医療と美容
こんにちは。消費生活のウソ・ホントを考えるアドバイザーのゆうりんです。
「あなたもやったら?目が大きくなるよ」眼瞼下垂症の手術をした知人に言われたことがありました。
眼瞼下垂症とは、上まぶたが下がってくる病気です。生まれつきの方もいますが、加齢や神経・脳の病気でなる方もいます。私の知人は加齢によるケースですが、話を聞いていると明らかに美容目的で、「保険で手術が受けられて安くできた」と喜んでいました。確かに10歳くらい若返った印象でした。
眼瞼下垂症は軽度の場合、自覚症状もなく手術の対象にはなりませんが、重度になると、見えにくさに加え、頭痛や肩こりなどの症状も出てきて手術が適用になります。ハードコンタクトレンズを長く使用している人もなりやすいそうで、当てはまる私も将来は要注意だと思っていました。
「若返るよ」という口コミが広がっているのか、美容のためにこの手術をしたという人の話をよく耳にします。問題のない人まで、目を大きくするために保険で手術を受けるのはどうなのでしょう。医師も患者から「やってほしい」と言われれば、拒否しにくいところがあるのでしょうか。ちなみに私の親しいトレーナーは「手術に頼らずとも、トレーニングで上まぶたの衰えは改善できます」と言います。
医療の領域にまで入り込む美容。糖尿病の薬も自由診療のクリニックがやせ薬として処方し、問題になっています。こちらは自費ではありますが、目的外使用による健康被害や、薬が不足して本来必要な人に届かないなどの弊害が生じています。クリニックがオンラインで診療し、定期購入の契約をさせて、副作用が出ても簡単に解約させない、またトラブルに対応しない、などで被害を大きくしています。
そんな中、今年の2月、肥満治療薬「ウゴービ」が、アジアで初めて発売されました。日本で承認されたのは昨年の3月だったのですが、需要に対して供給体制が追いつかず、発売が延びていました。対象は以下に該当する方です。
・高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、かつ食事療法・運 動療法を行っても十分な効果が得られない人。まずこれらが前提になります。加えて、
・「BMIが35以上」
・「BMIが27以上」であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する。
のどちらかに当てはまる人となっています。
やせ薬を求める人は多いだけに、この薬にもグレーな人が押し寄せることと思います。肥満はさまざまな病気を引き起こしますし、かつ日本では「ウゴービ」の適応基準が欧米に比べて厳しいということもあって、若干対象から外れた人に処方されても、予防医療という観点から見ると、許容範囲なのかもしれません。とはいえ、自由診療で安易に処方されるとなると話は別です。また糖尿病薬と同じような混乱を引き起こす可能性があります。
そこで厚労省は、医療広告ガイドラインを近く改正することにしました。自由診療で行う場合は「未承認であること」「海外での副作用情報」などを医療機関のサイトで明示することを求めるといいます。
ただガイドラインの改正だけでトラブルは防げるものではありません。薬には副作用もあるということ、さらに本来の対象者ではない人が服用すれば、何が起るかわからないということ、そうしたマイナス要因にも、処方を望む側が目を向けなければ、痩せることはできても、体調不良で苦しむことにもなりかねません。
健康的に痩せるには、「運動」と「食事」を見直すしかありません。運動が苦手、たくさん食べることもやめられないという人は、まず「100回かむ」を実践してはどうでしょう。早食いは大食いにつながるため、ともかく「いつもよりもよくかむ」ことを心がけるだけで、満腹を感じやすくなり、食べる量が自然に減ります。
どんなことでも「ラクをして簡単に」には、何かしらのリスクがあるものです。手術や薬に飛びつく前に、自分でできそうなことにトライしてみてもいいのではと思います。私は若返った知人の姿に心惹かれながらも、地道な筋トレに勤しむ日々です。