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【season2-2学期】ハコザキ シネマパブ 開講レポート

改めて、11月14日(土)に開講した特別教室「暮らしの大学presents ハコザキ シネマパブ」にご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

大学跡地から街場(まちの中)の商店街に場所を移しての映画上映+講義のプログラムとして誕生した新企画「ハコザキ シネマパブ」。
今回は、当日の模様を簡単にレポートしていきます。


↓教室の概要はこちら。


▼会場の様子

会場となったのは、箱崎商店街の真ん中にこの10月にオープンした「カワケンキッチン」さん。身体に優しいお料理がいただけるレストラン。通りに面したテラスがある、素敵な店構えです。

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本企画はまちのこと、暮らしのことを考える場なのだから、
“まちにはみ出し、溶け込む場。”
そして、“映画を媒介に人が集まってきて、気軽におしゃべりする場。”

そんな風景がつくれたらいいな、と妄想して企画したのですが・・
おかげさまで形になりました!

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テラスにもはみ出して・・。

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↑行き交うみなさんが「何やってるんだろう?」と覗いてくれたのも、嬉しい風景でした。こうやって少しずつまちに馴染んでいくといいなぁ・・としみじみ。


▼本編の様子

まずは飲み物片手に「 映画鑑賞 」。
鑑賞したのは「ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命」です。

この映画はニューヨークのダウンタウンに住む主婦、ジェイン・ジェイコブズが主人公のドキュメンタリー。都市計画やまちづくりに関しては一介の素人に過ぎなかった彼女が天才的な洞察力と行動力を武器に、自らの暮らすまちの大規模な都市開発を防ぎ、暮らし目線のまちを守ろうとするお話です。

暮らしの大学の拠点、ここ箱崎も福岡の下町(ダウンタウン)ということで、映画から刺激をもらいながら「暮らしにフィットするまち」について考えられたらと思い、福岡映画部さんにご協力いただきセレクトした映画です。

日本にいる私たちからすると、映画で描かれているのはアメリカという遠い国の遠いお話。でも、「箱崎ならどうだろう?自分のまちだったらどうだろう?そして、自分だったらどうするだろう?」と、主人公やまちを自分事に置き換えながら観ることで、感じることがとってもたくさんある、そんな映画でした。


そして鑑賞後は、ゲストに九州大学大学院 人間環境学研究院 准教授・黒瀬 武史先生をお迎えしてのトーク式の講義。本学学長代行の斉藤昌平がお供しました。
黒瀬先生は、9月に開催したキーノートレクチャーに続いてのご登場です。

ちなみに、トークの最初は「 乾杯!」からスタートしました。パブだもの。

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続いて黒瀬先生、参加者のみなさんと映画の感想を共有。

冒頭は、黒瀬先生から簡単なご感想をいただきました。

黒瀬先生(以下、黒):(この会場がある)まちの商店街って、アメリカ風に言えばストリート。みんなが通りを眺めているという場所。実は遠いところの話ではなくて、これからの福岡のまちを考える上でも大事なことを言っていたと思う。

続いて、こんなやりとりやご感想が。

参加者の方(参):正義と正義の戦い、秩序と秩序の戦いのような気がした。どっちかだ正しい、間違いという話ではなくて、お互い(ジェイコブズとモーゼスのこと)正しいと思ったことを言っているのかな、と。
そういう中で、お互いに話をしながら「どういうまちづくりが正しいのか?」という方向に進めていくのが大事なのだと感じた。箱崎も新しいまちづくりがはじまっていくが、対話をしながら「いいまちづくり」は何かを探っていくといいのではないかと思った。

黒:どっちも正しいというのは僕も思っていて、例えば福岡で言うと「都市高速を使ったことがないと自信持って言える人がいるか?」というと、なかなかいない。箱崎だと、3号線を使ったことがない人もいないですよね。でも、便利な道路の裏側には今日みたいな(映画で描かれているような)なかなかつらい事実があったりもする。
参:箱崎の路地に惹かれて30年住んでいるが、そんな私にとってはショッキングな映像もあった。そして、今の箱崎の街並みが愛おしく感じた。また、九大箱崎キャンパス跡地もこれから新しく上物ができていくが、どんなものができるのか関心がある。先ほどの方も言われた通り、タウンミーティングのようなものが開催できたらいいなと思っている。


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参:人それぞれ住みやすさというのは違うんだと感じた。箱崎ならではの魅力というか、まちづくりというのはどういうものなのか?というのを考えさせられた。天神でもなく、アイランドシティでもなく、糸島でもなく、箱崎の良さってなんだろう?と。個人的には、コミュニティや人付き合い、そして公共交通機関などの利便性もあるなと思ってる。


映画で描かれていた主人公・ジェイコブズとモーゼスの対立の構図を受け、箱崎のまちづくりでは「対話」を大切にできれば・・とのご意見も多く聞かれました。

また、「人それぞれ住みやすさは違う」ということは、人それぞれ思い描く「いい街」は違うということ。では、そんな中でいかにして多様な意見を集約し、ひとつのまちを作っていくのか。映画の中で描かれていた遠いニューヨークと福岡を比較しながら、暮らし目線でつくる「箱崎」について、お話を巡らせました。

黒:(福岡とニューヨークを比較する地図をスクリーンに投影しつつ)実は福岡より圧倒的にニューヨークの方が高速道路が多くて、高速道路だらけのまち。そう言う意味ではもちろん、道路がまちを破壊したのも事実。
福岡は高速道路がほとんどまちの外側を通ってるので、いいところが残っているとも言えると思う。ただ、道路によって密接につながっていたはずのまちとまちが分断されている場所は福岡、箱崎にもある。このように、ある側面では負に思えても、高速道路のように便利で愛用しているものもたくさんあるということも、認識していただければと思う。


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黒:実はジェイコブズが愛した古い街並みが残っているような場所が今どうなっているかと言うと、そこに古くからある建物にはお金持ちしか住めなくなっている。通常、団地のように大きなものをつくるとたくさんの人が住めるようになり、あまりお金がない人も住んでいい場所、住める場所となる。しかし、ジェイコブズのせい、ではないけれども、彼女が「こういう住み方の方がかっこいいんじゃない」といった暮らしがお金持ちにウケて、お金持ちがこぞって住むようになった。そのため、そこに元々住んでいたお金のない人たちは結局追い出されてしまった。こういうことを「ジェントリフィケーション=住宅地の高級化」というが、そういう意味では(人が住む場所として)モーゼスが一生懸命作った団地が全く役に立っていないわけでもない。

「いいまち」をつくろうとしたとき、「こっちが正義」なんてことは一概には言えない、複雑な側面があることも読み解けます。

さらに箱崎の話に引き寄せていくと・・

黒:今、みなさんがいる箱崎商店街も道路拡幅の話があって、この会場のテラス部分もそうだが、道路にする予定がある部分は大きな建物が建てられないように制限がかかっている。このように、じつは都市計画の影響というのは身近なところにある。道路沿いに駐車場がたくさんあるのも、その影響だったりする。
また、商店街にあった学生が愛用していたようなお店がなくなっていったのは、もちろん大学移転の影響もあるが、実は商店街と大学の間に「箱崎新道」という大きな道路が通ったことも大きいと言える。大学から商店街に行こうとすると信号待ちの時間があったり・・。そういう意味では、まちと大学の関係も「都市計画」によって大きく変えられてしまったと言えるかもしれない。

自分とは遠い存在と思いがちな「都市計画」の影響は、身近にある、私たちの暮らしやその中での行動と直結しているものだということを改めて感じます。

黒:箱崎は路面電車が地下鉄に変わったり、大きな道が通ったりしたことで、どんどんまちが分断されてしまった。さきほど出てきた「どちらかが正しいとは言えない」というのはまさにその通り。ただ、悲しいことではあるが「みんなの(多くの人の)幸せのために、誰かの不幸が生まれることがある」そんな側面もあるというのが都市計画ということも知っておいていただけるといいと思う。
黒:僕も箱崎(九州大学箱崎キャンパス)に勤めていたことがあるが、正直に言えば、大きな道を渡ってお昼を食べにいくのが面倒だな、と思ったりしていた。人の行動というにはそういうことで簡単に変わってしまうもの。面倒臭さとか、ちょっと入りづらいな、とか。

私たちが暮らしの中で取る無意識の行動が、実は都市計画の影響を受けていることも大いにあるのかもしれません。

一方で、喜ばしい時代の変化についてのお話もありました。

黒:ジェイコブズの時代は「車が通りやすいまち」にすることが主流だった。しかし現在は世界が大きく変化していて、「人間のために道」に道を取り戻そうという風潮が生まれている。斉藤さん、箱崎ではいかがでしょう?
斉藤:放生会(筥崎宮・放生会。毎年9月12日〜18日に執り行われる神事。お祭り。)の時は、参道の前は通行止めになる。商店街の人たちといつも話しているのは、まちの方(商店街の通り)にまで広げたいということ。

ニューヨークでももちろん車を通さない大変さはあるものの、「歩行者優先の道」が生まれている今。箱崎でも自然と生まれている話題です。

さらには、箱崎でも大切にしたいこんな風潮も起きているそうです。

黒:映画でも描かれていたが、ひと時代前の「都市計画」は立派な模型をつくって、「20年後これをやるぞ!」といって20年間それを目標に走り続けるようなものだった。しかし最近は、それはやっぱりじゃだめなんじゃない?という流れになってきている。来年実験してダメだったら後戻りしようよ、という時代になってきている。 軽くて早くて安くて何か変化できることを実験してみて、だめだったらやめる、よかったら進める。そういうちょっとずつやっていく方がいいんじゃないか、という考え。これは、箱崎でも大切な考え方じゃないかと思う。一方で行政や開発事業者にとって「ちょっとずつ」は難しいことでもある。じゃあどうする?というのが今日の問いかけのひとつでもある。

九大箱崎キャンパス跡地についてはこんな話題も。

黒:そういう意味では、九大箱崎キャンパス跡地でも、「遊んでみる」ことをやってもいいと思う。去年は、暮らしの大学の映画上映をやってたりしたが、どうやったらいいまちができるのか?は、遊びながらじゃないとわからないと思う。

今回は新型コロナウイルスの影響でキャンパス跡地内を会場にすることが難しかったこともあり街場での開講となりましたが、近いうちにまた跡地でまちづくりの「実験」として、開講できればいいなと願うばかりです。


思えば、昨年の5月に九大箱崎キャンパス跡地での映画上映+講義の企画からスタートした暮らしの大学。ちょうど1年前の11月にも同様のプログラムで教室を開講しました。そういう意味では、いわば暮らしの大学の原点でもある「映画+講義(トーク)」の教室。今回の街場での開講も結果としては、街場だからこそ「ラフにまちづくりについての対話ができる場」に近づいた気がします。

このシネマパブは今後も継続していくことでより多様なみなさんとともに対話を繰り返し、「箱崎の暮らしって何だっけ?」「その暮らしのためのまちって何だっけ?」と考え、実践し続けられる環境をつくっていけたらと思っています。

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暮らしの大学season2の2学期は、これにて修了です!
3学期もぜひお楽しみに、お付き合いいただければと思います。

ハコザキ シネマパブの開講に際してご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

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暮らしの大学@福岡市の東のまち“ハコザキ”
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