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恋の行き先。〈17〉

新しい家に到着した。
高速道路で、軽い休憩を挟むと6時間はかかった。
改めて簡単に往復できる距離ではないと知った。

荷物はなるべく重くならないように、小さい箱に詰めるようにしていた。

敦史の部屋は2階にあり、エレベーターで、案外楽に運ぶことができたが、私にとっては重労働だった。

二人っきりで運んでいるのだから、仕方がないのだが、二人には楽しさ半分、辛さ半分で思い出になりそうだと思った。

時々休憩して、改めて部屋を見ると、明るい間取りで3LDKもあった。
きっと私のことを考えてくれて部屋を決めたのだと思う。
指輪を見つめながらそう考えていると敦史は言った。

敦史「気に入ってくれてる?よく見てるよね?」

私「すごくかっこよくて、きれいで。見ていたら気が休まるの。」

敦史は嬉しそうにした。

敦史「くれははもう休んで。荷物はあと少しだから俺が運ぶよ。」

すっかり荷物を運び終えると、お湯を沸かしてお茶を淹れた。
有り合わせの食器で淹れたお茶を飲むのは、遊びのようでおかしかった。

窓から新しい風景を眺めた。
駅に近く、ビルやマンションが見えた。
私たちが住んでいた地域は地方都市で、こんなに便利な場所はなかった。

敦史は家具屋を検索し、早速行こうと言った。
確かにテーブルもない部屋は不便だった。

大型量販店に到着し、運べるテーブル、ソファなどを買った。
ベッドは別の店に行った。
ベッド専門店で、以前あたりをつけていた商品を彼は迷わず買った。
配送は早くても5日後だった。
土日、休日の配送を選ばなかったのは、私に受け取りをさせるつもりだからだ。
ということは、私をその日までは引き止める気だという事。
仕方がないけれど、いつかは帰らなければ。

その日は必要な物を出し、並べたり置いたりして、
外食しに出かけた。
帰宅してお風呂に一緒に入った。
狭いけれど二人で湯船に浸かり、疲れを取ろうとゆっくりした。
温かいお湯に浸かって、ただ黙ってお互いを見つめ合った。

私「足の指、絡め合ってみようか?」

敦史「足の指?また新しいことを!」

一生懸命にやらないと中々うまく絡まなくて、すごく笑った。

敦史「身体洗ってあげるよ。」

敦史の『身体を洗うタイム』がやって来た。
恥ずかしいのだけれど、マッサージも兼ねていて、つい、身を任せてしまう。
任せているとそのままINされてしまうのだけれど…。

のぼせてしまった私を抱き上げて、持って来た布団に寝かされた。
昨日まで使っていた布団が、不思議と懐かしく感じた。
この世に生まれ落ちた双子のように寄り添って、私たちは深く眠った。

つづく

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