独学の作曲家
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2020/08/28 第585号
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【 独学の作曲家 】
こんにちは。おくすりアドバイザーの井田です。
新型コロナ禍の中、今まであまり縁のなかったNHKテレビの朝の連続ドラマを見るようになりました。今年の春からは作曲家古関 裕而をモデルにした“エール”が始まり、毎回楽しんで見ています。
古関 祐而の音楽はクラシックからかつての軍歌や行進曲、歌謡曲まで幅広く約5千曲位の作品があるそうです。それらの作品一つ一つが魅力的で心惹かれるものがあり、阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」や、NHKラジオのテーマ曲等は日々耳にすることができます。のんびりした日本の田園風景を切り取ったようなラジオ「ひるのいこい」のテーマ曲を耳にすると、何となくお腹が減ってくるようです。ラジオのテーマ曲の内で私のお気に入りなのは「日曜名作座」です。森繫 久彌と加藤 道子のコンビで長らく楽しんで来ましたが、今は西田 敏行と竹下 景子に代わり、劇中の音楽も池辺 晋一郎に代わりましたが、テーマ曲は古関 裕而の作曲したものが今でも使用されています。
華々しく東京オリンピックの開会式の冒頭を飾ったオリンピックマーチのことや、モスラ等の映画音楽のことなども取り上げるとキリがありません。
これだけの素晴らしい作品を数多く残したという実績を見ると、古関 裕而は音大等で専門教育を受けたのかというと、実際は商業高校卒でほとんど独学で作曲法を勉強しました。和声法や対位法といった作曲理論、管弦楽法等を福島の地で一人黙々と勉強し、昭和初期にはストラビンスキーがかかわったヨーロッパの作曲コンクールにも管弦楽曲で入選しました。
独学で世界的な作曲家になった人として、さらに伊福部 昭や武満 徹が思い出されます。伊福部 昭は北大の農学部出身で、ほぼ独学で作曲を学び、「日本狂詩曲」を始め数々の優れた管弦楽曲や映画音楽を作曲しました。中でも映画「ゴジラ」は特に有名です。同じ音型を繰り返す「オスティナート」という作曲法を用い、とても印象に残る作品です。作曲だけでなく、黛 敏郎や芥川 也寸志等、以後の日本楽壇をになう作曲家を育てたことでも高く評価されています。
武満 徹は旧制中学の卒業で、独学で世界的な日本を代表する作曲家になりました。昭和34年、来日中のストラビンスキーに「弦楽のためのレクイエム」が高く評価され、後年ニューヨークフィルハーモニーの委嘱で作曲された「ノベンバー・ステップ」は今や世界の多くのメジャー・オーケストラがそのプログラムに取り上げています。さらに映画音楽や大河ドラマ等TVのテーマ音楽にも多くの作品を残しています、
バッハは音楽家の家系の中で、日々の生活の中で潤沢に音楽を学ぶことができましたし、モーツァルトはその生来の才能に加え父親からの教育がとても貢献していますし、今年生誕250年を迎えるベートーベンも、モーツァルトの父親の教育法に倣った父親からの厳しい教育を得て大作曲家になりました。それら大作曲家の作品は現代でも広く演奏され、多くの人に音楽の喜びを伝えていることは皆様ご承知の通りです。
今では作曲家を目指そうとするのであれば、専門課程のある芸術大学や音楽大学を目指し、そこできちっと基礎から勉強を進めていく道筋が用意されています。
独学で作曲法を身に着けた古関 裕而、伊福部 昭、武満 徹の三人の作品は、今日偉大な音楽家と、さらには立派な音楽教育を受けた音楽家と肩を並べて多くのコンサートに取り上げられ、数々の音楽家の重要なレパートリーの一部になっています。
独学ながら音楽に対する真摯な愛情と情熱をもって道を切り開き、作品を創造してきたその姿に思いを馳せるとき、新型コロナの影響で、様々な分野で新たな挑戦が個人に求められている今、それらの姿は大きな示唆になるとともに励みになるのではと思います。
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