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小説 オーズ Anything Goes! 17

復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい

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日本時間2021年8月5日 ヨーロッパ 戦兎Side

『というわけで、映司さんはまだ目が覚めて居ないんだけど、アンクさんがさっき目を覚ましたって、伊達さんが』

「分かった。引き続きアンク達のことを頼む。こっちはもう少し研究に時間が掛かりそうだ」

『待って、ビルド。その事なんだけど、アンクさんが目を覚まして早々に元の世界に帰るって、皆の前で言ったらしい。だから早くドライバーを返せって』

「自分勝手な奴だな、全く。なるべく早く帰るから、もう少し待ってくれと伝えてくれ。それじゃあな」

俺はエグゼイドからの電話を切ると、手を叩いて研究室の中にいる全員の注目を集めた

「今の話聞いていたかもしれないが、とりあえずアンクは無事に目を覚ましたらしい」

「素晴らしいっ!!流石はアンクくんだね!!」

声の大きい鴻上さんに対して、一人がほっと胸を撫で下ろす

「よかった…」

「本当に良かったな、駿。ずっと心配してたもんな。俺も彼が暴走している所を電王に止められた時は焦ったけど、命があって安心したぜ」

「悪かったなァ、全く。ったく、トサカの野郎、心配掛けやがって」

鎧武やモモタロスの言葉に俺も言葉を続ける

「だけど、アンクは元の世界に戻ろうとしているらしい。だから世界の融合は正直もう必要ないのかもしれない。怪人達の活性化のリスクもあるし、アンクが帰ると言うのなら、無理に融合する必要は無くなった」

「確かに。でも逆に考えれば、今の時空の乱れを完全に解消することもなくなるってことだ。アンクがこの世界に干渉した歴史は残るわけだからな」

「幸太郎、それはつまり、私達の世界の仮面ライダーは、これから際限なく湧き出る怪人達と戦い続けなければならないということか?」

テディの言葉に幸太郎は頷く。確かに世界を融合すれば、怪人の活性化も上限に達成すれば終わる事が予想できる。ただもしアンクが元の世界に帰るとなれば、頻度は減っても完全に断ち切れる確証はなくなる

「つまり俺達がアンクを元の世界に送り出すということは、アンクがこの世界に介入した責任を俺達の世界のライダーが負う必要があるということだ。鎧武、この事についてどう思う?」

「世界の融合をしていたら救えていたかもしれない人達の命が失われる可能性があるなら、俺は彼に無理を言ってでもこの世界に残って貰い、世界の融合をすべきだと思う。だが、実際融合出来るかの目処は立っているのか?」

俺は鎧武の質問に対し、バースドライバーXとスーパータトバのコアメダルを持って答えを述べた

「実際に時空の裂け目が出現しない事には始まらないが、アンクはこのドライバーを使ってこの世界にやってきたと言っていた。つまりこのドライバーを使う事で、時空の裂け目が現れると推測できる。その中で世界を融合出来るほどのエネルギーを、鴻上さんが持っていたこのコアメダルから放出する事ができれば…」

「2つの世界は完全に融合し、新たなる世界が誕生するというわけだね!!Happy birthday!!!本当にそんな事が可能ならば、是非ともその瞬間に立ち会ってみたいものだ!!!」

再び大きな声で叫ぶ鴻上さんの言葉に頷くと、一人の大学生が彼の父親に向かって尋ねた

「そうなるとエネルギーの放出源として使えそうなのはオーズのベルト、そしてこのドライバーだね。父さん、オーズのベルトの研究はどう?」

「僕は鴻上さんと駿くんと一緒に研究を続け、オーズのベルトのアップデートを図った。だけどそもそもオーズのベルトは、コアメダルの強大な力を制御する、つまりエネルギーを安定化させるためにある」

「その通り!!だからこそエネルギーの放出源に使えるのは事実上、未来の私が作ったこのグリードライバーのみ!!」

「アンクが暴走したことを考えると、このドライバーを放出源として使うのは僕的には不安だけどな…」

もう一人の大学生が不安を連ねるも、それを吹き飛ばすほどの声量で鴻上さんは返事を返した

「しかし!!そもそもスーパータトバの大元になっているタトバコンボはコンボでありながら、非常に安定しているという他に類を見ないコンボだ!!変身者が居ない状態であっても、非常に安定してエネルギーを放出できると私は考える!!!」

「まぁ、それはまた考えるとして、ナオキさん。オーズのベルトにはどんなアップデートを?」

俺の質問に対して、ナオキと呼ばれる科学者は頷き説明を始める

「そもそもスーパータトバはグリードを誕生させるために、800年前の錬金術師達が10枚の状態から抜いたコアメダルから作られている。だよね?鴻上さん」

「その通り!!しかしそれらのコアメダルと同等のコアメダルが残り2枚あった!力の象徴、ゴリラコア!繋がりの象徴、タココアだ!!」

「だから僕達はこの2枚のコアメダルの力をオーズドライバーの中に組み込んで、強化を図ったんだ。でもその変化はオーズが使ってみない事にはわからないんです。ドライバーを使えるのは封印を解いたオーズだけだから」

「なあ、駿、父さん。本当にそんな事して大丈夫なのかな?膨大な力を制御しきれなくて、今度はオーズが暴走したら、どうしよう…」

確かに彼の不安は的を得ている。暴走というのは非常に恐ろしい。ハザードトリガーを制御するのに時間が掛かった俺自身、その恐ろしさはよく知っている

「ミツルの言う通り。正直不安だし、実は俺もまだ何かが足りないんじゃないかって思うんだ。でもその何かが分からない」

「ということは、ここにある全てのドライバーに対して不安要素が一つずつあるというわけだな…やはりもう少し研究が必要になるな…」

「だが、火野映司くんが目を覚ましたら、流石に私達も日本に帰国しなければならない」

「テディの言う通りだ。オーズの意識が戻ったと連絡があり次第、俺達はデンライナーで日本に帰る。皆はそれでいいか?」

幸太郎の提案に全員が頷くと、その2日後、オーズが目を覚ましたとエグゼイドから連絡があるまで、俺達は研究を続けたのだった


同刻、警視庁 進ノ介Side

情報を集め始めてから3日が経ち、泉刑事達からアンクの無事を知らされた俺は情報集めのグループ全員を警視庁に集めた

「まずは俺からだ。前に皆に見せた写真を撮ってくれた俺の仲間の剛にまた手伝って貰ったんだが、前にアクマイザー達が居た場所には既にその姿はなかったらしい。それ以外の情報は残念ながら、今のところはない。では次に照井刑事」

「俺は敵が言っていた計画についての情報を知っているかもしれないと、以前連行したDのメモリを持っていた人物に事情聴取を行った。だが奴はそんな話は全く知らないと言っていた。左達はどうだ?」

「ああ、俺達も全然駄目だ。情報屋に聞いても特に情報は無かった。フィリップが地球の本棚を使ったとしても、キーワードが少なすぎて全然絞り込むことが出来ねぇ」

「だけど僕達はドーパントとは異なる存在に出逢ったよね。変身者も居ないただのガーディアンだったが。如月弦太朗、君の方はどうだい?」

「天高でも情報は掴めなかったッス。唯一JKがゾディアーツを見掛けたって言ってたが、あいつは俺が変身できないことを知っている。流星に声を掛けて倒して貰ったみたいッスね」

「俺の方でも情報は掴めなかったものの、前に凛子ちゃんが言っていたようにファントムを目撃してな。そいつを倒しただけだ」

「私も木崎さんと一緒に敵の情報を集めてみたんだけど、成果なしね…」

これだけの人数で3日掛けて敵の情報を集めても、集まった情報はこれだけ。敵は一体何を考えている?計画とは何だ?その計画に果たして本当に他の怪人達は関与していないのか?

なんだか心がモヤモヤして、全然晴れない。何か大切なものを見落としている気がする。とはいえ、俺達が情報集めを止めるわけにもいかない

アンクは元の世界に戻ろうとしているようだが、世界を融合するにしろ、アンクが元の世界に戻るにしろ、怪人達がこれからも出続けることは間違いない

「集まった情報はそこまで多くないが、これからも引き続き情報集めを頼む」

そこで一旦解散となり、それぞれが再び情報集めに戻ったが、俺は警視庁に残ることにした。どうしてもこの心のモヤモヤを取り除きたい

そんな時、霧子からメッセージが届いた

『今日の仕事、あとどのくらいで終わりそう?進ノ介さ、最近色々と無理してない?少し心配。とにかく、夜ご飯作って英志と二人で待ってるから、気をつけて帰って来てね』

最近は朝早くから仕事をするために家を出て、夜帰って英志の面倒を見て。そんな生活が長く続いているからか、霧子にも心配を掛けてしまったようだ

でももう少しそういう生活が続いてしまいそうだな…霧子は仕方ないと許してくれるかもしれないけど、英志にはどう思われるだろう…夜しか会えないから寂しがっているかもしれない。俺は英志の父親、失格かもしれないな…

「ん…?英志の、父親…?えいじの、父親…っ、そうか、映司の…火野映司の父親!」

俺は霧子に数時間後に帰ることを連絡すると、そのまま後藤刑事に電話を掛けた

『もしもし、泊刑事、どうかされました?』

「後藤刑事、聞きたいことがある。もし知っていたらでいいんだが、オーズの変身者の火野映司の家系について、特に彼の父親について何か知らないか?」

『火野の父親は政治家です。火野は若い時、内戦に巻き込まれたことがあるんです。13年ほど前、ある政治家の息子が命懸けである村を救おうとしたってニュースがあったのですが…』

「それが、オーズの変身者の火野映司?」

「はい。だけど実際は、火野は村で一番仲良くなった女の子を目の前で失ったんです。でも火野の父親が払った身代金で火野だけは助かりました。だけど火野の意思を無視して命懸けで村を救おうとしたって所だけを大きく取り上げて、人気取りに使ったんです」

彼の壮大な過去に驚きを隠せなかったものの、俺は後藤刑事に再び質問を投げかけた

「因みに、その彼の父親の名前は?」
『すみません、流石に知らないです…』
「いや、それだけでも十分な情報だ。ありがとう」

俺は後藤刑事の電話を切り、先程教わった当時のニュースを調べ始めた。しかし情報がうまく操作されているのか、該当の記事は見つかっても後藤刑事が話したような真実の部分はどこにも見当たらなかった

「ここまで徹底しているとなると、情報を集めるのは厳しいか…だけど、もし今回の件に火野映司の父親が関与しているとすれば、それは…」

俺の心のモヤモヤが晴れそうな予感がすると同時に、そうなった場合の結論を想像すると、恐ろしくて堪らなかった


2021年8月6日 聖都大学附属病院 タケルSide

4日前、俺は仮面ライダーダブル、左翔太郎さんに呼び出された。どうやらアンクさんの探していた青い龍の仮面ライダー、仮面ライダークローズは見つかったようだった

だけどアンクさん、そしてアンクさんが救いたいと望んでいた映司さん。その両方がどちらも重症で永夢先生の病院に運ばれたそうだ

幸い二人とも命はあったようだが、昨日を迎えるまで二人の目が覚めることはなかった。そして昨日、アンクさんが目を覚ました

俺は永夢先生に二人の心のケアをするようお願いされていたが、昨日はアンクさんがお仲間さんと話をする時間を作るためにも、敢えて病室には入らなかった

そして次の日の朝、俺はアンクさんの病室を訪れた

「おい、アンコ。とにかく今は動くんじゃねえぞ」

「伊達さんの言う通りだ。帰りたい気持ちは分かるけど、どっちにしても今はまだ帰れないんだから、ゆっくり身体を休めてくれ」

「伊達も信吾もうるせぇんだよ。お前らと居ると気が散る。とっとと失せろ」

中には昨日もその場所に居たであろう4人の男性がアンクさんと話していた。そのうち3人はデンライナーで顔を合わせた人達だった

「じゃあ湊ちゃん、あとは頼んだわ」

「勿論です。アンクの見張りは任せて下さい。あれ、君は確か…」

「はい、永夢先生に頼まれたので、俺もアンクさんのサポートをするために、今日はここにずっと居させて貰います」

そう言ってアンクさんの顔を見ると、睨んだ形相で舌打ちをされた

「そんじゃ、話してた通り心のケアは頼む。アンコの奴、強がってるが相当メンタルやられてるはずだからな。…じゃ、二人とも、後は頼んだわ」

「信吾さん、そういえば昨日泊刑事から電話があったんですが…」

そういって3人の男性が病室を後にし、病室の中は俺とアンクさん、そして俺に気付いた青い服の男性だけになった

「ああ、自己紹介が遅れたね。俺、湊ミハル。仮面ライダーアクアだ」

「俺は天空寺タケル、仮面ライダーゴーストだ」

お互い自己紹介が済み、少し距離が縮んだところでアンクさんがもう一つのベッドで寝ている映司さんを見ながら言葉を紡いだ

「丁度いい。お前に聞きそびれたことを此処で聞いてやる。お前は一度死んだと言っていたな。それがなぜ今生きている」

「俺は18歳の誕生日にガンマに襲われて、一度命を失った。それから…」

俺はアンクさんとミハルくんに当時のことを話した

「タケルにはそんな過去が…」

「自分の願いによって復活した、か…映司の最後の願いで俺は復活した。何でかと聞いたら映司は、自分の一番やりたいことをしただけだと言っていた」

アンクさんの顔が少しずつ曇っていくのが分かった。伊達先生が言っていたように、やはりアンクさんのメンタルは限界に近いのかもしれない

俺はアンクさんのベッドの縁に腰掛けた

「ねえ、アンクさん。悩みがあるなら何だって話してみてよ。それを聞くのが、今の俺の役目なんだから」

「っは、悩みだと?グリードの俺にそんなものあるわけがない。強いていえば、さっさと桐生戦兎からドライバーを取り返したいが、お前らの目が邪魔でどうすればいいか。そんな悩みくらいだな」

しばらく無言の時間が続いたが、ミハルくんが沈黙を破った

「じゃあアンクはどうして今…泣いているの?」

「…そんなもん。っ、知るか。俺はグリード、メダルの塊、ただの物。感情や感覚なんてもの、最初からあるわけがねぇのに」

ふとアンクさんの顔を見ると、さっき睨んだ形相をしていたとは思えないほど、静かに涙を流していた

「俺は今、アンクさんがどうすればいいか分からなくて、悩んでいるように見えるよ。頭では理解出来ているのに、心が理解してくれないんじゃないかって」

「…向こうの世界の信吾も同じことを言っていた。そんな弱い自分から逃げたいんじゃないかってな。昔は感情も感覚も無かったのに、今もあるわけないのに、どうして俺は…」

「それは違うよ。アンクさんは映司さんから命を貰った、自分でそう言ってたよね?例えアンクさんの元々の正体がその、グリード?だったとしても、今涙を流したり、悩んだりしてるのは命ある、心ある人間だからなんだよ」

俺の言葉にアンクさんは呟いた

「っは、不便な物だな、人間の心ってものは…」

「そうだよ。人間は悲しみや怒り、迷いや悩み。そういう負の感情をたくさん抱えている、不便な生き物なんだ」

「こんな事なら命など望まなければ良かった。そうすれば映司が死ぬ事もなかったかもしれないのに…」

「だけどそれだけじゃない。喜びや楽しさ、感動や幸せ、そういった素敵な感情を受け取る事ができるのも人間だけなんだ。アンクさんにだってあるはずだよ。そういう感情を抱いた経験が」

アンクさんは目を瞑った。きっと今この瞬間、アンクさんは今まで受け取った色んな感情を思い出しているのだろう。暫くしてアンクさんは目を開いた

「確かに、あるかもしれねぇな…」

「そうでしょ。それもアンクさんが、心ある人間だからなんだ。そういう心があるから、人間って素晴らしいんだよ。俺はこれからもアンクさんに、命を燃やして生きて欲しいって、そう思ってる」

「命を、燃やす…」

アンクさんが俺の言葉を繰り返す

「そう、命を燃やして生きていけば、必ずアンクさんは変われるはずだよ。そうやって変われた人を俺は一人知っているから」

そうだよな、アラン。俺は心の中でかつての仲間にそう尋ねた。すると、今まで黙っていたミハルくんが口を開いた

「タケル。今のアンクには心がある。それは命ある人間だから。それは分かった。でもアンクの命の源はコアメダルなんだ。それはきっとアンクがオーズから命を貰っても変わらない」

「ああ、今はコアメダルが4枚しかないが、9枚ある時とは明らかに活力が違う。それを考えると、俺は腐ってもグリードなんだと思い知らされる。コアメダルがなきゃ、俺は生きられないんだってな」

「コアメダル。今のアンクさんにとってそれは、命の源であり、心を縛る呪いなんだね…」

俺の言葉に再びしばらくの沈黙が流れたが、またもミハルくんがそれを破った

「とりあえず、アンクは今その怪我なんだしゆっくり休んでよ。伊達さんの言葉通りなら、後5日は入院してなきゃいけないわけだし、その間にたくさん考えればいい。勿論俺も協力する。アンクが自己嫌悪に陥ってる原因は、アンクを暴走させた俺にあるから…」

「ミハルくん…あ、そうだ。3人でご飯でも食べようよ。ちょっと待ってて。売店の方におにぎりとか売ってないか、見てくるから」

そう言って俺は2人の病室を後にしたのだった


そして次の日の午後、約5日間眠りについていた火野映司が目を覚ましたのだった

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