島根には大学が2つしかない、という現実について~学びの選択肢を考える。
少し前に、X(旧Twitter)でバズっていたこの投稿をご存じでしょうか?
島根大学の准教授の方のポストで、たくさんの方がいいねをされています。一連のポストは次のとおり。
ツリーを見るとたくさんの反応があるのが分かります。
「知らなかった」「佐賀も同じです」「島根大学に行けばいいやん」などなど。
この投稿を見たときに一番驚いたのは、自分たちの中ではごくごく当たり前だった事象をそもそも知らない人が多い、ということでした。
ポストの内容は紛れもない事実で、島根に暮らすものにとって、「自宅から大学に行く」というのはかなりのレアケースです。4年制大学がそもそも2個しかないということに加え、交通アクセスの悪さがその原因。
例えば、松江市にある島根大学にお隣の出雲市から通おうと思っても、JRやバスといった公共交通機関で通学することは、かなり難しいのです。前述した島根大学の先生がおっしゃっているとおり、「車を買って自宅から通学する」「アパートを借りて一人暮らしをする」のいずれかを選ばなければなりません。
そういった事情もあり、「大学を選ぶ」際に「自宅から通えるか」が選択肢になること自体が、ほぼ皆無なわけで、必然的に県外に目が向くことになります。
これは、「地元から出たい」とか「田舎は嫌だ」とかそういう問題以前に、選択肢を増やすうえで当たり前のことなのです。
島根から出るべき、あるいは残るべき、という議論がしたいわけではありません。それ以前に、大学の数が少ない(選択肢がない)から県外に出ている、というのが実際のところなのです。
なので投稿にあるとおり、「子どもを大学に入れる」ことを視野に入れるならば、出産後すぐに、いや、あるいはそれよりもっと前に、「子どもは18歳で家を出る」ということを念頭に置いたライフプランを計画するのが自然な流れです。
県外での一人暮らしを想定して貯金をしたり学資保険に入ったり…そういうことは、「しなければならないこと」というよりも、「当たり前に考えること」であり、そこに地域格差とか不公平感を感じることさえ、自分自身はありませんでした。
我が家の方針として、子どもは一度は島根を出たほうがいいと考えていたので、常に外に目を向けていましたし、実際、県外に進学して良かったんじゃないかなあと思うことのほうが多いです。ですが、「地元で学びたい」と子どもが言えばそうしていただろうし、これは本当に「選択肢」の問題なのです。
島根には学びの選択肢が少ない、というのは、どうしようもない現実。子どもの選択肢を増やすために県外の大学を視野に入れるのは、いいも悪いもなく、ごく当然のことだと言えるのではないでしょうか。
もちろん、地元に学びの場がより多くあればいいに越したことはありません。
くしくも以前、NPO法人化15周年記念冊子「日々 綴ってきた」の取材で島根県立大学の田中輝美さんを取材させていただいた際、強くおっしゃっていたのが、「学びの選択肢を増やす」ということ。
田中さんの発言からは、「大学進学は外に出ることが当たり前で、残ったものは”残されてしまった”と自らを捉えがち」という、地方ならではの固定観念のようなものが見てとれます。
こういう考え方は今もあるのか、というのは取材をしていて驚きだったのですが、ひと昔前には確かにありました。
私自身、同じ地方出身者で地元の大学へ進学したのですが、親戚や近所の人から判で押したように「あらあ、近くて良かったねえ」と言われ「近い、ということ以外に感想がない」という微妙なお祝いをされたことを、いまだによく覚えています。
いま考えると、気にしなくても良いことなのでしょうが…。
子どもたちが自ら進学先を選びとり、それが県内であろうと県外であろうと、誇りを持って次のステップに進んでいける…そして、親や周りの大人たちは、精いっぱい応援する…。そんな学びの在り方が、どんどん進んでいけばいいな、と思います。
少ない文字数の投稿ではすべてを伝えることは難しく、投稿された島根大学の先生は、「地方は大変、都会はいいね」という画一的な見解を述べられたわけではないと思います。
都市部には都市部の大変さがあるし、地方には地方の大変さがある。
ただ、お互いの状況を把握し、理解し合うということが、1つの投稿から進んでいったんじゃないかなあ、というのが、私の感想です。
※それはそれとして、「日本で私立の4年制大学がないのは島根県だけ」というのを、この投稿をきっかけに知りました。「私大がないのって島根だけなの?」と、かなり驚きました…。
島根の「日本で唯一〇〇がない」というの、いつか調べて列挙してみたいです。
共通テストが終わって、私大の受験、そして国公立大学の二次試験と、受験シーズンが続きます。健康に気をつけて、すべての受験生が実力をいかんなく発揮できることを心から願っています。
後悔のないように、頑張れ受験生!