ほんのタッチの差
三軒茶屋にあるムーンファクトリーコーヒーという喫茶店。僕の入店でちょうど満席になった。店員さんは申し訳なさそうに「いま満席なんです〜」と、僕の後に入ってきたお客さんに伝える。ほんのタッチの差で、僕は座って温かいお茶を飲むことができた。おいしいチーズケーキまで食べている。この店までの道すがら、気になった店にふらっと立ち寄っていたら僕はきっと「満席なんです」と言われていた。ほんのタッチの差。
バス停に着いて到着時間を確認すると10分待ちと表示されていた。前のバスがついさっき発車しちゃった、みたいなことはよくある。今日もそうだった。外出の準備をしている時に、お茶をひと口ふた口飲まなければ間に合ったかもしれない。でももし前のバスに乗れて、もう少し早くこの店に着いていたとしても、満席だったなんて可能性は大いにある。バスを逃したから、ちょうどのタイミングで入店できたのかもしれない。ほんのタッチの差。
思い返せば、ほんの少しのきっかけで巡り会えたことってよくある。あの時、SNSで反応していなかったら、きっとあの人とは休みの日にご飯を食べる関係性になっていなかった。毎日使っているスタメンの食器は、ある晴れた日の陶器市でふらっと歩いていたら見つけた。働きやすい今の職場も、あの日の気分で調書にさらっと書いたら決まった。
よいこと悪いことは、ほんのタッチの差で決まったりする。だからどんなことになってもそんなに落ち込むことはない。きっとまた、ほんのタッチの差でよくも悪くも転がっていく。