薬機法の要、「承認」制度
薬機こんにちは。おくすりアドバイザーの井田です。
医療の中で重要な役割を担う医薬品、効果さえあれば即医療の現場で使用できるわけではありません。たまに製薬企業に一般の人から「永く患っていた〇〇に△△を使用したらすごく良い効果があった。△△はおススメだ。お宅の会社でこれを作って売ったらどうだ。」というような提案が持ち込まれることがたまにあります。効けば何でもすぐに製品化してクスリとして売れるものと単純に広く理解されているのです。
通常の医薬品の「開発」過程は大きく次の3段階- 1.スクリーニングテスト→ 2.比臨床試験 → 3.臨床試験-を得て有効性及び安全性の確認が得られ、有用性が担保されたものだけが製薬企業から都道府県を経由して厚生労働省に製造承認申請が行われます。引続いてPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)で厳格な審査が進められ、医薬品として適当である旨が確認されると厚生労働大臣からめでたく「承認」が付与され、初めて医薬品と称することができます。クスリという用語は広く日常生活で使用されますが、法的には医薬品医療機器法(以下薬機法)での「承認」が得られたものだけが「医薬品」なのです。承認を得た医薬品は人的要件、構造、設備等が厳格に審査され厚生労働大臣から「許可」を受けたものにより製造されます。
このような薬機法の枠組み中で、この12月22日、塩野義製薬が開発した内服の新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」が承認されました。
薬機法上の従来からの承認制度という土台の上にアメリカの緊急使用許可制度などを参考にした「改正医薬品医療機器法(薬機法)」で創設された「緊急承認」制度(令和4年5月施行)によるものです。本来の「承認」とは違い、感染の状況を踏まえた緊急性や他に治療法が確保できない等の前提条件を満たすことを前提に、安全性が確認でき効果の面では「確認」ではなく「推定」できれば期限付きでその使用が認められるという内容です。コロナの第8波感染拡大が懸念される中、この度初めての新制度の適用により治療の選択肢が広がりました。2001年、インフルエンザの内服治療薬の「タミフル」が登場しましたが、それと同じように外来診療で今後幅広く処方されることが期待されています。
医薬品の承認には現在、「通常承認」に加え、「条件付き承認」、「再生医療等製品、条件・期限付き承認」、「特例承認」がありますがこの度「ゾコーバ」に対し新制度の「緊急承認」が創設後初めて適用されました。緊急承認の基準の確立等に問題点も含んでいますが、さらに当該制度の適切な運用法の検討も重要と捉えられています。
コロナ禍での新たな治療薬「ゾコーバ」が「緊急承認」という新たな承認制度の中で登場したのを機に、医薬品の品質、有効性、安全性を保障する薬機法の要になる「承認」制度につきまして、その一端を紹介させていただきました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?