「温室にて」その4
――最初の1匹よ。じっくりと味わわなくちゃ。
横でカメラを構える園部の息が荒くなった。おそらく、その息づかいは、集音器で増幅され、かなりはっきりと録音されてしまっているはずだ。
麻子はカブトムシを踏みつけている足に少し体重を乗せた。
ミシッ!
――あっ!音がした。これぐらいで、もう潰れ始めちゃうのね。
踏みつけている足にかける体重を少し増した。
ミシミシッ!
――あっ! 今度ははっきりわかった。潰れてる。足が少し沈んだもの。
また少し体重を加える。
バキッ!
今度は今までとは違った硬質な音が聞こえた。
――すごい音。角が折れたんだ。靴底を通してもはっきりわかる。
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