願って

でも戦いの末、アンクは死んでしまった。そして映司くんはアンクのメダルを元に戻すために旅に出た

私はMUSIKAを卒業した後、念願の洋服を作る仕事に就くことができた

なのに、800年前の王とグリードが復活して全部駄目になってしまった

私はお兄ちゃんや知世子さんと一緒に伊達さんや後藤さんの居るレジスタンスで戦うことにした

そんな中で私と知世子さんがカザリと闘っている時の事だった。映司くんが戻ってきたのは

映司くんは私に言った

『見つけたんだ。アンクを元に戻す方法を』

映司くんのその言葉は早い段階で現実となった

アンクはグリード達との戦いでピンチになったお兄ちゃんの身体に再び取り憑き、私の前に姿を現した

私はアンクが戻ってきてくれて嬉しかった。これでまた映司くんと3人で手が繋げる。そう、思ったのに

映司くんは王との戦いで瀕死の状態になり、私とアンクの目の前で最期を迎えたのだ

私には到底受け入れられなかった。それはきっとアンクやお兄ちゃんを含む、あの場に居た全員がそうだった


夕陽を眺めていると、急に横でアンクが倒れた

「アンク!?どうしたの?」

正確に言うなら、アンクがお兄ちゃんから離れたようだった。倒れ込んだお兄ちゃんも立ち上がり、目の前に浮かぶ腕に向かって言葉を放つ

「なぁ、アンク。1人でどこか行く気なのか?」

「考えはお見通しって訳か。信吾、お前の身体はもう要らん。だからどうしようが俺の勝手だろ」

「どういうこと…?」

私がお兄ちゃんを支えながらアンクに問い掛ける

「俺の偽物が持っていた3枚のコアメダル。映司が砕いたはずが、何故かそいつも復活したお陰で、俺はめでたく完全体になれたってわけだ」

「これからどうするつもりなの?」

私がアンクに訊ねると、アンクは腕のみの状態から言葉通り完全体の姿を見せた

「さぁな。だが他のグリードみたいに人間を喰らうつもりはない、安心しろ」

「じゃあアンク、俺達と一緒に暮らさないか?」

お兄ちゃんが言ったその言葉に私は驚いた。だけど不思議と悪い気はしなかった

「そうだよ。私とお兄ちゃんとアンクの3人で暮らそうよ。アイスだって、1日1本食べていいからさ」

「信吾の身体を使わないって事は、俺は感情を味わえなくなるって事だ。アイス食ったところで冷たさも美味さも分からねぇ。そんな事しても虚しいだけだろ。まぁ虚しさも感じないがな」

私が何も言い返せないで居ると、お兄ちゃんがアンクに近寄る

「それは違うと思うけど」
「何だと?」

「さっき映司くんの目を閉じた時、アンクから複雑な感情が伝わってきた。だけどそれはアンクが俺に憑いてたからじゃない。アンクが映司くんから命を授かったからじゃないのか?」

黙り込むアンクにお兄ちゃんは言葉を続けた

「本当は今だって胸が苦しくて、どうすれば良いか分からないだけなんじゃないのか?そんな弱い自分から逃げたいって思ってるんじゃ…」

「黙れ!何もかも知ったような口しやがって!」

「知ってるよ。俺がアンクとどれだけ一緒に居たと思ってる」

お兄ちゃんは静かに、だけど本気の眼差しでアンクに告げた

「うるせぇんだよ…信吾、貴様ぁ!」

アンクがいつかと同じ様に、お兄ちゃんの首元を掴んだ。お兄ちゃんも抵抗していない。私が早く止めなきゃ、そう思った刹那

「アンクちゃん!」

戻ってきた知世子さんがそう叫び、アンクの元に駆け寄る。そしてそのまま完全態のアンクを背後から抱きしめた

「辛いわよね。私も、比奈ちゃんも、信吾さんもそうよ。でもアンクちゃんが一番辛いのよね。私達だって少しでもアンクちゃんの力になってあげたい。そう思ってるだけなの」

お兄ちゃんを離したアンクは空に向かって大声で嗚咽した。まるで本当に命と感情を持つ人間かの様に

「うわああぁぁぁぁ!映司いぃぃ!!どうして、なんで、頼んでもねぇのに、俺を復活させるだけさせて、自分は死ぬんだよ!お前はたくさんの人と手を繋ぐんじゃなかったのかよ、この馬鹿野郎が!」

そんな最中でも知世子さんはアンクを離さず、頭をゆっくりと撫でていた。私も堪らず駆け寄りアンクを前から抱きしめる。お兄ちゃんも同じだった

「アンク、大丈夫。この手、絶対に離さないから」

「アンクちゃん、気が済むまで叫びなさい。泣きなさい。命があるから、映司くんを想えるんだから」

「俺達全員、アンクの家族だ。勿論映司くんも。だからこれからは俺達と一緒に生きよう、な?」

グリード、人間。そんなの関係なしに泣き叫び続けるアンク。他の人はこの光景を見て笑ったり、気味悪く思うだろう

泣き叫ぶ赤い鳥の化け物を3人が抱きしめているのだから

でもそんなの関係ない。私はこれからアンクを絶対に支える。そう誓った


「アンク。もうしばらく俺の身体使ってもいいぞ。比奈、いいよな?」

皆が落ち着いた頃、お兄ちゃんは言った

「お兄ちゃんがそう言うなら。アンク、きっとお兄ちゃんと一緒の方が気も少しは楽になるよ」

私達の言葉を聞いてアンクを見つめながら黙って頷く知世子さん。それを見たアンクは一言だけ告げた

「わりぃな」

次第にお兄ちゃんの髪の毛の色が変わる。映司くんが生きてたら止めてるかもしれないけど、今は私もお兄ちゃんも許してるし、大丈夫

すると見覚えのある一台の車が私達の前で止まった。運転席に見えるのは里中さんだった

「後藤さんと伊達さんが、皆さんも財団に来て欲しいとのことです。乗って下さい」

そう言われて私達全員里中さんの車に乗り込んだ

「丁度いい。俺も鴻上に用がある」

私にはそう告げるアンクの眼差しに、覚悟が宿っているかの様に映った


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