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【SDGs女性情報交換会】生き方、暮らし方、働き方 vol.2 渡邊さやかさん

「全ての生命がもつ可能性を信じ、
その可能性に還っていく未来をつくっていくこと」

こんにちは!今日は、10月7日に行われた、「SDGs女性情報交換会 生き方、暮らし方、働き方 vol.2 渡邊さやかさん」の会の様子をレポートします。

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長野県内には、自由に自分らしく生きている女性が多数いらっしゃいます。
女性の幸せって何?の答えは、数限りなくあります。社会の「こうあるべき」という姿から自由になって、本当に自分のやりたいことをしなやかに実践している方々のお話を伺いながら、「自分にとっての幸せって何?」を探したり、再発見したり。

第2回目のゲストは、長野県立大学大学院 講師 渡邊さやかさんです。

11歳での海外経験が自分の生き方の基軸になった

現在、4つの肩書きを持つ

長野県長野市出身で昨年家族と共にUターン。これまでのお仕事、仕事+住まい方 、目指していきたい生き方など、どんな風に生きてきたかのお話を伺いました。

渡邊さんは、「全ての生命がもつ可能性を信じ、その可能性に還っていく未来をつくっていくこと」をヴィジョンに掲げ、2011年に株式会社re:terraを起業。合わせて、現在、4つの肩書きを持っておられます。

株式会社re:terra(リテラ)代表
 一般社団法人AWSEN 代表理事 オーセン アジア女性起業家
株式会社ラポールヘア・グループ 取締役
長野県立大学大学院ソーシャル・イノベーション研究科専任講師

長野市のなかでも白馬側の七二会(なにあい)地区という山あいで生まれ育った渡邊さんは、1時間に1本程しかバスが通らない環境だったこともあり、高校時代から一人暮らしをはじめ、大学進学で上京。2021年、約20年ぶりに長野県へとUターンしてきました。

精力的に活動する渡邊さん。その原点は、11歳の時に、初海外として訪れたネパールでの経験なのだそう。山登りをするために家族・親族で訪れた旅の道中で、3つの衝撃的な出来事に出会います。

渡邊さん:1つめは、お酒が弱い母親が飛行機で1杯だけお酒を飲んだら意識を失ってしまったんです。英語が話せなかったから、日本語で居合わせた海外の方に助けを求めたところから、英語を勉強しようと思いました。2つめは、初めて同世代のストリートチルドレンに出会ったこと。同世代でなぜこんなに違うのか、また周りの日本人の大人が私から彼らを遠ざけようとしたことにも大きな違和感を覚えました。3つめは、10日間の山登りをした時に現地にいた日本人の20歳のお姉さんとの出会い。就職社会と競争社会に疲れて、日本を捨ててネパールにきて、ネパール人と結婚すると聞いて、幸せにはいろんな形があるんだなと思いました。

幸せや豊かさとは何なのか、11歳の旅で考えた渡邊さん。それをきっかけに、国際教育や途上国開発について、大学、大学院で学ぶことになりました。

起業家と大学講師を兼任

途上国支援を仕事に選ぼうとしていた矢先、大学院生になった2005年、「途上国は支援する先だけではなく、マーケットの一部である」という研究論文に出会います。ビジネスの力で、途上国の問題を解決できるということを学んだ 渡邊さんは、ビジネスを学ぶためにIBMで経営戦略のコンサルタントの職に就きました。

2007年に就職し、次の道を考え始めたとき、2011年東日本大震災に遭遇。会社を辞め、東日本沿岸部を縦断しました。

渡邊さん:自分に何ができるだろうか、途上国開発でもそうですが緊急支援には絶対に産業復興が必要だと学んで知っていたので、何か産業復興に関わりたいと思っていました。そこから自分が起業家になるとは思っていませんでしたが、やりたいことに必要だったので、まず非営利組織を作り、次に株式会社に転換し、そこから10年活動をしてきました。

多岐に渡る渡邊さんの活動が目に留まり、2022年、長野県立大学大学院ソーシャル・イノベーション研究科専任講師として声がかかり、長野県に戻ってくることになりました。教員をしながら、会社での活動も継続されています。

国内外で女性に向けた活動を連携

国内外で地域支援とビジネスを両立する取り組みを展開

渡邊さんの活動は多岐に渡りますが、代表的なものとして、以下があります。
国内:日本の女性起業家支援、美容サロンを通じた女性雇用、椿を通じた地域活性
国外:SDGsビジネスのコンサルティング、アジア女性社会起業家

東日本大震災での支援をきかっけに地域資源である椿に出会う

椿を通じた地域活性については、東日本大震災の支援に関わるなかで、岩手県の沿岸部・陸前高田で椿に出会ったことでスタートしました。「津波をかぶっても、椿の木は枯れなかった。それに、震災後の2011年3月末も雪が降ったけど、雪のなかで咲く椿がすごく嬉しかったんだよ」と話す、地元のおばあちゃんやおかあさんたちの言葉からでした。地元では、椿油を料理にも美容にも使っていましたが、時代とともに廃れたことを聞いて、再発掘することを目指しました。ハリウッド化粧品とタイアップし、全国で販売を開始。グッドデザイン賞にも輝きました。

美容サロンを通じた雇用は、まさに暮らすroom'sのコンセプトにも通じるものです。女性のライフステージがどんどん変わり、家族との関係や自分の身体も変わっていくなかでも、どうしたら仕事を継続できるのか。渡邊さんは、株式会社ラポールヘア・グループで、取締役を務めています。事業として、美容師の雇用を応援していくためのサロンを全国で40店舗以上を展開。美容師は、3年未満の離職率が8割以上。夜も長く、土日出勤もあることも大きな理由であることから、働き方改革に目を向けたサロンだそうです。

日本の女性起業家支援は、シリコンバレーで10年以上女性起業家を支援している堀江愛利さんが、今年から日本の自治体や高校生を支援する仕組みづくりを開始。渡邊さんは、アドバイザーを務めています。また、日経ソーシャルビジネスコンテストでも、同じくビジネスプランに伴走するようなアドバイザーを務めています。

国外での取り組みとして、2014年、「アジア女性社会起業家ネットワーク」を立ち上げました。きっかけは、陸前高田で椿の事業を始めたことでした。

渡邊さん:まったく縁がなかった陸前高田で、よそ者の私が事業を始め、すごく悩んだことがありました。椿の事業をはじめた時、偶然にも同時期に参入した企業がありました。すると、地元の人が、私か企業のどちらに椿を持っていくかという派閥ができてしまった。私は、地域で何かお役に立てたらと思って始めたのに、結果地域に派閥を作ってしまったと感じました。コミュニティによそ者が入り何かを作る時に、その地域の良さを守りながら、経済を活性化するにはどうしたらいいのかと思いました。

その頃、東南アジアでは民主化が進み、外国資本が入ってきている現状がありました。外国資本が入り、経済発展している地域で、どのように地域の良さや地域の人のつながりを大事にしながらビジネスをつくっているのかを知るために、渡邊さんは東南アジアの諸国を訪れました。その流れのなかで、アジア女性起業家ネットワークの立ち上げへとつながりました。

SDGzビジネスのコンサルティングについては、東南アジアを中心に、南アジア・中央アジア・アフリカなどで事業を行おうとする企業のコンサルティングやリサーチ業務を行っています。日本の企業のプロダクトやサービスがどのようにしたら途上国と呼ばれる地域で、その地域の課題も解決しながら、日本企業のビジネスになるかをコンサルティングしています。

現在、長野県立大学大学院で講師をしながら、自身は、「女性の起業家支援」を研究されているそう。東南アジアを訪れることもあり、忙しい毎日を過ごされている渡邊さんです。

暮らすroom'sのSDGs女性情報交換会では、長野県で多様な生き方をする女性をゲストに迎えている

ネットワークをつくり、女性起業家を支援する

東北や海外での支援活動を通して、「援助をしすぎると、関係性がくずれてしまう。援助疲れや援助慣れを招いてうまくいかないこともある」と、感じたという渡邊さん。そのような経験も踏まえて、ゆるやかなネットワークを作り、交流することで支援をはじめたといいます。

渡邊さん:私がネットワークしているコミュニティは、アジアの女性起業家が300人程度所属しています。日本でも見かけるクラフトやものづくりの方は多いです。他にも、コミュニティビジネス的にその地域での課題を解決するものづくりを展開する人もいます。農業技術の支援や農家さんを取りまとめて組合を作り、お金を貸す仕組みやブランディングからパッケージングまでされている方もいて、本当にさまざまです。一方、テクノロジーを活かす女性起業家は、日本もですがアジアでも少ないです。

2014年当時、アジア女性起業家のネットワークが1つもないことを知った渡邊さんは、起業家に会うためにアジア各国を周りました。例え国が違っても、話を聞くと活動や悩みが似ていることに気がついたそう。お互いに交流することで、化学反応が起こると感じた渡邊さんは、2014年〜2017年まで、日本財団からの支援を得て、毎年2回、タイ・バンコクに30-40人女性起業家を呼んで合宿を開催。インパクト投資家を呼び、ピッチをするところまで行っていました。

渡邊さん:一緒に過ごし、悩みを共有することでつながりが生まれ、参加者同士がお互いの国を行き来する姿も見られました。学び合いとつながり合いの機会になったと思います。他にも、同時期にJICAと組んで、年に1回日本にアジアとアフリカの女性起業家を数人ずつ呼び、東京と地域をまわって、地域の女性起業家と交流してもらう取り組みも、5年くらいやりました。コロナ禍に入ってからは、オンラインでの学び合いの機会も捻出しています。

アジアでは日本よりも女性の活躍が目立つ国が多い

アジアの中でもジェンダーギャップが高いといわれている日本。東南アジアのフィリピンやタイなどでは、政治への参画や企業のなかでの管理職の割合も高かったり、お手伝いさんがいるのが当たり前の文化があるそうです。渡邊さんは、結婚し子供が生まれてから、海外の女性起業家の先輩たちから応援してもらったそう。

渡邊さん:仕事を諦めようと思ったことはありません。産後も半年くらいで子供を連れてタイに出張にいったりはしていたので、無意識的に彼女たちの影響は受けているかもしれません。

40代に入り、30代にやってきたことを深めるフェーズにしたいと話す渡邊さん。研究者としての立場で、例えば「なぜ女性起業家が増えないのか、女性起業家がいることで地域がどう変わるか、ソーシャルビジネスはどうしたら拡がるのか」といった、まだ日本での研究がほとんどされていないことに取り組んでいきたいといいます。

渡邊さん:ファイナンシャル、マテリアル、ヒューマン、ソーシャル、ナチュラル、カルチュアル。6つのキャピタルと時間軸を掛け合わせたら、もっと地域にしかない資本が、都市よりも圧倒的にあるはずです。女性起業家、そして女性は、もしかしたらファイナンシャルは少ないかもしれないけど、ヒューマン、ソーシャル、ナチュラル、カルチュアルは蓄積があるから、そこをもっと評価してもらえるといいなと思います。

渡邊さんの話は、暮らすroom'sが目指したいところだという話につながりました。いろいろな活動を可視化し、つながり、表現を広げていく。それには、コミュニティが必要。

渡邊さん:アメリカの研究論文で、自分のコミュニティが小さいと、それが必ずしも悪い訳ではないが、そこでしかヴィジョンが立てられない。逆にコミュニティが広ければ、ビジョンも広がるというものがあります。私自身、出産して思ったのは、子供としかいない日があったりしてコミュニティが狭まった時がありました。いかにコミュニティを多様にできるかで、自分の社会の感じ方ってすごい変わるんだと思いました。

あなたにとって幸せって何?
卒業論文のテーマが「開発と幸福」でした。そのあとがきに書いた気持ちが今でも変わりません。自然によって生み出された美しいものを綺麗だなと思える、自分の精神的な余裕とある程度の経済的な余裕があって、同じように、自分の大事な人が「綺麗だね」って思える精神的と経済的な余裕があることが、きっと私にとって幸せな状態。だから、美しい自然を守っていくことが大事だと思っています。

疲れたなと思ったときに、「最近、月や星を見てないな」と思ったら、自分に余裕がない状態と思うようにしていて、月や星を見上げられたり、お花が枯れずにお部屋に飾られていたりすると、「私、大丈夫!」と思う心のバロメーターになっています。


渡邊さやかさん
長野県出身。国際基督教大学アジア研究専攻。東京大学大学院「人間の安全保障」プログラム修了。ビジネスを通じて社会課題を解決できる仕組みを考えたいという想いから、2007年新卒としてIBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)に入社。新規事業策定、業務改善、CO2削減プロジェクト等に従事する一方で、社内で環境や社会に関する(Green&Beyond)コミュニティリードを経験、プロボノ事業立ち上げにも参画。

2011年6月日本IBM退職。会社員時代より、プロボノとして米国 NPO法人コペルニクの日本支部立ち上げ参画や、NPO法人soket立ち上げに理事·事務局長として携わる。

独立後は、被災地での産業活性プロジェクトや、(特に中小企業の)途上国·新興国進出支援として、現在は東南アジアだけでなく、中東・中央アジア・アフリカにも関わる他、AWSEN(アジア女性社会起業家ネットワーク)を通じて女性社会起業家支援に尽力している。

2013年、2014年日経ソーシャルイニシアティブ大賞ファイナリスト。 2015年The Entrepreneur Japan Awardファイナリスト。2017年より日経ソーシャルビジネスコンテスト アドバイザリーボードや岩手県女性就労委員。2018年度は、内閣府「アジア・太平洋輝く女性の交流事業」委員を務める。
NPO法人ミラツク理事、一般社団法人BoP Business Network Japan理事、一般社団法人Women Help Women理事。
宮城大学非常勤講師、長野県立大学大学院ソーシャル・イノベーション研究科専任講師。


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