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私のうつわ遍歴 ~うつわは暮らし、うつわは歴史。

ただいま、毎年恒例の「うつわイベント」の準備をしているところなのですが、うつわのことをずっと考え続けている中で、自分の持っているうつわの変遷を振り返り、かなり好みが変わったなあという話になりました。
そこで、私のうつわ遍歴を綴ってみたいと思います。

(*うつわイベントを、今年も10月13日(木)から4日間開催予定しています。県内外の窯元さんもたくさん参加してくださいますよ~。)

普段から「暮らしを楽しむためには地域を楽しむことが重要」であると発信し続けていて、「住んでいる土地で暮らしを楽しむ」ことを活動のテーマにしています(たまたま島根で活動しているというだけ)。

そして、自分自身の暮らしの中でも、美味しいものを食べること・料理をすることはとても大切な地位を占めています。

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料理を乗せる「うつわ」と「暮らし」は切っても切れないつながりがあり、県外のたくさんのうつわをご紹介することも、私たちNPOの大切な活動のひとつ。

そこで、今日は私自身がうつわに対してどう向き合ってきたのか、うつわ遍歴とともに紐解いてみたいと思います。

子どもの頃からうつわを愛でていた家庭に育ち…というわけではなく、実家で普段使っていたのは、どこにでもある大量生産の食器たちでした。丈夫で使いやすく、5人家族が同じ模様のうつわを使っていた記憶があります。茶器(急須とか、ティーカップとか)にはこだわりがあった母親も、普段のうつわはそんなに気にすることなく、「よくあるもの」を使っていました。

そういう環境下で審美眼が育つでもなく、ひとり暮らしを始めた大学生の頃も、実家から言われるがままに持ってきた「なんてことない食器」に囲まれていました。某山陰の銀行で貯金をするともらえる、ノベルティのピーターラビットのお皿がとても丈夫で、ずっと使っていた記憶があります。

そんな私にとって「手作りのうつわ」「窯元」というのは、良くドラマとかに出てくる、作務衣を着て皿を地面に叩きつけて割っているようなイメージで(どんなイメージ…)、親しみがわくどころか、遠く遠く、自分とは全く縁のない世界でした。

そんな中、初めて「窯元のうつわ」に自ら触れたのは、今思うと縁なのかもしれませんが「島根のうつわ」でした。
東京に旅行に行った時に新宿のBEAMS(ビームス)で、出西窯のうつわを展示販売していたのです。

「島根の窯元とBEAMSがコラボ…?そんなことがあるのか」と、目からウロコだった私。それまでの「窯元」「焼き物」の概念を覆すようなスタイリッシュな食器たちは、とても自分が暮らしている割と近くで作られているとは思えず、「東京で売ってるものが一番!」という単純なものさしで生きていた当時の私は、「出西窯ってすごいんだな」と瞬時に納得してしまったのでした。

それから結婚して島根にやってきた私。

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当時は「雑貨屋さんのうつわ」で食卓を彩るのがおしゃれだ!と夢中になっていた時期で、キャトルセゾンやMaduといった雑貨店のうつわをペアで揃えて、「かわいいもの」に囲まれて暮らすことに幸せを感じていました。

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そんな時、オットが結婚式でもらった引き出物が、またまた出西窯だったのです。

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いただいたのはそばちょこの2個セット。
お蕎麦どころ・出雲ならではの引き出物です(島根では出西のうつわは引き出物の超定番、と後で知りました)。

同じ頃、暮らしを作っていくうえでなくてはならない存在の人に出会いました。それは、モデルでデザイナーの「雅姫」さん。
以前もコラムに書きましたが、私を含め、当時の女性たちに革命を起こしたんじゃないかとさえ思っています。

当時読んでいた雑誌でご自宅のインテリアやお気に入りの食器を紹介されていた雅姫さん。パリの一軒家…みたいなインテリアの中で、意外にも雅姫さんが紹介されていたのは和食器でした。
花岡隆さんの粉引のうつわたちは、時にはお料理を盛り付け、時には草花を飾り、と、変幻自在。無垢のテーブルやアンティークの中にも溶け込み、とても生き生きして見えました。

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和食器が洋のインテリアの中で存在感を放ちながらも溶け込んで佇んでいるさまは、すごく刺激的でした!「お茶碗をこんな、見えるところに飾ってもいいんだ!」とか、「湯呑みにお花を生けてもいいのか!」「食器にただ果物を乗せる」とか、とにかくすべてが新鮮だった。

じゃあ、引き出物でもらった出西窯のそばちょこに、めんつゆを入れなくてもいいんじゃない?フリーカップとしても使えそうだし、ヨーグルトなんか入れても良さそうだな…と、いろいろな使い方が浮かんできました。

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そして、考えている時間がとてもとても楽しかったのです。(このそば猪口は、もうあちこち欠けてしまったけれど、何となく処分できずにいまだに持っています。)

同じくらいの時期に、友人(のちに一緒にくらしアトリエを立ち上げることとなるスタッフ)と陶芸教室に通い始めたこともあり、うつわへの興味は俄然、増していきました。ふつふつと「一点もののうつわを家に飾ってみたい」という欲が沸いてきたのです。

かくして私はちいさな子どもたちを連れて、家族4人で「初・出西窯」を成し遂げます。ごはん茶碗、湯呑み、といった小さなものを、それぞれが選んで購入しました。こうやって「自分のうつわ」をつくっていく作業はとても楽しかった。

お揃いじゃなくてもいい、みんな違っていても全然良くて、「ちゃんと選んで」「自分がいいと思ったものを」「少しずつ」そろえていくというのが、とても豊かな行為だということに気づいたのです。

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出西窯と雅姫さんという2つの存在に背中を押され、少しずつ「手作りのうつわ」が家の中に増え始めます。


自分が作ったうつわ、旅先で出会ったうつわ。そして、「くらしアトリエ」の活動を通じて出会うことになる、たくさんの作家や窯元の皆さん。どれもみんな違っていて、食器棚の中はサイズがバラバラのうつわが雑多に並ぶように。毎日、ごはんを作る時に「どれに盛り付けようかな…」と考えるのもとても楽しい作業でした。

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そんな中で、運命の出会いとも言えるのが、鳥取市のギャラリーで出会った「牧谷窯」さんの食器です。
カッコよくて食べものが映えそうで、しかもなんだか超絶技法で作ってあるっぽい…。ドキドキしながら(安い買物ではないので)楕円のお皿を1枚購入し、大切に大切に使い続けていました。

「シマシマしまね」でうつわイベントをやろう、ということになり、どうしても牧谷窯さんの作品をお預かりしてみたい…と、お手紙を書きました。
自分がとっても気に入っているうつわがあること。日々の料理で大活躍していること。島根の方にもぜひ、紹介したいこと。ダメもとで手紙を投函し、チラシも刷り上がってイベント準備も進んでいたころに、思いがけなくお電話をいただき、お取引ができることに…!めちゃめちゃ嬉しくて飛び上がったのをいまでも覚えています。

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牧谷窯さんのうつわの魅力はたくさんありますが、一番はやっぱり「このうつわにはこれを盛り付けたい!」と思わせるたたずまいだと思います。
土っぽさとデザイン性が絶妙なバランスで同居しているから、手に持っただけでわくわくするし、一気にその世界観に持って行かれる感覚があります。

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イベント終了後に、売れ残ったものから(清水の舞台から飛び降りるつもりで)購入した、市松模様の大皿は、ひとめ見たときから「煮しめを盛り付けるためのうつわだ…!」と思っていたのですが、いざ我が家にやってくると煮しめよりも「ちらし寿司」の出番がとても多いお皿になりました。このお皿がやってきてからちらし寿司を作る頻度が格段に上がったと思います。

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また、がんもどきみたいな素朴な茶色いお料理も、どんと受け止めてくれる力強さがあり、「とりあえずこれに盛り付けておけば安心…」という気持ちになります。気軽に買えるものではないからこそ、とっておきの1枚として…まさに自分にとっての「ご褒美のうつわ」と言えるでしょう。

ちなみに…ご褒美ではあるけれど、私は日々の料理にガンガン使っちゃいます。年に1度しか使わないとか、そんなもったいないことはできない!せっかくのご褒美だから、めいっぱい使いたいじゃないですか。高価だから…としまっておくのはもったいないな、という主義です。

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こうして歳月を経て我が家にいまあるうつわたちは、少しずつ好みを変えながら、自然と「我が家らしさ」をまとっている気がします。

以前は真っ白な食器が好みだったりしたけれど、今は染付など、柄のあるものも楽しいと思う。子どもたちが家を離れ、凝った料理よりも素材そのものをシンプルに調理する料理が増えたからかもしれません。

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かといって、以前使っていたうつわはまったく使わないのか、と言えばそうでもない。ふとした時に「あ、あったな~これ」と引っ張り出してきたりすることもあります。懐かしさがあったり、今の自分が使うと逆に新鮮だったりと、これもまた面白い。うつわは本当に、奥が深いです。


うつわは「料理を盛り付けるもの」であるわけですが、中には「別にどんなものでもいい」という方もいらっしゃると思います。
でもやっぱり、手作りのうつわからもらえる「自然の素材が持つぬくもり」や「窯元ごと、作家ごとの色や個性」に出会うと、プラスチックトレイや紙皿で料理を食べるのとは違う喜びを感じることができるんじゃないかと思うのです。
まさに、「暮らし」をていねいに紡いでいくことの象徴が「うつわ」なんじゃないかな。

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くらしアトリエは立ち上げからずっと「ていねいな暮らし」をテーマに活動してきました。慌ただしくとも生活の営みを自身でしっかりと感じ取れるような、地に足のついた暮らしこそが、心豊かに生きていくためには必要なんだ、という思いはずっと変わりません。

だから、うつわを選び楽しむことは、暮らしそのものを考えることであり、イベントもそんな気持ちから企画をしています。それぞれの暮らしを振り返り、見つめ直すきっかけのひとつ、だと考えているのです。

お皿1枚でも、選ぶ過程で自分の家の食卓や作る料理を考えますよね。そうやって選んできたうつわが集まったら、それは「自分の歴史」でもあります。

機会があれば食器棚を開けて、ご自身の「うつわ遍歴」をたどってみるのも楽しいと思います。思い出が凝縮されていたり、忘れかけていた食器にまた出会えたり…それぞれのうつわに対する記憶に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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くらしアトリエ(地域と暮らしの発信)
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