コントロード 第五話「MTG」
ツィンテル五人組が結成されてから数週間が経ち、この日は企画会議。
だんだんと慣れてきた渋谷のラブホ街を慣れた足取りで闊歩する。
この集団で指揮を執る小島フェニックス(通称フェニ)が、記念すべき第一回公演の企画案を持ってきた。
絵画で言えばラフスケッチのような断片的なプリント数枚に目を通す。
沈黙。
「まあ、こういう感じでやりたいと思ってるんだけど。」
フェニが口を開く。
彼と長年やってきたセティもここをこうした方がいい、なるほど、と意見を交わす。
「僕は。」
まだそれほど親しくない彼らとこれからやって行く人生初の「コント」は、数ある演劇とはわけが違う。
ましてやこの頃の僕は30間近の売れない役者だ。
僕に遊んでいる暇はないのだ。
言うべきことは言わなければならない。
「これの、何が面白いのか、理解できない。」
時が止まった。
「……そう、か。」
フェニの頭が激しく回転しているのがわかった。
「かあきさん、どう思う?」
「○jdsfho(uvIWOE'?`*DPnvsjn%」
やはり東大で遺伝子研究をする傍ら参加している彼の言うことは高度すぎて理解できない。
「デビは?」
「なんでもいいよ!」
忘れてた。この人は頭でなにかを考えるタイプじゃなかった。
「セティは?」
「……うーん。このままでもブラッシュアップすればフィックスできると思うし、ガックンがそう言うなら一旦ペンディングかな~」
ダメだ。こいつはビジネス用語を使いたいだけだ。
僕は自分の思っていることを、なるべく簡潔に言うことにした。
「コントっていうのは、人を笑わせるためにやるんだよね?僕は客としてこれを見せられても、きっと笑わないと思う。」
「……わかった。」
フェニが口を開く。
「これは、忘れてもらっていい。」
彼はプリントをその場で丸めて捨てた。
「ゼロから創ろう。みんなの納得できるものを。」
話の分かる男だ。男気にも溢れている。
彼を信頼しよう。そう思った。
「じゃあ、どんな作品にしようか。」
こうして、コントは創られる。
(第六話につづく)
お金持ちの方はサポートをお願いします。サポートを頂けたらもっと面白く効率的に書けるようofficeやadobeのソフトを買う足しにしようと思っています。でも本当はビールを飲んでしまうかもしれません。