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10月の医療保険改定

こんにちは。健康生活アドバイザーのだんごママです。

9月に、2023年度の概算医療費が発表されました。コロナ流行時に減少した医療費も、コロナが5類感染症に移行し経済活動が活発になるに伴い上昇し、過去最高の47兆3000億円となりました。75歳以上の窓口負担が2022年10月に1割から2割に引き上げられたため受診者数は減少しましたが、一人当たり医療費は上昇しています。

医療費抑制の切り札として、2024年10月から新たな選定療養費が施行されています。後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるお薬で、先発医薬品の処方を希望する場合は別途、特別料金が発生します。例えば、先発医薬品の価格が1錠100円、後発医薬品の価格が1錠60円の場合、差額の40円の4分の1である10円を、通常の患者負担とは別に特別料金を支払うようになります。この特別料金は課税対象となるので消費税も支払うようになります。

診察料や処置、検査などの技術料を削減すると病院経営が立ち行かなることを考えると、政府が価格を決めている薬剤費を削減するのがすぐにでも効果が出る方法といえるでしょう。10年ぐらいの間に、月1回の外来受診時の注射で痛みが軽減し、日常生活新薬が増えてきました。リュウマチや、片頭痛の注射薬などの中には、1回あたり5万円から10万円もするような注射薬もあります。2014年に薬価収載されたフォルテオ皮下注キット(骨粗しょう症の治療薬)ですが当初、1キット53,353円でしたが2024年4月に26,694円になり、ジェネリック医薬品のテリパラチド皮下注キットは17,587円になっています。2016年に肺がん適応になったオプジーボは、1か月で約316万円(100mg 73万円)かかっていましたが、今では60万円程度まで(100mg 13万円)薬価が引き下げられました。急激な薬価引き下げに、「製薬企業が不利になる薬価制度が放置されすぎている。」と製薬会社から不満の声も上がっています。

コロナ感染が広まり、流通が途絶え、医薬品不足が問題になり、政府も医薬品の原薬の国内製造を強化するように業界に働き掛けています。新薬として承認される条件に、安定供給が可能な生産体制を維持することが必須条件です。今の創薬は遺伝子操作によって作られることが多く、開発費がかかり、薬価も高騰の一途です。にもかかわらず、10年たてばジェネリック医薬品が販売され、開発費が回収できないような状態では、新たな開発・販売も躊躇されるでしょう。薬価を決める際も、原材料費を考えない薬価改定がされてきたため、長く利用されてきた効果のある、使いやすい薬が製造中止になっています。薬価が抑えられた中で利益を出すために、原薬を海外に求め、いまだに医薬品不足が続いています。2018年に原薬の異物混入や原薬出発物質の製造停止などの理由で医療に欠かせない抗菌薬が供給不足になりました。国内代表的なメーカーのほとんどが中国1社の原薬に頼っていたために医療現場に混乱が起こりました。微妙なバランスで成り立っていた流通の一角が崩れたため、代替え医薬品を探し求め、ドミノ倒しのように次々とほかの抗菌薬まで供給不足になっていったのです。すぐに学会が政府に要望書を提出し、ようやく2023年末に、国内で抗菌薬の原薬製造がはじまりました。30年ぶりだそうです。

抗菌薬は命に係わる薬なので、素早い対応がとられたようですが、それでも原薬の国内製造を再開させるのに5年かかっています。ほかにもいつ供給が停止するか不安を抱える薬がたくさんあります。安定供給が約束されていた先発医薬品が、今回の保険改定でますます市場が狭くなるでしょう。利益が上げられないため先発薬が製造中止になり、ジェネリック医薬品のみの流通になっている薬もあります。ジェネリック医薬品は、販売会社が複数あり(1品目で20社以上が製造している薬もあります)安定供給が約束されていないため、企業側の理由での販売移管や、製造中止のお知らせが頻繁に届いています。ジェネリック医薬品は、自由に参入・撤退が可能ということです。解熱鎮痛薬の出荷制限はなさそうですが、抗生剤・鎮咳薬・麻酔薬・など、どれだけの品目が出荷制限されているのか把握できません。

ジェネリック医薬品の供給が不安定な中、先発品しか入手できない場合もあります。混乱が起こらず、必要な時に必要とされる薬が入庫され、思惑通りの医療削減につなげることができるのか不安で仕方ありません。

《参考資料》
厚生労働省 
後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養費について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html

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