小説 オーズ Anything Goes! 1
復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい
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『アンク…良かった…お前と逢えて……』
あの日から、俺の頭からその言葉がずっと焼き付いて離れない。お前が俺に放った、最後の言葉が
俺は10年前のあの日、命を欲した
『お前の欲しい物って何だ!人間か?』
『もっと単純だ。世界を確かに味わえる物、命だ!』
俺は信吾を通して、始めて五感を味わった
今まで見ていた世界は色鮮やかになり、濁っていた音は透き通る様に耳を突き抜けた。アイスを食って始めて知った熱と味。ただの物だった俺がこんなに満たされたのは、当然初めての経験だった
だが俺は、あの時…
『命が欲しいなら、人の命を大切にしろ!』
『知るか!』
俺は自分が一番に満たされたいと思うがあまり、お前の言葉に反論した。…今では、お前のその言葉がどうしようもなく身に染みる
『お前が掴む腕は、もう俺じゃないって事だ』
あの日、ただのメダルの塊だった俺は、命を通して死を実感した。だけど、もしかしたら俺のその言葉が、お前をずっと縛り付けてしまったのかもしれない
だからお前は十年という歳月の末に、自分の命と引き換えに、俺を蘇らせた。俺は生き返る事など、望んじゃ居なかったのに…
あれから、色々あった。鴻上との衝突、世界の移動、時間の移動、お前との再会、湊との出逢い、ポセイドンとの戦い
お前と再会する夢も見た。いや、正確にはあれは夢ではなく、現実…あるいは俺の知らない記憶の断片だろうが
その中で見た白衣の男と青い龍の仮面ライダー。奴らの情報を手に入れる為にも、まずは鴻上の元へと向かったのだが、何故か俺の知っているその場所に、ビルは無かった
だから俺は今こうやって途方に暮れて、ベンチで寝転がっているってわけだ
『───ンク…?アンク…!ねぇ、アンク!』
そんな時、聞き馴染みのある声が俺の耳を刺激した
「おい、アンク!起きろって!」
俺は眼を覚ました。何故ならその声の主は
「おはよう。やっと、逢えたな…今日、この日が…俺とお前が居る明日…だったんだな、アンク」
そう、俺の視線の先に居たのは、お前──映司──だったからだ
「何だよ、そんな暗い顔してさ。最後に会ってからもう4年以上。久々に会えたんだから、少しは喜べよ」
4年、だと?今は2021年、この世界ではまだ2011年でしか会ってないはず…つまりあれは、やっぱり夢じゃない…2017年に間違いなく起きた現実だったんだ
鴻上や他の奴らに映司の場所を聞く手間も省けた。このまま俺が映司を見張っていれば、映司が馬鹿な行動をして自分の身を投げ出す事もない
「せっかくだからさ、アンク。比奈ちゃんのお店に行こうよ!比奈ちゃんもアンクにまた逢える日を、ずっとずっと楽しみにしてたんだ。比奈ちゃん、きっと喜ぶだろうなぁ」
こっちの世界でも比奈の奴は自分の夢を叶えているらしい。自分の店まで構えてるとなると、相当儲かってるんだろう
「そういえば伊達さんが日本に帰ってきてさ…」
俺からすれば、映司と話す事自体はそこまで久々にも感じない。この世界で4年前現実に起こったらしい出来事を、俺は昨夜追体験したからだ
「今、後藤さんと信吾さん含めて、警視庁の中の何人かで特別チーム組んでるらしくてさ…」
だが、どこか違和感もある。映司、こんなに喋る奴だったか…?まぁでも、再会出来て嬉しいと感じているのは俺も同じだ
「───なぁ、アンク…?聞いてる?」
しばらくぼーっとしていた俺が映司と視線を合わせる直前…
「っ…アンク、危ない…!!!」
俺の視界は宙を舞っていた。身体が地に叩きつけられた時、目の前には血塗れになった映司の姿があった
何が起きたか、全く分からなかった。辺りを見渡しても敵らしき奴が見当たらない。俺は再び映司に視線を送る
「ア、ンク…お前が、無事なら…俺は……」
ふと、鴻上の言葉が頭を過った
『火野くんはある人を庇って亡くなったそうだ、誰かは知らないがね』
映司が死ぬのは2021年…まさか、映司が庇ったある人ってのは…俺、なのか?
嘘だ…そんなの嘘だ!だって、俺が…俺がこの世界に来たのは、映司の運命を変える為…これじゃまるで、俺が来た事で映司の運命が変わったんじゃないか…
俺が世界を移動したから、俺が時間を超えたから、俺が映司を救いたいと望んだから…全部、全部俺が招いた運命だというのか…?でも、そんな事一体誰が?
辺りを見渡そうと映司から再び目の前に視線を移そうとすると、地面には悍ましい形をした薄く淀んだ紫色の脚が2つ佇んでいた
顔を上げるとそこには…恐竜グリード、なのか?目の前が涙でぼやけてよく見えない…という事はつまり、こいつは真木…?
いやでも、真木はあの時虚無へと飲み込まれ、だからこそ湊に大量のコアメダルが入ったんだ。真木が生きているはずがない。お前は、誰だ…?
『ヴァgA名はg?L…』
何だ?音が濁っていて、よく聞こえない…気付けば俺の視界に映っていた薄紫色だと思っていた脚は、灰色になっていた…
奴が何かを言っているが、既に俺の世界から音は消えている…何一つ耳に届くことはなかった。そして奴の攻撃は次の瞬間、俺の身体を貫い…
「やめろおぉぉぉ!!!」
気付けば俺は叫びながら、寝転んでいたベンチから飛び上がっていた。辺りを見渡すと公園にいる全員がこっちを見ている。今のは…夢、だったのか?
ただ間違いなく、俺は感情や五感を失っていない。世界は彩られ、ガキがこっちを指さして笑う声も鮮明に聞こえる
そして何より、心臓の鼓動が煩い…これは怯え、なのか…?似たような感覚は、昔一度味わったことがある
『オーズが組むべきアンクは、お前じゃない』
『おかえり…僕…!』
ったく、人間ってのはこういう部分があるからタチが悪い。グリードのままだったら、怯えなんか経験することもなかったのに。ここは一度落ち着いて、状況を整理する必要がある
俺は映司の運命を変える為にこの世界にやってきた。だが降り立った時間は2051年を指していた。湊を追って俺は2011年に行き、映司と再会した
再び2051年に戻った後、俺は湊と鴻上の実験に1週間付き合った。鴻上は始まりの3枚に更なる力を与え、その結果スーパータトバのコアメダルが完成した
そして湊は再び2011年へと飛び、映司にそのメダルを渡した。その後俺はこの2021年へと降り立った
だが俺と映司は恐らく今から4年前、つまり2017年に一度会っている。それがあの夢だと思っていた出来事だ。俺が知らない記憶ってのが意味不明ではあるが
そして、もしそれが本当なら…今の夢と思われる出来事も過去に起きた現実なのか?いや、2021年の出来事である以上、未来である可能性もある、か…
俺が俯いて考え事をしていると、目の前に刺々しい形で、濃く主張の強い紅色の脚が2つ並んだ。俺が顔を上げるとそこには…
「よォ、トサカ!相変わらずうるせェ野郎だぜ!」
出来損ないのヤミーみたいな鬼が1匹立っていた
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