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恋の行き先。〈18〉

私「行ってらっしゃい。」

敦史「ん、」
チュッとキスし、笑顔で出て行く敦史。

敦史の部屋はほぼ整った。
家電の配達も急いでもらった。
私は洗濯機を回しながら、そろそろここを出て行くことを考えていた。

ここに長居していては、自分の立ち位置がわからなくなる。
もし一緒に暮らすなら、覚悟が必要だと思っていた。

一緒に勢いで暮らせるほど、私は若くない。
どこかで聞いた台詞のようだけれど、一緒になることは、どうしても惰性や別れを連想してしまう。
きっと年齢のせいなのだろう。

決心がつかない。

洗濯物を乾燥機にかけて、畳んで、できるだけ完璧にして帰ろう。
彼には置き手紙をして、美味しくないけど何か作って置いておこう。

手早く取り掛かって、片付いたとき、ペンを取った。

敦史へ
新生活も始まって順調そうで、安心してる。
私もそのままにして出て来た高台町に帰る頃だと思いました。
給湯器が凍結してないか心配。
見ておかないと。
小鳥の台は大丈夫かな。
餌はすっかりなくなってるだろうね。
落ち葉は山のようかな?
色々と気になります。
敦史とはLINEでも話せるし、心配はそんなにしていないの。
新生活がんばって。
敦史みたいに気がきく人はいないから大丈夫。

愛をこめて
                  くれは

バゲージを手にすると、振り返らず家を出た。
そうして新幹線に飛び乗ると、
短い間だったけれど、敦史の笑顔や二人で過ごした色々なシーンを思い出した。
車窓から外を見ながら矢のように過ぎて行く景色に少し怯えてしまっていた。
自分は一人で帰るんだ。

大丈夫、これが今のベストな選択。
私の生活も作って行かなければ。
あのままでは敦史に依存して、ズルズルと暮らしてしまう。

私は敦史の住んでいる町からどんどん遠ざかって行った。


つづく

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