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【イベントレポート】女性アスリート×SDGs×フェムテック ~自分らしい生き方とは~

今回のお話会は、「女性アスリート×SDGs×フェムテック ~自分らしい生き方とは~」をテーマに、上野眞奈美さんをゲストにお迎えしました。 
上野さんのこれまでの人生と、SDGsの観点から上野さんが考えていることをお聞きし、みんなで話し合いました。 

自分自身を振り返って 

上野さんは小学生の時、ご自身でタレント活動をしたいと決め、オーディションを受けるなどして様々なメディアに出演していました。 
「今思えば『自分が何らかのアクションを起こすことで誰かに何らかの影響をあたえたい』とそんなことをぼんやり思っていました」 
とほほえみながら話します。 

日常では、アウトドアやスポーツ大好きなご家族のもとで育ち、冬になるとファミリースキーへ出かけていたそう。 
そのうちにお兄さんやおじさんの影響から、競技スキーの世界へ。 
中学生になる頃、アスリートになるかタレントになるかという選択の機会を与えられ、やはりここでも、 
「自分が活躍することで、だれかを元気にできたり、何かを始めたいと思うきっかけが作れたら。とにかく誰かの感情を動かすことがしたい」 
と考え、自らアスリートになる道を選択した上野さん。 

大学卒業後には、プロとしてアルペン競技からフリースタイルへの転身も決め、世界大会にも数多く出場。 
ここまで華やかなキャリアを築くと、アスリートとしての自分の成長を止めるのは勇気がいるものですが、上野さんは、子どものころから自分のライフプランを持っていて、競技で活躍していた時から「家族を作りたい」と、自分のアスリートとしてのエンドライン(引退)の時期をなんとなく決めていたそう。 
バンクーバー五輪でフリースタイルスキーが五輪競技に選ばれたら、そこを引退の場として出場しようと目指すも、ギリギリのところでバンクーバーでは新種目の中にフリースタイルスキーは採用されませんでした。 
そこで上野さんは「世界選手権を最後の場にしよう!」と決め、世界選手権出場後に引退。24歳で結婚・出産をします。 

ところが、次のソチ五輪で「フリースタイルスキー」が新種目として採用され、上野さんは考えた末に引退を撤回し、体力ゼロから一転、再び世界を目指すことに。 
見事代表の座を勝ち取り、五輪出場を果たします。 

引退後は、住み慣れた土地からパートナーの故郷である長野県野沢温泉村へ移住。そこでアウトドアスポーツの会社を立ち上げます。 

そして、様々なスポーツに打ち込む女性アスリートや海外の女性アスリートと出会い交流する中で感じていた多くの日本の女性アスリートが抱える課題である
・子どものころから特定のスポーツばかりを一生懸命やることを求められ、激しい練習で無月経になったり、結婚出産適齢期=自分の実力を一番発揮できる時期と重なることが多く、最終的にスポーツを優先して、ライフバランスを崩す選手が多いこと
・セカンドキャリアの問題

それらを解決するため、一般社団法人MAN(ママアスリートネットワーク)を設立し、引退後のセカンドキャリア、妊娠出産子育て等のライフプランを選手のうちから考えることを促す活動をしています。 

アスリートとSDGs

 現在女性アスリートが抱えている問題を自分の今までの経験とSDGsの観点からどんなふうに解決できるかを考えたとき、 
1,自身のキャリア・経験を閉ざさない 
2,自身のキャリア・経験を活かす方法・アイディアを閉ざさない 
この2つを掲げてくださいました。

 1, 自身のキャリア・経験を閉ざさない 
トップアスリートであっても結婚。妊娠・出産をあきらめなかった上野さん。また、それらを経験した後も再びアスリートして復活し競技もあきらめませんでした。 

引退後のセカンドキャリアでは、自分のやってきた特定のスポーツ(スキー)だけを考えると、そこでキャリアはストップしますが、上野さんはその競技を続けてきたからこそわかる体のコンデイショニングの重要性を感じ、スキーという競技にこだわらずヨガやピラティスなどを伝えるインストラクターとして活躍しています。 

自分の中心に残る思いを、一つのものにとらわれず形を変えて表現する。 
「キャリアに付加価値を付ける」と話していたのが印象的で、キャリアを中断したとき、ネガティブなイメージを持ちやすいですが、上野さんからは自分の経験はすべてがなかったことにはならず、その経験があったからこその今があるというポジティブなメッセージを受け取りました。
そして、私たちも自分のすべてをあきらめないことが大切なのかなと思いました。 

2,自身のキャリア・経験を活かす方法・アイディアを閉ざさない 
自分だけの考えに凝り固まらず、多様な人とのかかわりあいを自ら積極的にとることで、頭の中を常にリフレッシュした状態にしておく。とのこと。

 普段から止まることなく子育て、仕事と動き続け、多くの人に会い話をし、やったことがないことにもチャレンジし続ける上野さん。 
上野さんの活動の幅広さは、ご自身が意欲的に動いていることはもちろんのこと、人とのかかわりからアイディアの種を見つけ、それが自分にどう活かすことができるのかを考え、勇気をもって行動に移すから生まれるのだと思いました。 

自分らしく生きるには 

イベント後半では、みんなでディスカッションの時間に。 
話は今の子どもたちへの教育や大人としての私たちの在り方などにも広がりました。 

・自分の好きなこと得意なことがあることはすばらしいこと。 
・部活や社会体育、勉強を一生懸命やるのはいいけれどそれだけになってしまっていないか。それが閉ざされたらどうなるか。打ち込んでいるものそれだけが人生のすべてとは思わないこと。 
・勉強以外でも活躍できる場があること、様々な幸せがあることを子どもたちに学んでもらいたい。 
・つい「勉強しなさい」と言ってしまうけど、私たちは視野を広く持たせてあげることが大事なのではないか。 

また、女性が活躍しやすい世の中になるための課題も見えてきました。 
それは、「子育てや介護は女性がやる仕事」のように、昔ながらの「文化」「思い込み」「常識」などに知らず知らずのうちに私達自身も支配されていることです。 
それらの課題はすぐに解決できるものではなく、いまだ当たり前に存在しています。 
女性にとって、キャリアの中断・分断は何回でも起こり得るもの。 
妊娠、出産、子育て、ほかにもパートナーの転勤、介護など、そのたびごとに私たちは「自分らしい「はたらく」・「くらす」とはなにか」を問われます。 

だからこそ、上野さんがライフプランを常日頃から考え自分らしさを大切にしているように、私たち一人ひとりがどう生きたいのか、それが思い通りにいかなかったときには、「そこからどうするか」を、「文化」「思い込み」「常識」にとらわれず「自分らしさ」を軸に自由に考える力がとても重要で、私たちの意識改革が必要だと考えさせられた機会でした。上野さん、貴重なお話をありがとうございました。

 【ゲスト】上野眞奈美さん
神奈川県横浜市生まれ。2014年ソチ五輪スキーハーフパイプ元日本代表。現在、野沢温泉村にてアウトドアアクティビティサービス事業を主軸とする株式会社ドリームシップを経営するかたわら、一般社団法人MAN(ママアスリートネットワーク)設立(現在は理事)。長野県教育委員会スポーツ課スポーツ推進審議会委員、公益財団法人長野県スポーツ協会理事なども務める。 
3人のお子さんのママでもある。 

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