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inagakijunya
結衣の悪魔〈4〉
「いつか」
結衣の心を占めているその人の言葉。
「忙しくて」
結衣は考えすぎてわけがわからなくなるタイプだったけれど。
これぐらいの言葉の裏の意味はわかる。
あなたのことはどうでもいいということだ。
結衣にとって、その人が放つものは他には見つけることができない特別なものだった。
易々と近寄れない気がした。
私の絶対神、あるいは捕えて離さない悪魔。
神でも悪魔でも私にとっては同じ事。
ーーー
出会い系で出会った看護師IさんのLINEは相変わらず多かった。
彼は退会しておらず、やり取りしながら結衣は憂鬱だった。
結局は複数とマッチングして…そう考えている人なんだろうな。
遠回しに退会していないことについて書いた。
Iさんは気がつき、
僕が気に入られないかもしれないから、会ってみてから退会を決めていい?と言った。
嘘だ。
私の容姿を見て判断するつもりだ。
自分が気に入られなかったらなんて、すごく上手いことを言っている。
それからも甘い言葉のLINEは続いたけど、頭は冷めていた。
ホテルで待ち合わせしましょうと言ってくる医師の方が正直でいいと思えた。
Iさんと会う日は決まった。
近日だった。
それがどう転ぶか。
見極めよう。
きっと自分は失望する。
その反対はないような気がする。
オシャレするのが億劫だった。
医師をセフレにして、出会い系を辞めようかな。
感染症対策もプロだから考えてるだろうし。
もう恋できたらなんて甘いことは諦めた。
ただ女として、抱かれたい。
それだけだった。
つづく