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スタバにて
日曜日の午後、あてもなかったのでふらっとスタバに寄った。
右隣の客は旅行雑誌を読んでいる。表紙にはスペインとある。スペインまで飛行機でどれくらいなんだろう。スペイン。情熱的。
左隣の客はノートパソコンとにらめっこ。
彼のパソコンケースはキツネ柄。シュッとした見た目に似つかわしくない。見た目と好みに関係はないけれど。
目の前には5メートルほどのベンチがあって
3組の客が座っている。
あるカップル。彼女は彼の肩にもたれかかりながらスマホをいじっている。彼はカルチャー雑誌を読みながら時々彼女の頭頂部に鼻を当てて嗅いでいる。愛おしい人のにおいは愛おしい。わかる。
おばあちゃんは飲み物を飲みながら一点を見つめている。白髪に赤いリップが映えている。シュガードーナツには手をつけていない。
僕と同世代くらいの女性は『日本株 黄金の時代が始まる』というタイトルの本をぱらぱらとめくっている。スニーカーのベルト部分にはキラキラしたラメ。カバンはゴヤール。お金に興味ある人っぽいなぁとバイアスがかかる。
左隣の客がノートパソコンを操作しながら電話をし始めた。僕はイヤホンをしてるから声は気にならなかった。
右隣の客は気が付いたら違う人になってた。だってネイルの色が違うから。読んでる本もスペインから東京のカフェめぐり雑誌になってる。
カップルの彼女は髪の毛とスマホをいじってつまらなそうだ。彼はまだカルチャー雑誌を読んでいる。気付いてあげて。
人間観察にも飽きて席を立ち外に出た。
もうすっかり日が暮れている。
ずっと同じではいられない。
ぼんやりと時が流れていく。
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