小説 オーズ Parallel Ankh 15
復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい
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「やっぱり彼は…」
「映司、ぼーっとすんな」
映司が青い奴へと一直線に歩き始める
「おい、何する気だ!」
「君、メダルの暴走を止めたいんだろ?」
映司、奴には何を言っても無駄だ
「こんな戦い、本当はしたくない。そうでしょ?」
「また馬鹿が…」
お前はお人好しにも程がある。自分の事は助けようとしねぇのに。映司の芯の部分はやっぱり何も変わってねぇ
「何を言ってる?命乞いなら時間の無駄だぞ」
「君は暴走しているだけだ。止められるよ、メダルの力に飲み込まれるな。手を貸すから…!」
青い奴が攻撃を構えた。まずい…!このままじゃ…俺はまた、映司を…!
『アンク…良かった…お前と逢えて……』
『やっと届いたんだ…俺の手が……』
「つまらんな、変身しろぉ!!!」
咄嗟に映司を退かせ、直撃は防げたものの爆発で俺達は吹き飛ばされた…映司、こいつ命をまた軽く扱いやがって…駄目なんだよ、それじゃ…!
「馬鹿が!あいつは無理だ!!」
「出来る!前にお前や、比奈ちゃんが止めてくれたみたいに!」
確かに元の世界で俺や比奈の奴は映司の暴走を止めた事がある。こっちの映司も同じ経験をしたのだろう。だが今はその時の状況と余りに違い過ぎる
「俺達の時とは違う…あんなの名前も知らない奴だろ、放っとけ!」
「知ってるよ!───っ、仮面ライダーだろ!折角ライダー同士なら、俺はその手を掴みたい!」
そう叫んだ映司は青い奴が攻撃する中、奴目掛けて走って行った。まずい、さっきの爆発に巻き込まれたせいで…思う様に身体が動かねぇ……
「映司…!!」
映司は青い奴の攻撃を生身の身体で受け、吹き飛ばされた。ボロボロになった映司に青い奴が飛び掛かる
この距離なら当てられる…そう思って打った火炎弾攻撃はコアメダルの力が消失したせいか、簡単に青い奴に弾き飛ばされてしまった
次の瞬間、青い奴の武器が映司を貫いた……かの様に思えた。映司は心臓を貫かれたのではなく、腕を軽く引き裂かれただけで済んだ…何故だ?
「っ、お前は出てくるなあぁぁ!ぐわあぁぁぁ!」
そう叫び青い奴は変身を解除した。よく見ると髪の雰囲気がゴーダに似ている。罠の可能性を考えた俺は映司の様子を心配して近付く奴の胸ぐらを掴んだ
「おい、どういう事か話せ!早くしろ!!」
奴は何も話さない。どうやら一時的にメダルを抑え込んだらしいが、頑なに口を開かない奴に怒りがどんどん込み上げる。が、映司がそれを止めた
「アンク、辞めろ…!取り敢えず、比奈ちゃんを呼ぼう…話はその後だ…君、名前は?」
俺が仕方なく奴から離れると奴は一言、名乗った
「俺は、湊ミハル」
「───ごめんなさい!俺のせいで、本当に…」
ごめんなさいじゃ済まされねぇ事もある
「ミハルくん、だっけ?気にしない、気にしない。ライダー同士助け合いでしょ!」
お前もその敵味方分からねぇライダー相手に突っ込むのは辞めろ。このどうしようもない怒りを俺は舌打ちだけで吐き捨てた
「違う…俺は、本当はライダーなんかじゃない…」
「どういう、こと…?」
映司の質問に奴は自分の経験を語り始めた
「俺の時代にも、人を狙うモンスターは居て、そいつらと戦うために、俺にライダーのベルトが託された。水の力で変身するんだ」
なるほど、あの世界がどうにも静かだったのはそういう事か。人間はモンスターとやらに怯えて、外には出れないわけだ
「じゃあ、やっぱり未来のライダーなんじゃ?」
「出来なかった…俺、水苦手で…」
は?水が苦手な奴が水のライダーに選ばれたのか?こいつは飛んだ笑い話だ
「あぁ、そっか…それは、きついよね…」
俺は込み上げる面白さに笑いを堪えきれず、吹き出して笑ってやったが、タイミング悪く頭上から何か落ちてきやがった…痛ぇ……
「そんな時に、助けてくれた人が居たんだ」
奴は鴻上の事を俺達に話した。全くどっちの鴻上も見る目が無さ過ぎる。何でこんな意思の弱い奴に
「でも、敵は強くて…俺はボロボロで…もう終わりだって、諦めた時…」
ほぉ、あの時俺が聞いた叫び声はそういう事か。となると、暴走の根本は真木の持ってたコアじゃない。結局は元の世界と同じ、鴻上の作ったコアが原因か
「つまり未来のコアメダルに意思が生まれて、ミハルくんが乗っ取られたって事か」
つまりゴーダと全く同じってわけだ。唯一ゴーダと奴の違いは、乗っ取られている人間の命の有無だけだ
「俺が弱いから、俺なんかライダーにならなければ」
「そういう事だ」
俺の視界は映司の服で真っ白になった
夜中俺達はわざと寝たフリをして隙を作った。予想通りメダルの力に乗っ取られた奴が近付く
「メダルなら渡す気はない」
「やっぱりまた出てきたな…!」
たじろいだ奴を映司が両腕でがっちり抑えた
「お前が前に出て来ないと、メダルが抜き辛くてな」
「貴様ら、わざと隙を…!渡すかぁ!!」
「比奈ちゃん、お願い!」
映司の掛け声と共に比奈の奴はオーズドライバーを映司の腰に巻きつけた。すかさず俺も腕状態になる
昼は使えなかったが、今度はお前のコアだ、ガメル。俺はメダルをセットし、比奈の奴がスキャンを完了させた
『サイ!ゴリラ!ゾウ!…サゴーゾ!!』
「悪いな、これ以上ミハルくんの体は使わせないよ」
「そのまま大人しくしてろ…!」
サゴーゾコンボに変身した映司に奴を抑え続けて貰いながら再び奴の中に腕を突っ込む。まだこっちにないメダルは、これか!
俺がクジャク・シャチ・ウナギのメダルを抜き取ると奴が急に力を解放した
「面白い!これくらい手応えがなければな!」
映司が吹き飛ばされ変身が解除される。直後奴は体内のコアメダルを放出させ、ドライバーに力を与えた
こうなると青い奴は最早ゴーダと同じ、独立したグリードそのものだ
「俺もようやく単独の存在を確立できた。望み通り、これを使うのはやめてやる…ゴミは捨てないとな?」
青い奴は人間を押し飛ばし攻撃を仕掛けた。先程同様俺も火炎弾攻撃を飛ばしたが、爆煙が晴れた時には青い奴の姿は無かった
翌朝、映司の元に鴻上から電話が入った
「火野くん、未来のライダーが時空の穴へ向かったよ。別の時代で戦いを続けるらしい。恐ろしいまでの、戦いへの欲望だよ!」
別の時代だと?あの虚無は40年後だけじゃなく、他の時代にも行けるのか?だったらこの戦いが終わったら2021年に行くしかねぇな
「流石、未来の私が作っただけはある」
このクソが!お前の作ったコアメダルは別の世界では映司を死に追いやったんだぞ!俺の怒りは映司によって収められた
「しかしバースチームは負傷しているし…君はその怪我…戦っても勝てる可能性は……」
こいつ…またわざとらしい演技をしやがる
「行きます!止めなきゃ大変な事になりますから」
「そう言ってくれると思ったよ!Good Luck!」
やっぱり鴻上は消すべきかもしれない。鴻上がいる限り映司はずっと危険な目に遭う。あのモンスターとやらの話も、本当は鴻上が作り出したんじゃねぇのか?
「映司くん…」
「大丈夫、不安な事は一つだけ───明日のパンツがない…」
こいつはまた馬鹿な事を…そう思っていると比奈の奴がずっと抱えていた袋を映司に差し出す
「その…明日のパンツ!」
は?
「ありがとう、比奈ちゃん!絶対勝てるって気がしてきたよ!行こう、アンク!!」
何でパンツ一枚で勝てる気がするんだよ、こいつは。まぁいいか…俺と映司が青い奴の方に向かおうとすると、ずっと黙っていた奴に声を掛けられた
「どうして!何でそんなに強く居られるの?俺にはとても…」
弱音を吐いた奴の元へと映司が近付き、さっき比奈の奴から貰ったパンツを1枚渡した。こいつにとってパンツは何なんだ?本当
「はいこれ、俺のおじいちゃんの遺言で、男はいつ死ぬか分からないから、パンツはいつも一張羅履いとけって」
「俺にそんな覚悟があれば…」
覚悟だと?たかがパンツにか?笑わせんな
「そうじゃなくて、肝心なのは、明日のってとこ。これは今日ちゃんと生きて、明日へ行くための覚悟なんだ」
だったら何故お前は、その覚悟を持ちながら簡単に命を投げ捨てる様な行動が出来る。その覚悟を毎日持って、ちゃんと生きやがれ
「ミハルくんはその明日を守ってくれる仮面ライダーだろ?大丈夫、君が挫けた今日は、俺達が守るから」
仮面ライダーってのは、皆そんなモンなのか?自分の命を投げ出してまで、誰かの明日を守る。結局映司の運命は変えられないのか?
「俺達はいつでも君の昨日を支えている。1人じゃない」
そう奴に告げた映司と共に俺は頭を悩ませながらも、青い奴の方へ向かったのだった
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