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恋の行き先。〈1〉

「休憩して。敦史。」
敦史は動きを止めた。
「痛くなった?」

ーーー
ちょっとだけ気取っていて、
普段着で行けるお店で、敦史はお酒を選んだ。
私はお酒に弱くてあまり飲めない。
でも、少しだけと彼は言う。

軽い食事をしながら二人で飲む。
照明がグラスに反射してきれいだった。
「スクーターを売るよ、今度。」
私に何か食べさせたそうにしながら、彼はそう言った。
私「自転…マウンテンバイクにでも乗るの?」
敦史「く・る・ま」
「車にするつもり。遠くなるから。行き来が。」
私「あの、あのね」
彼は私の口にチーズを捩じ込んだ。
敦史「車中泊の旅が楽しかったって言ってたでしょ。
あれもやりたいから。もちろんエアコン付きのキャンピングカー仕様のハイエース。」

以前、夏に車中泊したら、夜が暑くて眠れなくて、少しでも涼しい標高の高い所を目指して走って、着いた所が墓地だった。という話しを私がしたことがあった。

それを覚えていて、キャンピングカー仕様の車を買うというのだろうか。

私「値段知ってるよ!あんな高い物、ダメだよ。勿体ない。」
彼は静かに笑った。

とんでもない、話しをしなくてはと思いながら、店を出て彼のマンションに向かった。
少し酔ってしまい、ふらついたけれど、これぐらいならわからないはずと思いながら部屋に入った。

敦史「くれは、酔ってる。」と、いきなり後ろから抱きしめられた。
ああ、まただ。
いつもどうして部屋に入るとすぐに始まってしまうのだろう。
彼は飢えているみたいだ。
何に?
愛なのか、欲望なのかわからない。
とにかく求めて止まない。

きっと年が明けたら遠くに引越さなければならないからだ。
身体中を触りながら、むしるように、衣服を脱がされる。
全身を好きなように愛撫される。

私はお酒のせいなのかわからなくなるほど、フラフラになって行く。
近くのソファの上で彼は挿れた。
窮屈だから脚をソファから投げ出すようにしないとならなくて、とんでもなく恥ずかしくいやらしい姿になってしまう。
困るのだ。

彼は動きながら「絶対恋を超えてる」と言った。
耳を舐めながら「愛、愛してる」と言った。
急転直下の告白から、今は淫らな格好のまま愛していると告げられる私。
1回目は彼は時間をかけずに貪る。
2回目は朝まででもする。

正気になって。
私たちは恋もリサイクルするんだよ。

テーブルの上に、キャンピングカーのカタログや書類があるのが見えた。
ふいに彼がいじらしくなり、私は彼が突き上げるのに合わせて…イッてしまった。


つづく

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