小説 オーズ Anything Goes! 20
復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい
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デンライナー外 アンクSide
如月弦太朗がデンライナーに入ってすぐ、一人の若い男が飛び降りてきた。男は桐生戦兎に向かって叫んだ
「ビルド!オーズドライバーに必要な最後の鍵は、アンクのコアメダルのエネルギーだ!ドライバー全体に、アンクのコアメダルのエネルギーを纏わせる。これが出来ればこのドライバーは完成し、最強のオーズが誕生する!!」
「よし、一緒に研究した仲だ。駿の言葉を信じる。ということでアンク、聞いてた通りだ。このドライバーに、お前のコアメダルのエネルギーを…!」
そもそもこいつは誰なんだ?俺がそう思っていると、隣で映司が男の顔を見て尋ねた
「駿って、もしかして、駿くん…?」
「そうだよ!オーズの助けになりたくて!」
「嘘、あの駿くんなの!?」
どうやら映司や比奈の奴とは知り合いらしいが、俺には聞き覚えが無かった。それはさておき、ドライバーにコアメダルのエネルギーを纏わせる、そんな事が本当にできるのだろうか。そんな時、その話を戦いながら聴いていたゴーストが叫んだ
「アンクさん、っ…呪いを解くチャンスだ!彼の言葉通りにやってみよう…!そうすれば、そうすればアンクさんは、必ず心ある人間になれる!!!」
ドライバーが完成すると同時に、俺が人間になれる?そうすれば映司を救える。ふっ、願ったり叶ったりじゃねぇか。いいだろう。俺は欲しい物を全て手に入れてみせる。自分のこの手で!
「アンク、人間になるって、どういうこと?」
「さぁな」
俺は映司の言葉に一言返すと、桐生戦兎からオーズドライバーを預かり、それを空に掲げた。刹那、俺の中から5枚、バースドライバーXから3枚のコアメダルが飛び出した。それらはドライバーを囲うように宙に浮いている
そして俺は自分の意思が入ったコアメダルを体内から排出し、俺の身体は全てセルメダルへと還元さ…
俺は、どうなった?真っ暗で、何も感じない。まぁ、それもそうか
『おい』
誰かに話しかけられた気がした。振り向いても誰も居るわけがないし、そもそも振り向く身体さえない。それに居たとしても見えるはずがない
なのに俺の意識は、完全にそちらに向いていた。そこにある何かを求めて。欲する気持ちがどんどんと昂ると、俺は身体に僅かな熱を感じた
その瞬間、俺は意識の中で自分がそこに居る感覚を得た。身体だってちゃんとある。俺が目を開くと、そこに居たのは…もう一人の俺だった
『お前、人間になりたいんだってな。だがその意味が分かっているのか?お前はそれと同時にグリードの力を全て失う。戦う力を失う』
「それでもいい。俺はこれから人間として生きる。感情、感覚。その全てをそのままの形で、俺自身の心で受け取れるような存在になる。それこそが、俺の願いだ」
『お前は感じたはずだ。人間の心の厄介さ、そして不便さを。それなのに、なぜお前は人間に拘る』
「それは、お前が一番よく分かっているはずだ。お前には心残りがあった。もっと人間として生きて、命の全てを全うしたかったという心残りが。俺は自分の一番やりたい事をするだけだ」
『俺は、あの時満足して死んだ。心残りなど、1ミリ足りともあるものか。だが俺も少しばかり興味はある。もし叶うのならば、俺も本物の命や心を感じてみたいものだった』
「ふっ、いいだろう。お前は俺だ。お前の記憶は俺が引き継ぐ。お前にも見せてやる。俺が人間として生きる、その行く末を」
『それなら最後に、映司にこう伝えてくれ…』
映司Side
アンクの意思が入ったコアメダルを含め、9枚のコアメダルが地面に落ちると同時に、俺のポケットから熱を感じた
それは俺がこの10年間ずっと持っていた、この世界のアンクの割れたコアメダルだった。それは吸い寄せられるかのように、9枚のコアメダルの方へと飛んでいった
刹那、眩い光と共にオーズドライバーが再び宙に浮くと、セルメダルがアンクの身体を形作った
しかしコアメダルはセルメダルの塊へと戻らず、宙に浮いたドライバーにどんどんエネルギーを与えている
その度に1枚、また1枚とコアメダルが消失していく。そして割れたコアメダルとアンクの意思が入っていたコアメダルは、父さんのコアシステム同様の現象を引き起こし、2枚のコアメダルは完全に一体化した
そして一体化したコアメダルから膨大なエネルギーが放出されると、オーズドライバーが紅色に染まった
それに合わせてセルメダルの塊がドライバーを掴むと、一体化したコアメダルはそのまま消失し、アンクの身体が復元されたのだった
「アンク!」
俺が叫ぶとアンクは瞑っていた目を覚ました
「映司、俺はもう一人の俺と完全に一体化した。奴の記憶もそのまま引き継いだ。此処に居る奴らとどういう関係だったのか、全部理解した。それと、そのもう一人の俺から伝言だ。…お前はもう、独りじゃない、だとよ」
そうか、そうだよな…ありがとう、アンク。心の中でそう呟くと、不意にアンクが右手を突き出す
「やはりセルメダルが1枚も身体から出て来ない。それにヤミーを作れる気配も全くない。そして面白いのは、俺は今凄くわくわくしてるってことだ」
「アンク、本当に人間になったんだな」
「そうらしい。だが、そんな事を喜んでる暇はなさそうだ。問題は、俺のコアメダルが全部無くなった、つまりオーズに変身するには、その辺にいるグリードからメダルを奪う必要があるってことだ」
確かに、他のライダー達がかなり必死になって戦っている。そしてアンクの言う通り、俺たちの手元には今コアメダルが1枚もない。でも向こうは完全体だ。アンクも戦う力を失った今、どうすれば…
「その必要はないよ!アンク!」
アンクに言葉を掛けたのは駿くんだった
「どういう意味だ?」
「オーズ、アンク。そのドライバーを二人で持って、強く念じて欲しい。俺に戦う力をくれ、って」
駿くんの言っている意味が全くわからなかったが、俺は言われた通り、アンクが持っている紅色のオーズドライバーを掴み目を瞑った
『俺に、戦う力を!』
そう心の中で叫んだ途端、アンクが手を離したのか俺はドライバーを奪ってしまった
「おい、アンク。ちゃんと駿くんの言う通りに…」
「何だと?」
「やっぱり、成功だ!ドライバーが分離した!」
驚くべきことに、俺とアンクは先程までその両端を互いに持っていた紅色のオーズドライバーを、今1つずつ持っている
「二人の心の繋がりが、ドライバーを錬成したんだ!じゃあ次にそれを装着した状態で二人で手を繋いでみて。どうせだから比奈さんと、信吾さんも!今度は皆で念じるんだ!」
そう言って駿くんは背後でこれまでの奇跡をずっと見ていた、比奈ちゃんと信吾さんを連れてきた
「え、私?映司くんと、こうやって繋げばいいの?」
「じゃあ俺は、アンクと、か…?」
俺とアンクは言われるがままに、紅色のオーズドライバーを装着する。その瞬間、俺とアンクの心が一つになった感覚があった
そうして俺たち4人はそのまま手を繋いだ。全員が一斉に目を瞑る。そして全員が同じ想いになり、心が繋がった瞬間、俺は繋いだ両手に何か違和感を感じた
『Connect with TATOBA』
ドライバーから何やら不思議な声が鳴り響き、全員が目を開くと、結んだ両手の中にあったのは…
「おい、映司!なんでこんなもん持ってんだ!」
「知らないよ!気付いたら、手にタカコアが!」
「私と映司くんの間からはトラのメダル!」
「俺とアンクの間からはバッタのメダルが…!」
そう、俺達は何も無いところからコアメダルを生み出したのだった
「駿くん、これ、どういうことなの!?」
「オーズとアンクがそのオーズドライバーを装着していると、コアメダルが錬成できるんだ!つまり、オーズ。そしてアンク。二人は心が繋がった誰かに、オーズの力を貸すことができる!」
その言葉を聞き驚いたのは、俺達だけではなかった。ライダー達と戦っている父さんが強大なパワーを放ち全員を変身解除へと追い込む
「そんな馬鹿な話が罷り通ってたまるか!私のこのコアメダルこそが、最強のコアメダル!お前らに私を超えることはできん!!」
そうして父さんはコアメダルを持った比奈ちゃんと信吾さん目掛けて、2つの攻撃を仕掛けた。幸い戦兎くんがその攻撃を受け流し、二人に当たることは避けられた
俺とアンクは父さん達の前に行き、変身解除に追い込まれた皆を背中に叫んだ
「皆!時間を稼いでくれてありがとう!だけど、もう少しだけ頑張って欲しい。今度は俺たちも一緒に戦うから!だけど、まずは二人で戦おう!アンク!!」
「いいだろう。…ん?ふっ、映司!受け取れ!!」
アンクは自分の持っていたタカのコアメダルが更に分離していることに気付くと、そのうちの1枚を俺に投げ渡した
「よし、比奈ちゃん!」
「信吾!」
そして俺達はもう2枚のコアメダルを持っている二人に向かって叫んだ。俺達と心が繋がっている二人は察したように頷く
「それが、2人のやりたい事なら…映司くん!」
「アンク!」
「「これを!!!」」
比奈ちゃんと信吾さんは、俺達に向かってコアメダルを投げ渡した
「比奈ちゃん、ありがとう!」
「っと…相変わらず投げるのが下手だな、信吾は」
まずアンクがバッタのコアメダルをアンクのドライバーに嵌め込むと、それにリンクしたように俺のドライバーの中にもバッタのコアメダルが出現した
同様に次は俺がトラのコアメダルを自分のドライバーに嵌め込むと、アンクのドライバーの中にもトラのコアメダルが出現する
そして俺達は同じタイミングでタカコアをドライバーに嵌め込み、ドライバーを傾けると、オースキャナーを取り出し二人で叫んだ
「「変身!!!」」
二人が一気にコアメダルをスキャンすると、聞き慣れたのとは少しだけ異なる歌が流れ出した
『タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!
タトバ!タトバ!!…エニシング!!!』
刹那、俺とアンクの周りをコアメダルが回り出す。オーラングサークルが完成すると、それらは二つに分裂し、俺たちの胸にその印を刻んだ
「エ、エニシングって、何だ?」
姿に変わりはないものの初めて聞く歌に、俺は初めてオーズに変身した時と同じように困惑したが、駿くんが叫んだ
「歌は気にしないで!それはエニシングオーズ!どれほどの物かは、戦ってみればわかるはずだよ!」
確かに変身した後から、俺は感じたこともない力を感じていた。今まで変身してきたどのコンボによりも強い力だ。これこそが心が繋がったことで完成した、最強のオーズ
俺はその力を腕に込め、トラクローで父さんを攻撃する。何枚ものセルメダルが地面に落ちるのを見て俺は確信した。このオーズは通常の場合の何倍もの力を引き出すことができる
「基本の姿如きで、この力、だと!お前らもやれ!」
父さんの言葉に、全ての敵が俺達に向かって突進してきた。その時だった。デンライナーからもう1人、駿くんくらいの男の子が飛び出して叫んだ
「ライダー!!!」
少し時間は遡り、ヨーロッパ ミツルSide
「さっきエグゼイドから連絡があった。オーズが目を覚ましたらしい」
「本当!?良かった…2人とも無事で…」
戦兎さんの言葉に駿は安堵している。それは俺も同じだった。無事で本当に良かった
「だが、それはつまり、私達が日本に戻らなければならないということを意味する」
「テディの言う通りだ。ナオキ、ドライバーの研究はどうだ?」
「うーん…やはり最後の鍵が何か、それが分からないね。僕にはそれが何か、皆目検討も付かない。あとは駿くん、君に任せてもいいかな?」
父さんの言葉に駿は頷く。そうか、もう…帰らなきゃいけないんだ
思えば俺はヨーロッパにきて、特別何かをしたわけでもない。父さんと駿は、鴻上さんと一緒にオーズのベルトの研究を、戦兎さんは紘汰さんと一緒に世界の融合に関する研究をしていた
幸太郎さんとテディはデンライナーを動かすからには必要な存在だし、皆それぞれに目的があってこのヨーロッパに来ていた
でも、俺は違う。ただ父さんの力になれると思って着いてきただけで、実際は何の役にも立っていない
鴻上さんも駿もあまりにも優秀で、俺はこの数日間、自分が何も出来ない事に対して自己嫌悪に陥っていた
「よし、そうと決まれば早く帰ろう」
紘汰さんの言葉に全員が頷き、帰り支度を始めた時だった
「ミツルくん!!!」
俺は鴻上さんに呼び出された
「えっと…何でしょうか?」
「君に是非とも頼みたい事があってね!!」
そういって鴻上さんは机の上に6枚のコアメダルを並べた
「私はドライバーの研究を行いながらも、自分の欲望を一番大切にしていた!そして!これはその研究の末に作り上げた、人造コアメダルだよ!!!」
「シカに…、こっちはペンギン…?」
「そうとも!!これらは全て純粋な欲望のパワーのみを抽出し純化させた、全く新しいコアメダル!そしてミツルくん、君への頼みはこうだ!もしオーズドライバーのアップデートが完全に完了した後にも、火野くんやアンクくんがピンチに陥ることがあったら、その時は彼らにこれを渡して欲しい!!!君にしか出来ない仕事だ!!!」
俺にしか出来ないこと…俺も皆の役に立てるのかな。そう感じた俺は頷き、6枚のコアメダルを預かった
「おーい、ミツル!もうすぐ出発するぞ!」
「うん!今行くよ!!…ありがとう、鴻上さん」
「あとは頼んだよ!!!」
こうして俺は駿の後を追いデンライナーに乗り込むと、日本への帰路に着いたのだった
時は戻り、現在 デンライナー内
「おい、ミツル!駿がやったぞ!!映司さん達が変身した!!」
喜ぶ先生を横に、俺もその様子をデンライナーから見ていた。10年前と何も変わらない、オーズの姿がそこにはあった
見た限り、オーズが敵のボスを圧倒している。ただ他のライダー達が今変身解除に追い込まれていることを考えると、人数的にはかなり厳しい状況にある
俺は鴻上さんの言葉を思い出し、自分のポケットに入っているコアメダルを握りしめながらデンライナーを降りた
ちょうど敵全員がオーズに襲いかかっている所を、俺は持てる最大の声量で叫んだ
「ライダー!!!これを使って!!!」
俺は2人のオーズにそれぞれ3枚ずつのコアメダルを投げ渡した
「ミツル!今のコアメダルは一体!?」
敵の突進を回避しながら駿の言葉を聞いていたオーズは驚いたように尋ねた
「え…もしかして、ミツルくんなの?」
「うん!俺も、ライダーの役に立ちたくて!鴻上さんからコアメダルを預かっていたんだ!」
「また鴻上か…が、今はそんな事言ってる暇なさそうだな…」
2人のオーズがベルトにセットしていたコアメダルを抜き取ると、それらはそのまま消失し、2人はそれぞれに渡したコアメダルをベルトにセットした
そして2人は同時にコンボチェンジを行うために、コアメダルの再スキャンを行った
『シカ!ガゼル!ウシ!
シーガーゼシー!シーガゼシー!
シーガーゼシー!!!』
『セイウチ!シロクマ!ペンギン!
セイ!シロギン!セイ!!シロギン!!』
こうして2人のオーズはそれぞれ異なる姿に変身した
「鴻上のやつ、ふざけたコンボを作ってくれたようだな。何がシガゼシだ」
「アンク!俺のはセイシロギンだって!シャウタより強そうだ!!」
「そんなのはどうだっていい!姿が変わったところで劣勢には変わりない…おい、後藤!こいつを使え!使い方は、分かるはずだぞ!!」
『Connect with BIKASO』
シガゼシコンボになったアンクがバースの変身者、後藤さんに向かって先程まで装着していたベルトと、今錬成した3枚のコアメダルを投げ渡した
「これは、バースドライバーXに、会長から貰ったのと同じコアメダル。よし…伊達さん!こっちを使って下さい!火野とアンクを援護します!」
「うーし、分かった。行くぜ、後藤ちゃん!」
「はい!」
もう一人のバースの変身者の伊達さんにバースのドライバーが渡ると、2人は立ち上がる。そして後藤さんはコアメダルをドライバーに入れ始めた
『エビ!カニ!サソリ!』
「「変身!!!」」
『バ・バ・バ・バース!バ・バ・バ・バース!!
エーックス!!ソカビ!!!』
こうして2人のオーズと2人のバースが敵の攻撃に対抗を始めた。俺は自分の役割を果たした…だけど、まだ何が役に立てるはずだ。俺にできる事、それは…
「頑張れ!!!ライダー!!!」
俺はライダー達を応援することしかできない。だけど、もしそれが彼らの力になるのなら…!
「オーズ!バース!頑張れ!!」
俺の声に合わせ、駿も声を上げる。それに続き、比奈さん達、変身出来ない者達が総じて仮面ライダーを応援した。その時、敵のボスが叫んだ
「黙れ!!どうせ映司に関わる邪魔者は全て排除する予定だった!まずは貴様らから始末してやる!!お前ら、映司達を押さえておけ!!」
そう言い放った敵のボスが俺達に攻撃を仕掛けてきた時だった
「皆、応援してくれてありがとう。俺だって、皆の明日を守るって、オーズと約束したんだ!だから…俺だって、ずっと這いつくばってるわけにはいかない!…変身!!」
『ヤドカリ!!』
アクアの変身者がアクアハーミットとなり、その攻撃を受け止める。それに続いて泊さんが叫ぶ
「変身出来なくても、俺は仮面ライダードライブだ!ここに居る皆には、一つも攻撃を当てさせてたまるものか!」
更にデンライナーから先生が降りてきて言葉を続けた
「いいこと言うじゃねぇか、ドライブ。アンタが映司さんの父親だろうと関係ねぇ!ライダーの絆の力、舐めんなよ!!…ミツル、駿、ありがとよ。お前達のおかげで皆の心に火が点いたみたいだぜ」
先生のその言葉に、変身解除に追い込まれた皆が立ち上がり始めた。良かった、これで俺もライダー達の役に立てたんだ
そして俺はもう一度、声を大にして叫んだのだった
「頑張れ!仮面ライダー!!!」
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